ニュースクラップタウン

私事で恐縮です。

いとおしき

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毎日暑い暑いと過ごしてきたら、こんどは梅雨が待ち構えている。湿気の多い日の汗は、身体中に水の膜が張るようで歩いていると溺れていくような心地悪さがある。バイト先に着く頃には顔もべたべたで、汗のにおいも取りきれないような気がしてそわそわしてしまう。肌も髪も、常にお風呂上がりの綺麗な状態でいれたらいいのにと思うたびに、その綺麗な状態を見せられる親密な関係が羨ましくなる。わたしはその親密さに辿りつくことなんてこの先あるのだろうか、と気が遠くなりながら今日も汗をかく。銭湯とか、サウナとか行けばいいのかも。

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6月1日、シアターウエストにて吉田大八作・演出『クヒオ大佐の妻』を観劇。宮沢りえ岩井秀人、川面千晶、水澤紳吾という座組に観る前からかなりわくわくしていて、実際にとても良かった。地に足を着けつつ、徐々に噛み合わなくなる歯がゆさ。きちんと大きめの笑いが起こる間合いに岩井さんの凄さを感じる。宮沢りえ演じる大佐の妻の台詞回しの過剰さや歪さは、この芝居の描かれ方そのもののようでもあり、これは良いのか?良くないのか?どうなんだ。わからない。さも共通認識のように語られる米国に対するコンプレックスや、最後の仰々しい演出はめちゃくちゃ気持ち悪いなーという印象なのですが、その過剰さを誇大妄想とも笑えない居心地の悪さがあった。

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タカセグリルでオムライスを食べた。池袋駅前が一望できるナイスロケーション。17時という夕食にはまだ早い時間だったので客は私ともう一組だけで、とても居心地が良かった。池袋はタカセ、伯爵、MilkyWayとよい喫茶店が色々あるのでいつもどこへ行くか迷ってしまうのですが、次はカフェ・ド・巴里へ行きたい。

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夜は赤坂RED/THEATERにてシベリア少女鉄道vol.28『たとえば君がそれを愛と呼べば、僕はまたひとつ罪を犯す。』を観劇。面白かった!バカだなあ。あのさも物語然としたシーンが、ぶっ壊すためだけに積み上げられたのかと思うと感動すら覚える。壊しつつまた作るというとんでもない技が繰り広げられていて興奮しきりの後半でした。シベリア少女鉄道の名前はよく聞くものの観たことがなくて、今回はいつ高シリーズ(ロロ)の楽こと大石将弘さんが出ているので足を運んだのですが、観に来て良かった。このきっかけを待っていた!

ナカゴー、木ノ下歌舞伎、イキウメと評判を聞いてから気になりだしてももう観に行ける日がないということが続いてアンテナを張り直さなければというお気持ちもあって今回はじめてみる劇団に挑戦してみたのですが、こうも面白いともっと色んなところを観に行こうという気持ちになれて良いな。

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高校生までは辛うじて体育の授業があったのでまだ大丈夫だったのですが、卒業以来まったく運動をしなくなり、好きなように間食をしていたらじわりじわりと体重が増え続け、もう無視できないレベルに達してしまった。今年に入ってから3回ほど電車で席を譲られそうになることがあり、みるからに体調が悪いわけでもないのになぜだろうと思っていたのですが、これは、おそらく、つまり、私が長年かけて蓄えた脂肪と贅肉が、新しい生命に見えているようなのです。それしか考えられない。これはまずい。残酷だけど、君とはお別れだ。

と、いうわけで意を決して駅前のジムに体験へ行った。色々と詳しく案内されるのかと思いきや基本的にご自由にどうぞというスタイルで、結構気が楽だ。とはいえまったくの素人なのでマシンの使い方を教えてもらいながらなんとなーく運動してみるとなかなか良いかもしれない。自由に参加できるスタジオではちょうどボクシングの動きを取り入れたレッスンがはじまるところで、茶髪・ムキムキ・ピタピタのタンクトップのインストラクターに対する恐怖と好奇心におされて参加。平日の昼間なので周りは年配の方が多くて、ダンスミュージックがガンガンにかかるなか冷静になると私は何をトチ狂ったことを…と頭を抱えそうになったけれど確かに良い運動になる。例えばこれが体育の授業だったらやらされているというスタンスでヘラヘラしていればやり過ごせるんだけれども、自ら望んでこの場にいるのに振り切れないという一番格好の悪い状況に陥ってしまった。恥、かき捨てていこうな。30分間テンションと利用者へのホスピタリティを保つインストラクター、素直にすごいと思う。でも次はヨガにします……。自意識にダメージを与えてしまったので今日はこのあたりにして、軽くお風呂とサウナに入って終えました。

運動ならお金を払わなくてもできるのでは?とも思うけれど、わたしのような怠惰な人間にそれは無理だし、そう思い続けた結果がこの体たらく。決して安くはないお金を出せば、もとをとらねばと頑張れる気がする。他にもいくつか見にいって来月に決めよう。帰りに自転車に乗っていたら、駅の近くでオレンジの外壁にジャイアンツのロゴマークを施したクールな民家を発見してなんだか得した気分になりました。

 

そこで「目抜き通り」の歌詞を読み直していただきたい。あれ、実は“カルテット~その後~”という体で書いたんです。

という椎名林檎のインタビューでの発言を受けて、

デートの夢は永い眠りで観ようか

と歌う『目抜き通り』を聴いていたら『カルテット』の8話が観たくなって、見返してたまらない気持ちになって号泣してしまった。真っ白なお洋服に真っ赤な靴をはいたすずめちゃんの姿だけで涙が出るほど可愛い。ドラマが終わって少し経ったけれど、観るたびに好きになる。あと、私いま好きな人がいるんですけど、別に付き合いたいとかそういうわけじゃなくてただ好きという状態で、自分の気持ちに対する答えもすずめちゃんの台詞にぜんぶあった。 

