ニュースクラップタウン

私事で恐縮です。

VANISHING VANITY

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つい数日前まで夜の7時でも明るかったのに、6時過ぎに電車が地下を抜けて地上に出るともうとっぷりと日が暮れていて季節の巡りの早さに呆然としてしまう。朝晩は肌寒くて長袖を着て出かけたものの、気温に合わせて弱まった冷房や日中の日差しには汗ばんでしまう。何度も経験しているはずなのに、季節の継ぎ目を乗りこなすのはなんと難しいことだろう。

自分の記憶を録画して、何度でも鮮明に再生できるようになればいいのに、とばかみたいなことを考える。楽しかった記憶を反芻していると徐々に輪郭がぼやけて、あれは夢か妄想だったのではないだろうか、と自分を疑ってしまう。反芻しているうちに少し脚色してしまっているのは間違いない。あのときこう会話を展開していればとか、あの流れでこの質問をしていればとか、無数のifで頭がいっぱいだ。ありえたかもしれない過去を想像で補ううちに、現実の記憶が遠のいてゆく。おぼろげになっていく会話の記憶と裏腹に、歩きながら眺めたコンビニの灯りや涼しくなりはじめた夜風ばかりが鮮明に思い出される。きっとこれは本当に本物。

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9月7日、坂元裕二朗読劇のチケットも取りそびれ久しぶりに何の予定も無い休日で昼の12時まで惰眠を貪ってしまった。プレイヤーの不調で借りてきたDVDが再生できず、少しだけ衣替えをはじめたらブラウスとニットが嵩張って途方に暮れて1日が終わり、夜の10時には瞼が重たくなって布団に入る。夜中の2時や4時にぼんやりと目を覚ましては眠りを繰り返すと夜が白みはじめた。次の日が来ている。窓の外が青白くなっていくのを眺めながら、ぐっすりと眠ったはずなのに眠れずに夜を明かしたような気分でまた目を閉じる。眠っても眠っても足りない。身体の調子が悪い、というより少しだけ変だ。喉が痛い。

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目を醒した瞬間から好きな人のことを考えていて自分でも呆れてしまう。好きで好きでたまらない気持ちをただ相手にぶつけることは暴力に等しい。世の中のみなさんは、どうやって恋愛をしているんだろう。まるでわからない。こんな状態でSPANK HAPPYの「I LOVE YOUの逆襲」なんて聞いちゃって、頭おかしくなる。ぐるぐると考え続けるのも限界に近く、友だちに聞いてもらおうかと思っていたタイミングで来月にご飯の誘いが来てとても嬉しくなった。もう少しで『ひよっこ』が終わってしまうのが寂しいけれど、10月には『監獄のお姫さま』が始まるしVIDEOTAPEMUSICのアルバムが出るし友だちに会えるし、やっぱり未来はいつも100パー楽しい。

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結構本気で、好きな人をご飯に誘いたかったのだけれど、やっぱり出来なくてちょっと凹んでしまった。滅多にない絶好のチャンスを逃してしまったこともなかなか大きい。誘うまではいかなくても、好意をほのめかすくらいのことをしたいほどに、私は具体的にその人のことが好きなのだと気付いてしまった。だって私のこと可愛いって言ってたみたいなんだもん。トランポリンのような情緒なのでいちど大きく沈むと跳ね上がり、跳ね上がっては反動でより深く沈み、というのを繰り返している。自分の欲求に振り回されている感じにも参って泣きそうな気分で歩いていたら、帰り道に理想的な色のリップを見つけた。秋に向けて暗い色を探していて、普段はお化粧品ひとつ買うのにもかなり熟考するものの(といっても1000円台のものですが)、これだと思ってレジに向かった。チョコレートブラウンのリップ、似合うかどうかはわからない。


CHAI / ぴーちくぱーちくきゅーちく 〜勘違いオンナっていっぱいおるよね〜 オフィシャルミュージックビデオ

ときめき返納

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寝ぼけ眼でTwitterのタイムラインを眺めていると、通勤に使う地下鉄が遅延しているらしい。私が乗る時間にはもう落ち着いていそうだとは思いつつ、念のためルートを変えることにした。乗り換える駅も路線もいつもと違う。不思議な感じ。たどり着く場所は同じなのに、違う場所へ向かっているような、違うことをしにいくような気分になった。気分転換というのはこういう風にするものなのか。定期圏から外れるのでいつもという訳にはいかないが、たまにはルートを変えてみるのも良いかも知れない。普段と違う駅のホームへ歩きながら、劇団☆新感線『五右衛門VS轟天』に出てくる池田成志演じるヴィジュアル系忍者ばってん不知火の「手段のためなら目的を選ばない男」という台詞を思い出していた。いや、全然違うなこれは。でも良い台詞だな。