好きだってこと忘れるくらいいつも好きです

いつか好きってことだけ伝えたいかもしれないけれど、きっと私は「冗談です」って言うと思う。最初から物語に移入や共感を求めることはしないけれど、ふと自分自身に接続する瞬間や探していた言葉に出会うことがある。ずっと頭のまわりをふわふわしていた感情がこんなにも鮮やかにドラマに書き起こされていて、坂元裕二先生への心酔がまた改めて深まってしまう。是枝裕和とのトークショー、めちゃめちゃ行きたいけれどその日はアルバイトなんだよな。

 

不慮の事故で死ぬならいまがいい、というくらいに気分が沈む。思い浮かべるだけで幸せになれるテレビや音楽、楽しみで仕方のない舞台やライブに対する感情が希薄になってしまうことがひと月に一度ほどあって、そういうときにはこんなことばかり考える。いつもなら流してしまえる些細な失敗に支配されたり。もし突然死ぬなら幸せな状態で、とも思うけれどそれでは未練が残りそうではないか。気分も沈んで人生がどうでもいいときに事故にあったりしたら、案外ラッキーと思えるんじゃないか。こんな気分なので、折角のお休みを1日ごろごろして潰してしまった。けれど、やっぱり、そんなときでも美しいものは美しい。可愛いものは可愛い。愛おしいものは愛おしい。


MONDO GROSSO / ラビリンス

 


スチャダラパーとEGO-WRAPPIN' "ミクロボーイとマクロガール"(Official Music Video)

5月の与太話

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寝ても寝ても眠い。アルバイトがお昼からなので朝は余裕があるのだけれど、目が覚めても布団の中でごろごろしているとあっという間に支度の時間がきてしまう。あと1時間早く布団から出ればリビングで録画してあるテレビも見れるし髪も巻けるし、もっと頑張ればもしかしたらバイト前に美術館や映画館に行くことだってできるんだけど、なかなかどうしてそうはいかない。夜も日付が変わる前には布団に入れるし、最近は寝つきもいい。けれど、二度寝の誘惑と気持ちよさには抗えない。『ひよっこ』は9時ごろに朝ごはんを食べながら録画を見ているのだ。涙がこぼれ落ちる寸前、という良さが毎日続いている。乙女たち、ご安全に…。あと、焼き芋屋さん、シューマイだ!そんなシューマイこと新名基浩さんもキュートな役で出演した『デリバリーお姉さんNEO』をGyaoで観るのが楽しみなので水曜日の朝は目覚めがいい。予告編からすでに名作の予感を放ちまくっていた第3話、ロロ全開!で最高だったな。亀島さんって、具体的に誰とは思い出せないけど学生の頃おなじクラスにこんな奴いたなってみんなが思ってそう。

 

5月に入ってからというもの毎週のように衝撃映像を放ち話題をかっさらっているテレビ朝日の『陸海空 こんな時間に地球征服するなんて』、私も目撃しましてすっかり友寄Dに夢中になってしまった。毎週楽しみにしている番組ではなくて歯磨きでもしながらなんとなく観ていた番組でこんな映像が出てきた衝撃といったら。このディレクターちょっと真田広之に似ている(くるり岸田繁にも似ている)けれど何か変わったひとだな、と思っていたらあの真っ黒事件ですよ。謎の木の実やら濁った川から釣ったばかりの魚やら本当になんでも食べるので舌がイカれているのかと思いきや、およそ日本人の口には合いそうもない部族の料理を美味しそうにレポートする表現力をみるとそうではないらしい。「ありがてえ ここにきて美容ありがてえ」と言いながら刺青や染物の原料となる植物をそうとは知らずに顔と体に塗りたくり(少しも警戒しないところがまた彼の凄いところだ)、信じられないほど真っ黒になってもなお陽気にラッツ&スターを歌う姿にこの人はおかしい…と思う一方で、ナレーションで入る日記の文章から垣間見える現地の人々や生活への眼差し、取材の姿勢はとても思慮深くて偏見がなくて人としての魅力に溢れている。見ているうちにぐいぐいと引き込まれて、気付けば友寄Dの虜になってしまった。ついに『クレイジージャーニー』の対抗馬あらわる、といった感もあり。

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レコードストアデイが何なのかいまいち把握しないままぼーっとしていたら売り切れ情報しか入らなくなってしまったEnjoy Music Clubの『100%未来 feat.三浦直之(ロロ)/そんな夜』7インチ、second royal recordsの通販で無事にゲットすることができた。はやくプレイヤーを買って聞きたいけれど、今月もチケットにお金を使ってしまったので来月までおあずけだな。でも、いいんです。ライナーノーツが読めるよろこび!実際に手にしてみると思ったよりも大きくてページ数もあって、デザインも可愛くて見ているだけで顔がほころんでしまう。『青春ゾンビ』の文章を読んでいると目頭があつくなることが何度もあって、それはレビューされている映画やドラマを思い出してというのもあるんだけど、文章そのものというか、文章に込められた愛にグッとくる瞬間が何度もある。作品へのラブレターみたいだな、といつも思います。

現在のアルバイトでのはじめてのお給料が出たので、お休みの日に買い物に行った。今月分のコンタクトレンズとあたらしい靴とデルフォニックス×永井博のポーチ。あとは商店街にあるレンタル落ちのCDやDVDを置いているお店で椎名林檎『日出処』を買った。デルフォニックスと永井博のコラボシリーズ、以前出たものも迷いに迷ってサンセット柄のメモ帳にしたのに今回は更に展開が広がっていて悩ましい。ちょうど大判のポーチを探していたのでうってつけのラインナップだったのですが、今回もリゾート柄かトワイライト柄か家でも店頭でもにらめっこしてリゾート柄のLを選んだ。好みはトワイライトだけど、やっぱりプールも捨てがたい。部屋で袋から出してみてもやっぱり可愛くて、これを鞄に入れて出勤することにわくわくしている。

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5月19日、以前店頭で見かけた靴を求めて浅草へ行ったら三社祭の期間中だった。金曜日は本格的なお祭りというわけではないようでそこまで混雑はしていなくて、祭りがはじまる雰囲気を味わうにはもってこいのちょうど良さ。三社祭だと知っていたら混雑を避けて来ることはなかっただろうから、思いがけず遭遇したお祭りがうれしい。

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念願の喫茶天国でホットケーキを食べた。なにかととろとろふわふわがもてはやされる昨今においてはまさに硬派のしっかりとした焼き具合。トレードマークの焼印と正方形のバターの佇まいもクールだ。美味しかったです。

5月26日、TOKYO CULTUART BY BEAMSへJUN "JxJx" SAITO +VIDEOTAPEMUSICのライブを見にいった。神宮前には何個かBEAMSが並んでいて、ここだろうとは思いつつ入るのに躊躇してお店の前を何往復かしてしまった。お洒落とは一生無縁の人生だ。ALOHA GOT SOULの来日イベントということで、「ハワイ航路」(VIDEOTAPEMUSIC)や「Palm Tree」(YOUR SONG IS GOOD)などトロピカルな選曲。ゆったりとした雰囲気のライブで心地よかったです。VIDEOさんのピアニカで聞くユアソン、よい趣があったのでがっつりとしたコラボレーションも聞いてみたい。

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お腹が空いたので上野で下車してコーヒーショップギャランでボルシチとアイスコーヒー。喫茶店で食べる洋食がこの世でいちばん好きな食事かもしれない。ギャランは初めて訪れたのですが、店内のギラギラな照明とクリスタルキング「大都会」やTHE ALFEE「メリーアン」といったBGMの俗っぽさが妙に心地よいところでした。ネオンでも眺めに仲町通りを流そうかと思ったけれど、尋常じゃない数の黒服に怖気付いて諦めて大人しく帰宅。プレミアムフライデー

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5月28日、渋谷クアトロにてO.L.H.(a.k.a. 面影ラッキーホール)創立25周年大感謝祭〜四半世紀の風雪ながれ旅〜。バイト終わりに駆けつけたので中盤の「おんなの線路票」から。この先二度と訪れないであろうこまどり姉妹を見るチャンスを逃したのは残念ではありますが、やっぱりO.L.H.のライブは最高。しゃにむに踊った。きょうの「ピロウトークタガログ語」はなんだか切なさ増し増しでとても良かったなあ。MCではパフィーニップルという新たな知識を得ました。歌唱力・演奏力・エンタテインメント性すべてが揃ったとんでもないバンドのライブが年に1、2度しか見られないなんて…という気持ちと、その頻度でもライブしてくれるだけでありがたいaCKy長生きしておくれという気持ちでいっぱいになる。

遠のく春の日

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3月から欠かさず飲んでいるアレグラの効きが良くて、自分が花粉症であることなどすっかり忘れたような気分でいたのですが、こうなると今度はいつまで薬を飲めばよいのかわからなくなってしまった。花粉って毎年どのくらいまで飛んでいただろうか。ゴールデンウィーク明けくらい?最近はブタクサやら何やら夏にもムズムズと気配がするので困ってしまう。それにしても、体質に合っているのか朝1錠のめばくしゃみも出ないし眠くもならないしとても優秀だ。最近気になるひとが何か漢方的なお茶を飲んでいるせいか花粉の症状が出ないと話していて、会話するチャンスだったのに緊張のせいで「ほぉ〜」とアホみたいな返事しかできなかったことが心残りです。なんか、電車とか街の中でばったり会えたりしたら良いのにとこの頃はいつも考えている。帰り道が違うなら、同じにしちゃえば良いんだけどそれもできなくて、きっと、これは恋ではない。

4月23日、日比谷野外大音楽堂にてceroのワンマンライブoutdoors。バイト終わりに駆けつけたので「Yellow Magus」あたりから見られました。おそらく日が落ちる時間を見込んで演奏されたであろうムード満点の「FALLIN'」やVIDEOTAPEMUSICをVJに迎えての「夜去」「Narcolepsy Driver」などなどこれまでの曲もさることながら、終盤にかけて披露された新曲群の素晴らしさたるや、ceroは一体どこまでいくのだ!と興奮せずにはいられなかった。MODERN STEP TOURからの新編成で加わった小田朋美(シンセサイザー)、角銅真実(パーカッション)の存在がやはりとても大きくて、DCPRGを思わせる複雑かつ狂騒的な演奏とこれまでceroが築き上げてきたポップや詩情、音楽的な豊かさが融合してとんでもないことになっている。本編の最後に披露された新曲で、波の音を響かせながら退場していくceroの格好良さに痺れた。「街の報せ」と「大停電の夜に」で余韻を残すアンコールもとても好きでした。照明が落ちたステージに響くコーラスの美しさ。 複雑であるのに軽やかで取っつきやすくて、なおかつ〈普通の会話を愛している〉というラインを響かせることができるのは、もう本当に凄いことだしceroにしかできないことだ。マジ格好良いです。演奏は格好良くて、MCになった途端に雰囲気がふにゃふにゃになるところとかも愛おしすぎますね。

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三浦直之脚本、松本壮史演出、江本祐介音楽という最強の布陣のドラマ『デリバリーお姉さんNEO』1話とても良かった。もはや三浦節、松本節、江本節とでも呼びたくなるようなそれぞれの個性が心地よく炸裂している。レンタルお姉さんふたりとも可愛いし、島田桃子さんの声や佇まいの良さもフルに発揮されていた。誰かを好きでい続ける気持ちをこんなに爽やかに可愛らしく素敵に肯定してくれる作家って意外と他にいないな、と最近思う。キラキラしているけど、不思議とそれだけではない哀しみや儚さも内包しているのも好き。

5月2日、帰りに井の頭公園でロロの『パークス・イン・ザ・パーク』が観れることと、明日から連休なことが嬉しくて、昨晩の『キングちゃん』を観ながら髪を巻いたりした。キングちゃんのフリースタイルバトル、感動的に面白かった。芸人が各々の力を発揮できるうえに、そこから更にポテンシャルを引き出す番組の采配という完璧な構図。ストレスなく笑えるの本当に最高なのでずっと続いて欲しい。