殺人出産

殺人出産

 

自殺のニュースを聞くといつも村田沙耶香の『殺人出産』単行本に収録されている短編小説「余命」を思い出す。自死が当たり前になり、死に方やタイミングをすべて自分で選ぶことができる世界の話。とても短い作品でシンプルながらそのインパクトは絶大で、私はこれを読んだとき素直に良いなあと思った。こんな時代が来ればいいのに、と。自分のタイミングで人生や生命を終わらせることができたらどんなに良いだろう。実際に死なないにしても、そうできる、ということが生きるための担保になり得る。その選択は、どんな場合も尊重されるべきだと思う。村田沙耶香は、社会のしがらみから生じる様々な軋轢や抑圧、倫理的には良しとされないが誰もが持つであろう発想や価値観を小説の中で解放させる。極端に合理化された「社会」を通して、美しく逸脱していく様がとても好きです。


悲しみのない世界 (You Ishihara Mix) / 坂本慎太郎 feat. Fuko Nakamura (zelone records official)

 

近頃はSPANK HAPPY以降に菊地成孔が女性とデュエットした曲ばかり繰り返し聴いている。他にもまだまだ知らない曲がありそうだ。完璧なプレイリストを完成させたい。単体でも好きだけれど、女の子の声と重なった瞬間に生まれるあの官能はなんだろうか。胸のあたりがじんわりと圧迫されるような、心地のよい痺れ。ときめき、とはきっとこのことだという感覚を聴くたびに覚える。

けもの「第六感コンピューター」「tO→Kio」「Someone That Loves You」

相対性理論「QHPMAS」

菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール「I.C.I.C feat.I.C.I.」

菊地成孔と浜崎容子「泥の世界(Rinbjöカバー)」

祝福

祝福

 

長嶋有の短編集『祝福』を読んだ。人物の視点から主観で話が進んでいるかと思えば、ときに全体を俯瞰したような感覚になるのがいつも不思議だ。極私的のようであり、普遍的のようであり。カルチャーを好む夫婦の、冷めているわけではないけれど適度に保たれた距離感や冷静さを描いた「ファットスプレッド」という短編がお気に入りです。

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8月24日、こまばアゴラ劇場にてFUKAIPRODUCE羽衣『瞬間光年』を観劇。白いふわふわのアンサンブルが澱んだ空気、塩素水、クーラーの風、生ゴミの臭い、想像の鷹となってそれぞれの人物を繋ぐのは面白いなー、と思いつつ、ダンスや演技にそれほど魅力を感じられなかったのが致命的でノリきれず。最後ののたうちまわるような躍動やミニマルな音楽に合わせた動きは、見ていてなぜだかわからないけど「わかる」と思った。

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池袋に移動して西口にあるカフェ・ド・巴里へ。内開きの自動ドアから、エスカレーターへ乗り、ギラギラのシャンデリアに近付いていく高揚感。都会のテーマパークだ。ビーフシチューセットとチョコレートケーキを食べた。セットについてくるバターのたっぷり塗られたパンとシチューにのった生クリームが混ざると背徳的なくらい甘い。要するに太りそうな味がする。

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窓際の席から池袋の街を眺めていると、交番に出前が入っていくところを目撃した。特別な光景でもないのだけれど、お蕎麦と丼ものと思しきものの乗ったお盆を肩に抱えて交番の奥に歩いていく様が、ドラマでよくあるワンシーンを見たようでなんだか得した気分だ。  

abさんご

abさんご

 

黒田夏子abさんご』を読んだ。平仮名が多く固有の名詞が最小限に絞られた文字列を追っていると、なんだかぼんやりとしてくる。しかし、本から離れると先ほどまでいた世界が恋しいような気持ちになり再び文字に目を落としたくなる。ひとつひとつの表現を味わうには体力や集中力を要するし、きっと内容の半分も理解できていないのだけれども妙に惹き寄せられる稀有な読書体験だった。