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井の頭公園の競技場に特設されたテントで行われたロロの『パークス・イン・ザ・パーク』。スピンオフのもととなった瀬田なつき監督の映画『PARKS』は未見なのですが、問題なく楽しめました。これを観たからには映画も観ねばな。ステージにはベンチがふたつ。開演前にロロ主宰の三浦さんがピンク色の紙吹雪を撒いている。オレンジ色の照明に照らされるととても綺麗なその紙吹雪が後々大変なことになってしまうことはまだ知る由もなかった…笑

テントの外から客席まで縦横無尽に使って、時間を軽々と超えてみせる演出が楽しい。テントということで本筋とは無関係のアングラ演劇のトレースや、観客総出で花びらに見立てた紙吹雪を拾い集める遊び心も野外イベントならではで、時間の共有や体験という側面が大きい公演でした。子どもの声や犬の鳴き声がまざったり、三浦さんが撒いた花びらが多すぎて終演後にも拾い集める光景も、この日限りの特別な瞬間だった。

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ふんわりとした気持ちのまま思ったよりも暗い井の頭公園を抜けて吉祥寺の町へ出た。井の頭公園ってもっと賑やかな場所というイメージがあったけれど、場所によってはとても静かで閑散としている。吉祥寺方面から行くと入り口にある和歌水という宿、渋いなと思って眺めていたら休憩の文字と奥の入り口にネオンが見えて俄然興味がわいた。入ってみたい。

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ゆりあぺむぺるで夕食。最近コーヒーが飲めるようになって喫茶店に入ることが多くなった。まだ21時前だったので少しふらふらとして電車に乗る。定期券を買ったりしていたらなけなしの貯蓄がなくなって来月のお給料日までスッカラカンなのであまり遊んでいなかったけれど、せっかく都内に勤めているのだから時間に余裕があるときはもっとうろうろしてもいいのだな。お給料が入ったらレコードプレーヤーを買うんだ〜とずっと思っているのに、気付けばお札がチケットに変わってしまう。

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5月3日、ゴールデンウィークの1日目はドライブへ出かけた。目的地は神奈川県平塚市にあるPEPPER'Sドライブイン。富士山が見える田舎道を走ると突如現れるアメリカンでイカした建物。大変にフォトジェニックで写真では派手に見えるけれど実際にみると落ち着いていて周りの風景から意外と浮いていない。

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赤いエナメルラメのソファが可愛い店内に所狭しと陳列されたBIGBOY、スヌーピー、ディズニー、プレスリーetc...自分自身がその筋のマニアでなくてもテンションが上がる。こういう趣味に忠実な喫茶店なり雑貨屋は収集癖のある人間の夢ですよね。

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湘南、鎌倉を流しながらアウトレットに寄って、川崎の工業地帯と横浜の夜景を眺めながら帰路についた。うまいこと渋滞にもはまらずに快適で、田舎者のロールモデルのようなドライブ。楽しかった。ちょうど22時前に家に帰り着いて『水曜日のダウンタウン』の早弁先生を観て涙を流しながら笑った。とろサーモン久保田もすごいし、バイきんぐ西村さんが林檎を頬張ったりカニを持って歩いている絵面だけで幸せな気持ちになっちゃう。水曜日のダウンタウンが毎週のように最高の西村さんをお届けしてくれるので最高。

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5月4日、撮り溜めていたNetflix制作のドラマ『火花』を最後まで観た。最終話のスパークスの漫才で嗚咽するほど泣いてしまった。真樹(門脇麦)の「あほんだら」でも泣いた。徳永(林遣都)と神谷(波岡一喜)のことこんなに好きになるなんて。映像の質感、カメラワーク、俳優たちの演技、漫才、表情すべてが切実ですさまじくてフィクションであることを忘れそうになるくらい没入して観た。映像で語るってこういうことだ、というショットの連続。これからのドラマにとって希望のような作品だ。原作を読んだときは正直ピンときていなくてこれを漫才やコントで表現できたら格好良いのになと身も蓋もないことを思ってしまったけれど、ドラマを観たらあの年月や歩き続けた時間は絶対に必要だし、原作の余白がドラマの豊かさを生んだのかなと思うと、こんなに素晴らしい映像化って他にないんじゃないかというくらい。大好きだー

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特に予定もないので溜まっているラジオをタイムフリーで聞きながら部屋の模様替えをする。雑誌を綺麗に収納したくて使っていなかった棚を他の部屋から持ってきたのだけれど、ものが増えて余計に収集がつかなくなってしまった。大きなものを運んだり細々したものをバラ撒いたりしていたら疲れてしまって、2時間ほどうたた寝。午前中に『火花』で号泣したので目も重たい。次の日も引き続き模様替え。片付いたような余計に散らかったような。束の間の3連休が終わり、またアルバイト。1ヶ月が経って出来るようになったことと苦手なことが見えてきて、もうそろそろ新人でもなくなってきた。大きな失敗はいまのところしていないけれど、契約更新できなかったらどうしようという不安感がじわじわと。どこにいてもなにをしても常に自分はなにもできないという感覚に苛まれているけれど、「できている」と慢心するよりはマシかなと思って不安感と付き合っている。死ぬまで一生、これでいいのか不安なままのような気がする。そして、こんなときに観る『ひよっこ』が沁みて沁みて仕方ない。1週目以降なんとなく観ていなかったのだけれども、良い評判を聞くのであわてて先週から見始めた。おかっぱ眼鏡の澄子ちゃん、可愛すぎませんか。あのキュートにもほどがある寝顔。目元は吉岡里帆っぽくて、ちゅんと先のとがった鼻と上唇はのんちゃんにも似てる。最強じゃん…思えば、大学に入りたてなうえに交際していたひとにフラれ不安定の絶頂期だった2013年の4月には『あまちゃん』に毎日支えられていたのだった。いまの私には『ひよっこ』と『やすらぎの郷』と『デリバリーお姉さんNEO』がある。

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はる

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桜が散ってすっかり新緑に姿を変えたここ数日、汗ばむ陽気が続いていて春物を通り越して夏物の服を引っ張り出している。とはいえ、夜はそれなりに肌寒いので難しい。必殺技の夏物onカーディガンを繰り出しまくっている。

新しいアルバイトにも少しずつ慣れて、雰囲気や身の振り方もなんとなく掴めてきた。それと同時に徐々にポンコツと愚鈍が露呈してきて、帰りの電車で頭を抱えることもあるけれど些細なことは引きずらなくなった。背筋を伸ばして頑張りたいし、出来ることならずっとここにいたいなあと思うくらい良い環境で、自分の選択が間違っていなかったことにもホッとしている。仕事に慣れると今度は対人関係が気になり出して、油断するとちょいちょいイヤ〜な人間性が出ちゃうので気を引き締なければ。いままで人間関係を極力サボってきたので、打ち解けることと馴れ馴れしさの違いや塩梅が分からない。こんなにも迎え入れてくれる環境が本当にありがたくて、私もこの先こんな風に誰かを迎え入れることができたならと思うくらいだ。「嫌われたくない」という感情が果たして良いものか悩ましいものだけれど、そう思ってしまうのだから仕方ない。うまくやれているのかなあ。

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大学4年生のときは週3の授業で、一年の半分以上おやすみという体たらくだったので週休2日の感覚が新鮮ですらある。あっという間に終わっていく。先々週のお休みはコンタクトレンズを作って浅草でお花見をして、次の日は友人とデイミアン・チャゼル監督『LA LA LAND』を観に行った。いままで必要なときだけ眼鏡を使っていたのだけれど、バイト中にもないと少し辛いのでこの際にと初コンタクトレンズ。折角なのでディファインタイプにした。もともと黒目は小さめだったので最初のうちは黒目が1.5倍くらいに大きくなってきもちわるく似合っているとも思えなかったのが、今では無いとちょっと抜けてる印象になってしまっておそろしい。ディファインのコンタクトを着けている自分に対する自意識もさっさとどこかへ行ってしまった。

『LA LA LAND』を観るのは実は2回目で、狂おしいほど好きでも憎らしいほど嫌いでもないという感想は変わらず、冒頭のミアと女の子たちのミュージカルシーンが一番好きです。ちょうど『ゴッドタン』マジ歌LIVEダイジェストでの劇団ひとり渾身のLA LA LANDパロディを観たばかりだったのも良いタイミング。ジャズもミュージカルも門外漢なもので菊地成孔によるキレキレの批評も面白く読んだのですが、同じRealSoundの連載で菊地さんが激賞していたパク・チャヌク監督『お嬢さん』を先月に観て、それはそれはもう面白くて忘れられない映画となりました。中盤での秀子とスッキのシーンのカタルシス、私にとってはあまちゃん紅白でアキとユイがNHKホールに並んだときに匹敵するくらい強烈で感動的で涙がこぼれた。生涯ベストに入るくらい好きな映画です。

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先週は横浜は長者町、ふぞろいの人妻たちのお向かいにある映画館シネマリンでエドワード・ヤン監督『牯嶺街少年殺人事件』デジタルリマスターを観た。フラストレーションや機微という言葉ではまったく太刀打ちできない4時間。手にしては消えていく光と深い闇を映しとったスクリーン以上に雄弁なものはなにもない。という感じで、観てよかったな。小明、登場シーンのポーズからすでに魅力があふれてて一瞬たりとも目が離せない。早く彼女がスクリーンに現れないかなと思いながら観ていた。

映画を観た後は伊勢佐木町、曙町、野毛を散策した。風俗街、コリアンタウン、呑み屋街がひしめくこの周辺の雑多な風景がとても好きで定期的に訪れたくなる。私にとってはほぼ異世界である風俗店やラブホテルのゴージャスな外観と看板が好きで好きでたまらないので、歩いているだけでテンションが上がる。『ドキュメント72時間』に登場した24時間営業のとんかつ屋さんの前も通りがかった。お給料が入ったら食べに来ようかな。大岡川の桜が満開で、川にたくさんの花びらが浮かんでいてとても綺麗だった。

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生きていくセンスがない

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4月、新生活とやらが私にもやってきた。どうせフリーターになるのだから足並みを揃えることもないのだけれど、区切りも良いので新しいアルバイトに行きはじめた。新しい環境に身を置く前はどうしても、全員嫌な人で劣悪な職場だったらどうしようと悪しき想像が膨らんでしまう。でも、最悪を想定してハードルを下げまくると、大抵はみんないい人に思えるので自分のちょっとしたライフハックみたいなものです。実際はそんなことをしなくても、びっくりするほど穏やかで優しい人しかいないような職場だった。穏やかかつ、人との距離感を綺麗に保つ人たちばかり。生まれてはじめてみた相手を「親」と思っていつまでもついてゆく動物のように、仕事を教えてくれている人たちに慕情のようなものすら芽生えている。緊張でふわふわとした気持ちが続いているし、ド新人のいまは付きっきりで動いているので余計に。このさき嫌いになることがあっても今のところは好き。これから戦力にしなくてはいけないのだから親切なのは当然といえば当然で、向こうは私個人には何の興味もないことは分かっていても、やっぱり私は誰かと関わっていたいんだと思った。

好きでも嫌いでもない環境では適当な気持ちでいられるけれど、少しでも好きだなあと思ってしまうとそれはそれで苦しい。頭ごなしに叱られるよりも、静かに失望されていくほうが辛いからだ。適当なことは絶対にできない。良い子だと思われたい。嫌われたくない。少しでも好かれていたい。昔から自分の失敗を誤魔化したり隠したりする悪癖があるので、そういうの全部捨てたい。自分の言動はどこかおかしいんじゃないかという不安感はいつまでたっても消えない。あと挨拶がへたくそ。コピー取るのへたくそ。他者への配慮が足りてない。