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東京芸術劇場シアターイーストにて日本総合悲劇協会vol.6『業音』を観劇。観終えて改札まで歩く間、蒸し暑いはずなのに鳥肌が止まらなくて身体が芯から冷えたような心地がした。私が見たものは、聞いたものは一体何か。これが業の音か。舞台セットや衣装、人物の入れ替わりなどどこか浮世離れした設定に、松尾さんの描く世界はここではないどこかのような気がして、気兼ねなく笑ってしまうのだけれど、その次の瞬間に喉元に刃先を突きつけられたような現実感が迫ってくる。それでもどんよりとはせず、思考を続ける力を与えられたように思う。その力強さとは戯曲だけではなく演者たちの姿に由来するものでもあって、演劇でしか出来ないことだと実感する。『業音』は特に女優陣の格好良さが際立つ舞台だった。この物語の中で唯一、自分の確固たる意志で動き高みにいる杏子を演じた伊勢志摩の格好良さったら。発声のひとつひとつに痺れる。

 

「夜は短し歩けよ乙女」 Blu-ray 特装版

8月25日、早稲田松竹にて湯浅政明監督『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』を鑑賞。森見登美彦の原作を読んだのは随分と前だけれど、くどくてインテリで狂騒的な空気に妙に懐かしい気持ちになった。学生だった当時、なんだかとても新しいものに出会ったようで興奮したものだ。さくさくと進んでいくテンポと割と素直にハッピーなのが、今の私の気分にはぴったりだったな。『夜明け告げるルーのうた』はスタンダードだしエモーショナルだしでとても面白く観た。

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電車のBOXシートのような座席が特徴の喫茶ロマンへ。以前訪れたときは変則的にオープン時間が遅れていて入れなかったので念願叶って。いそいそと窓際へ座りました。全貌を楽しむなら壁際を選ぶのもよいなーナポリタンに生卵がのったスパゲッティーロマンとウィンナーコーヒーをいただく。

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高田馬場から新大久保まで歩いて汗だくだったのと、また喫茶店に入るのもなあと思って30分だけカラオケ館に入る。数ヶ月前にも無性にカラオケがしたくなってひとりで来たが、あまり楽しくなくて虚しくなってしまった覚えがあるのにまたやってしまった。ホログラムの壁をバックに無意味に自撮りしてみたり、森田童子「ぼくたちの失敗」を歌ってみたりした。30分1ドリンクで684円というのは喫茶店でコーヒーを一杯飲むのとあまり変わらないが、高いのか安いのか分からない。個室で靴でも脱いでくつろげるのはありがたいな、とも思うけれど。あと、よろけた拍子にサンダルが壊れかけていたことにカラオケに入ってから気が付いて、歩き回るよりもこの選択が間違っていなかったことに少し安心した。

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東京グローブ座にてフキコシ・ソロ・アクト・ライブ『夜』を観劇。吹越満8年ぶりの演芸で私はお初。溢れるアイデアと程よいくだらなさがたまらない。何をやっているのだろうと訝っていると徐々に目的が見えてきて、そのくだらなさにクスクスと笑ってしまう。かと思えば、ふと幻想的な光景が姿をあらわし、深い魅力にはまってゆく。でも着地点はやはり笑い。小林賢太郎Potsunenと同じく、発想とそれを具現化する過程そのものを魅せる面白さがある。具現化するためにどう身体を動かすか、どの道具をどう使うか、何が生まれるか。その逆もしかり、技術や動きをどう表現に昇華するのか。そのスリルは何物にも代え難い。あと、吹越さん好きなので永遠に見ていられる。カーテンコールのロボコップ演芸ではゲラゲラ笑った。

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8月26日、いそいそと帰宅してテレビを点けたら『ゴッドタン』ゴールデンスペシャルが何故か冒頭の5分と最後の30分しか録画できておらず、やり場のない悲しみに包まれる。と、思っていたら佐久間Pが予定はされていないとツイートしていた見逃し配信があり、テレビ東京と佐久間Pへの永遠の忠義を誓った。『キングちゃん』プチ復活の趣もあり、めちゃくちゃ楽しかった。