初日は流石に慣れないことだらけで頭がキンキンに痛くなって、えらく悲観的になった。交通費出るし、と思って深く考えずに受けたのだけれども通勤に片道約1時間半かかるのだ。バイトじゃひとり暮らしは無理だ。そんなに混んでいるわけではないので苦痛ではないが、初日のクタクタになった頭でずっと「なんで遠いところを選んだんだ」「バイトなんだからもっと通勤が楽なところを選べよ」「しかも契約更新限度があるし」「年を重ねるとどんどん仕事に就きにくくなっていくぞ」「どうするんだこの先」と過去の自分を睨む。応募した当時は多少の焦りもあり、この仕事しかないと思ったのかな。とにかくこのとき生きていくセンスがないと思った。2日目以降、少しずつ全貌が見えはじめて頭痛もなくなり、良いところに来れたかも知れないと思いはじめた。時給も悪くない。休みもちゃんと決まっている。通勤時間は本でも読もう。

私は何歳まで生きるんだろうか。仮に何事もなければ80歳と想定して、衣食住に不自由しないためにはどのくらいの貯金が必要なんだろうか。年金とか保険とかよくわかんないから聞いとかなくちゃ。いまはドラマや演劇や音楽、いわゆるポップカルチャー全般のために生きているような感じだけれど、私はいつまで感性を持っていられるんだろうか。映画や演劇を観にいくにも、年をとるにつれて体力と健康がものを言うだろうなと思いながら、身体はどんどん重たくなっていく。何かを面白いと思えなくなったとき、私は死ぬのか。私はどうゆう風に死んでいくんだろうか。誰かに看取られるのか、ひっそりと異臭を放って発見されるのか、野垂れ死ぬのか。老衰か病気か事故か他殺か。死んだあとのことは、弟に頼めばいいのかな。私がこれまでぬくぬくと育てられた家庭を築くのにどれだけの苦労と歳月がかかっているのだろうと気が遠くなるし、私に同じことができるとは到底思えない。生きていくのにはセンスがいるとつくづく思う。食べるものも着るものも喋ることにも働くことにも、常に何かを選ばなければいけない。その度に自分の要領の悪さを思い知る。センス良くありたいという無様な見栄が積もっていく。損はしたくないと思うけれど、賢い選択はできた試しがない。こうしておけば、どうしてあのときこうできなかったのか、と考えると泣きそうになる。損得勘定をはじめると、考えることをやめてしまう。

それでも反吐が出るほどに自分のことを愛している。

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トラベル・ブギ

2月の下旬から3月半ばまで、熊本・福岡への帰省旅行、草津旅行、免許合宿と予定の詰まった慌ただしい日々を過ごしていた。旅行の前日、2月21日はコンビニバイトと、もうひとつ行っていたアルバイトの両方の最終日で、いよいよ人生の節目と感じてしまうような日だった。日常に組み込まれていた部品をひとつひとつ外していく感覚。

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2月22日、福岡に暮らす祖母のもとへ母と帰省旅行へ出かけた。せっかく九州へ行くなら、と祖母を連れて熊本の阿蘇で一泊して福岡へ戻る算段だ。発泡スチロールを基礎にしたドーム型の宿がぽこぽこと立ち並ぶ阿蘇ファームランドに泊まった。平日ということもあり宿泊客は少なく大浴場もほぼ貸切状態で、小雨が降っていてそことなく寂寥感。工事中の箇所も多く、完成したらもっと賑やかになるんだろう。早起きと移動に疲れていて20時頃に眠りに落ちてから、何度か目を覚ましながらも朝までぐっすりと眠ったのがとても気持ちよかった。目が覚めてもう一度目を閉じるとすぐ眠れるときが一番きもちいい。翌日は福岡まで寄り道買い物をしながら帰路についた。道の駅で旅行中の金銭感覚じゃないとなかなか手が出せないソフトクリームことクレミアを食べる。リサイクルショップに入ると3人していつまでも物色しているのには、血かな、と思った。

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滞在中は買い物へ行ったり太宰府天満宮へ梅を見に行ったりと日常と旅行が混在したような感じ。母は昔ここで暮していたんだな、と思うと不思議な気持ちだ。私は生まれてからずっと埼玉に住んでいるけれど、この先自ら住む場所を選んで居を移すこともあるのだろうかとぼんやり考える。行こうと思えばどこで暮らすこともできるけれど、私はずっとここから動かないような気もする。

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帰りに乗った飛行機、発券したら窓際の席だったのでわくわくして席にいったらそこだけ窓がなくてすごく落胆してしまった。そんな〜ずっと寝てたけど。帰宅したら荷解きをしながら明日からの旅行の荷作りをした。

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2月27日、中学からの友人5人と1泊2日で草津旅行へ出かけた。上野駅で向かいのホームに白いジャンパーを着た人たちが「おかえりなさい」という横断幕を持って立っていて異様な光景だったので「誰が帰ってくるんだろう・・・」「教祖?」とか言ってたら寝台特急カシオペアがホームに入ってきた。行きの電車ではわいわいと色んなことを話して、きっと帰りの電車ではみんな眠るだろうとこのとき思って、やっぱりその通りになる。草津に着いてからは食べる、食べる、歩く、足湯、食べる、お風呂、飲む、食べる、喋る、寝るという感じのそんな夜でした。宿のお風呂は水とお湯の蛇口をひねりながら調節するタイプのシャワーで、私たち以外にお客もいなかったので「あっつい!つめたい!あっつい!」と絶叫しながら髪を洗ったの楽しかったな。

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翌日は洋食屋さんで昼食を食べて土産屋のじいさんの温泉まんじゅう攻撃をかわしながら西の河原温泉の露天風呂へ。抜けるような晴天で、ときおり吹き込む風の冷たさが心地いい。たらふく食べてお湯に浸かって、もう寝る準備万端と言わんばかりに帰りのバスと特急電車へ。起きていた友人と小声で身の上話なんかを交わしながら電車に揺られた。車窓の日が暮れて浦和、大宮あたりのビルを通り過ぎる頃にはセンチメンタルも最高潮のなか、途中でふたり降りて、上野駅であとふたりと別れたあと、喫茶店にでも寄ろうかなあと逡巡しながらヤマシロヤの店頭でシン・ゴジラの鎌田くんのガチャガチャを回して、混雑した日比谷線に乗った。草津は3℃と聞いて着込んできたジャージとストールは暑くて首元にじわりと汗をかく。友人たちと少しLINEでやりとりをして、アルバムの写真を保存した。草津旅行から帰ってきて免許合宿へ行くまでの間もアルバイトの面接を受けたり映画や演劇を観に行ったりとぎゅうぎゅうの毎日だった。

 

茨城の古河へ合宿で自動車免許を取りに行った。滞在したのは駅近くのビジネスホテルだったのでストレスもなく快適な2週間。実家を離れて暮らしたことがなかったのでホームシックになるんじゃなかろうかと心配していたのだけれど2日目の夜に自宅と飼い猫が夢に出てきて以降は意外と平気だった。中学・高校のときにずっと一緒に登下校をしていた友人とふたりで行ったので懐かしいというか、4年ほどのブランクが空いてもあの頃と同じ空気感で過ごせることがとても嬉しかった。まあ、先日の旅行で会ったばかりですけれども。友人が「カーブが~」と言ったのを聞き間違えて「さわべ?」と私が聞き返したときに、「関係なくなっちゃったよ!」と返してきて、友人のこと一生好きって思いました。彼女の頭の回転の早さとユーモアととてつもない優しさに永遠に憧れ続けている。

自動車教習は初日からいきなり「ハンドル操作が危ういので乗り越すかもしれません」と脅されてビビっていたけれどなんとか乗り越さずに済んで安心した。教習所内の課題をひとつひとつクリアしないといけない仮免試験の直前が一番つらくて、ceroの「summer soul」のMVを見ながらあらぴーみたいに格好良くドライブするんだ...と己を励ましていた。教官には事務的に必要事項を教えていくタイプと、雑談しながら緊張をほぐしてくれるタイプとがいて、色々な人と車に乗るということがそもそも面白かった。茶髪でショートカットの女性の教官が3人くらいいて、もれなく元ヤンっぽいのも印象的だったな。でも元ヤンの人ってみんな面倒見が良くて教え方もうまくてとても好きでした。あと、送迎バスではだいたいいつもTBSラジオが流れていたところも好感度が高い。古河も良いところでした。

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卒業検定の前日に一度帰宅して大学の卒業式に出席した。母に袴を着付けてもらって、ぴゃーっと行ってわーっとやってささーっと帰ってきた。式典自体は、隣に座った友人と「校歌ちゃんと歌えないよね」とえへらえへらしているうちに緊張感なく終わった。後期はほとんど授業もなくゼミもなかったので友人にも先生にもとても久しぶりに会った。本当はお世話になった先生と同級生にもっと言いたいことがあったような気もするけれど喋れば喋るほど上滑りする嘘のようにしか喋れないし、お別れの場としてあの喧騒はとても都合が良い。思い返せば高校のときもあっさりと帰ったし、そのときは友達と今後も会うだろうという確信があったけれど、大学の友達とはもう会う機会はないかもしれないなと思いながら、ばたばたと交わされる会話と写真に紛れて教室を抜けた。私はいままで本当に人に恵まれていて、いつも声をかけてくれる天使のような子がいたので学校でひとりぼっちになったことがない。一緒に授業を受けたりお昼を食べたり、学校でしか為し得ない関係の中で私と関わってくれたすべての人それぞれに、少しずつ「あなたのようになりたい」と思っている。この気持ちには、cero「街の報せ」の「愛しているよ」というラインの響きとフィーリングがふさわしいな。

卒業の余韻にも感傷にも浸る間もなく古河へ戻り、次の日には自動車学校を卒業した。まさかの雨降りでめちゃくちゃ緊張したけれどなんとか。友人とふたりして技能のあとに学科試験があると思い込んでいて、技能の結果発表のあとに「卒業式です」と言われて拍子抜けしてしまった。次の日に早速免許センターへ行き交付を受けた。鴻巣、下手したら古河より遠いし朝早いしこの時期に来たのが悪いけど人多いし死ぬほど時間かかるし「ばかかよ」って30回くらい思ったけれど無事に免許を手にすることができました。やったね。ドライブが好きだし夜の街や高速道路を自分で運転できたら良いなあと思っていたけれど、実際に運転してみると自分の下手くそ加減や常に人を殺めてしまうかもしれない危険性と共にあることが怖すぎてドライブなんて夢のまた夢のような気がしてきた。

古河ワンダー

3月の頭から約2週間、免許合宿のために茨城の古河に滞在していた。教習のスケジュールに余裕がある日は駅周辺を散策して気分転換に喫茶店に立ち寄ったりと、余所者として古河での生活を満喫した。

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古河駅東口からすぐのコーヒーパーラー・パルク。キュートな飾り窓と看板のフォントをみた瞬間に、必ず立ち寄らなければ!と使命感のようなものすら感じたルックス。教習が午前で終わった日に意気揚々と乗り込み、内装にさらに打ちのめされた。

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入るとすぐ目に入るのは水が循環している小さな池。割れたプラスチックを補強した水槽の中でジョボボボボボボボと音を立てて流れる水と、ときおり聞こえる鳥のさえずりのテープが最高の癒しを演出している。このチープさがもうたまらない。大きな風景画やランプ、コーヒー豆の入ったドアといった内装だけでも十分素敵な喫茶店だが、この池があるのとないのとでは大きな差が開いてしまうだろう。町の小さな喫茶店というと店主が最小限の人数で営んでいるところが多いような印象だが、3人ほどいるウェイトレスの年齢層は若く、大きな絵に合わせてか緑のチェックのベストの制服が可愛らしい。この町では憧れのアルバイトだったりして。メニューはコーヒー、紅茶、ソフトドリンクに加えてランチのハンバーグやスパゲッティ、サンドイッチとフードも充実。雑誌や新聞も揃っており、古河市民の憩いの場であることがうかがえる。

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お手洗いには造花があしらわれており大変ラグジュアリーであります。スイッチを付けてもなかなか個室の電気がつかなくて焦りました。

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後日もう一度訪れた際には店の一角で10人ほどの合唱団がキーボードを持ち込んで練習しており、主宰者の女性の「エネルギーを宇宙に」といった指導が聞こえてきてこれは良い時に来れたなと耳をそばだてておりました。まあ、耳をそばだてるまでもなく店内にはアンジェラ・アキ「手紙」の合唱と池の水音のマリアージュがこだましていて最高のヒーリング空間でした。良い喫茶店がある町は良い町だ。

パルクから5分ほど歩いたところにあるコーヒー舎・ブラジルも素敵な喫茶店。

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外観はシンプルながら赤に白の看板と青いフリルのような瓦が美しい。夜に前を通ると店内の灯りが良い雰囲気を醸し出している。

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仕切りが高くプライヴェート性が高いのも嬉しい。クッションが柔らかく深く沈むタイプの椅子なのでいつまでも長居してしまいそうな心地良さだ。

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揃いのカップとソーサーも可愛らしい。調度品にこだわりが見られる一方で、店内のショウケースにレタスが丸々突っ込んであるところも良い。

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お手洗いは扉をあけるとすぐに男性用の便器があり、そこを通って個室へ行く作りになっている。入り口に鍵がついているか確認し忘れてしまったが、知らずに開けると人がいなくても思わずギョッとしまう。かつてはよくある形式だったのだろうか。

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通りに面した入り口とは別にカウンターの向こうにも入り口があり、常連さんがやって来てカウンターで店主と世間話をはじめた。ここは夫婦が2人で切り盛りしているようだ。親戚の身の上話や町の開発話なんかが聞こえてくる。ちなみに店のエアコンは故障中らしい。

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古河駅周辺はコンビニやスーパー、書店、CDショップ、居酒屋は揃っているものの、決して娯楽のある雰囲気ではない。自動車学校の教官も「古河、なーんにもないんだよね」と言うほどで、休日でも歩いている人は極めて少ない。しかし、東口を出てすぐ左にいくと、歓楽ビルがあらわれる。

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すべて閉店しているかと思いきや、夜になると和風パブ・越後屋の看板が煌々と灯っているのが見えた。残念ながらセクシーパブ・スーパーギャルズは営業してない模様。

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もう少し歩くとスナック街もあり、昼からカラオケの音が聞こえてきた。駅から看板が見えたパチンコ屋に近付くと閉まっていたが、すぐ隣にマッサージ屋の看板が出ており、町としての機能は衰えていないことを実感した。

西口は少し歩くと歴史博物館や美術館といった文化施設があり、また雰囲気が異なる。お店は少なく、昔からの佇まいを残しているものの営業している様子はなくガランとしてもいる。

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大きな通りを5分ほど歩くと県道に突き当たるのだが、そこで異様な店に辿りついた。

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交差点の一角に突如あらわれるアンティークショップ。ブリキのおもちゃ、蓄音機、木箱、扇風機、スーツ、こけしetc…アンティークというよりも骨董品、ガラクタといった風情の節操のない品揃えに唆られるではないか。雑然と商品がひしめく店頭は入り口がどこか分からず、電気も付いていない。営業していないのだろうかと思いつつ写真を撮り、ふと振り向くと道路を挟んで向かいにも店がある。

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ジョイパティオというインドカレー屋やパブの入った複合施設にも同じアンティーク屋が入っているようで、店頭にはペコちゃんのプリントされたジャンパーが飾られている。店名はマミーコンチネンタルというらしい。横断歩道を渡りお店に近付こうとしたところで、店主らしき初老の男性に「古河へようこそ!」と声をかけられた。お店を窺っているのを向かいから見ていたのか、待ち構えていたようだ。「いつ来たの?いつまでいるの?」と余所者であることを見抜かれていることに驚いてしまったが、もしかしたら地元の人たちは近付かない場所なのかもしれない。もしくは免許合宿生が何人か訪れているか。

呆気に取られていると、「ここはね、大事なことを教えるお店なの。100円から色々売ってるけど、買わなくてもいい。」「友達にも教えてあげて欲しいくらいなの。」「本当は15歳くらいで知らなきゃいけないことなんだけど、ま、年齢は聞かないけどさ。ハハハハ」と矢継ぎ早に話しかけられた。いかにも怪しい文言が並んでいるが、店主はいかにも怪しい外見というわけではなく身綺麗な人物だった。また、まくしたてはするものの「この辺りを回って見たらまたおいで」と無理にその場で引っ張ろうとしないところが余計におそろしいではないか。店頭に並ぶ骨董品には興味深々だったしお店に入りたい気持ちもあったのだけれども、突然話しかけられたことにびっくりしてそそくさとその場を後にした。「ネットで調べてみて。」と言われたので店名で検索してみたものの情報はほとんど出てこず、「大事なこと」がどういうことなのかも分からない。有名なB級・珍スポットという訳でも無さそうであるし、だとしたら未開拓のスポット見つけてしまったのではないかという得も言われぬ高揚感もあり、その後もこの店のことが気になって気になって仕方なかった。再訪しようかとも思ったのだけれども「大事なこと」と「15歳くらい」という言葉が引っかかって結局行かず仕舞いだ。こういった場所にいるのは純粋な狂気をもった人物であるか、作為のある人物であるかを見抜くのがとても難しく、乗り込むにも勇気がいる。案外、ただの骨董屋かも知れないし。こういうとき、大胆さと機敏さがあれば私の人生もっと刺激的なんじゃないか。再訪しなかった私の勘が正しかったのか間違っていたのかは確かめようもないが、今となっては夢を見ていたのではないだろうかと思うほどに古河での体験として強烈に残っている。

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