思い出野郎Aチーム / ダンスに間に合う 【Offcial Music Video】

8月27日、VIDEOTAPEMUSICに間に合うタイムテーブルだったので当日券でカクバリズムの夏祭りへ。この日はミスというかひとりでてんやわんやして要領の悪さを発揮することが重なり、後日に響きそうな小さい気がかりもあり、別のことでも頭がぐちゃぐちゃだったので、これはもうライブしかない!!!という気分。そう、今夜、ダンスに間に合う。18時過ぎに到着し、数十分押していたおかげで頭からスカートを見ることができた。澤部さんはなんかもう全身が格好良い。はじめてみたグッドラックヘイワも格好良かった。ふいに聞こえてくる美しい旋律とテクニカルな演奏に耳が忙しい。VIDEOTAPEMUSICは今年の夏唯一の東京でのライブということで一曲目「世界各国の夜」の出だしから気合いがひしひしと伝わってきたし、むちゃくちゃ最高のライブだった。しかもしかもしかも!10/25 3rdアルバム『ON THE AIR』リリース、11/23モーションブルー横浜・12/27東京キネマ倶楽部ワンマンライブが発表されブチ上がる。今日来て良かった〜〜〜!と心から思った。既にライブで聞いたことのある「密林の悪魔」や「Her Favorite Moments」はフレーズがより複雑になったような印象で進化を遂げていたし、最後に演奏された新曲「Fiction romance」ではVIDEOTAPEMUSICの新たな核と呼ぶにふさわしい映像と字幕が現れて思わず泣きそうになってしまった。これはもうアルバムもワンマンも超やばいことが確定だ。VIDEOTAPEMUSICからの思い出野郎Aチームというのも最高の流れで、高橋さんのしゃがれたボーカルで歌い上げられるとなにもかも大丈夫な気がしてくる。寂しさもそのまま歌う頼もしさ。ライブだと演奏もよりザラザラとした格好良さがある。明日も早いのでユアソンは諦めて、それでも充分な浮かれ気分で実物を見たらカクバリズム15周年アロハが大変可愛くて買いそうになったのだけど、いやいやこれはライブ後のテンションだからだとその場では気を鎮めて帰る。でも欲しくなってきたな。めっちゃ可愛いな。通販されたら買いそうだな。

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8月29日、ゴッドタン録画失敗を筆頭に今週は凹む出来事が続いて散々な気分に陥っていたのですが、それが一瞬でチャラになるほどの嬉しいことがあった。これまでの冴えない諸々は、ここへの助走だった気さえする。大げさでしかないけれど、目下片想い中のひとと楽しくお喋りできた、という、たったそれだけでどうしようもなく心が飛び跳ねてこれまでの世界が輝きはじめてしまう。自分ばかり喋ってしまったな、とか、ちょっと声が大きすぎたかな、とか、全然上手に喋れかったな、とか、はしゃいで変な身振りになってたな、とか、引かれちゃったかな、とか色々あるけど。そんな中でも巧みにフォローして話を運んでくれて、なんて素敵な人なんだろうと改めて思った。私の話に耳を傾けて、応えてくれた時間があったという事実が、私のこの先を照らしてくれると思う。もし私がいま死んで、『ワンダフルライフ』のような世界があるとしたら、間違いなくこの日のことを選ぶ。あと、その好きな人なんですけれど、VIDEOTAPEMUSICとあまちゃんのミズタク(松田龍平)を足して、吹越満菊地成孔のエッセンスを少し加えたルックスと雰囲気で、この人はわたしの作り上げた偶像なのではないか?とたまに思う。

このどうしようもない片想いにぴったりというか、答えをくれるような台詞が以前『ひよっこ』第16週「アイアイ傘とノック」に出てきた。省吾(佐々木蔵之介)に一目惚れした愛子(和久井映見)がこう言うのだ。

わって一瞬で恋に落ちて
そしたら何だか急に元気が出てきました。
はっ、まだ私大丈夫なんだわ
まだまだ乙女なんだわって思ったら
そしたら、頑張れる気がしてしまって。
ありがとうございます
現れていただいて。

いえいえ、いいんですいいんです
恋してることが大事なので結果じゃなくて
だから、失恋させないでください

もう、まさしく。愛子さんの姿を見ながら胸が熱くなった。愛子さんは、乙女寮だけじゃなく、日本中の女の子のお姉さんだ。これ以外にも『ひよっこ』で描かれることと自分の状況が、表層や細部は違えど共鳴することが何度かあって、きっとそんな人が沢山いるんだろうなと思う。ひよっこの登場人物のこと全員大好きなので中だるみいいじゃないか!と毎日楽しく観ています。物語の中に自身を見出したときの、あの、掬い上げられたような気持ち。


Cornelius - 『あなたがいるなら』"If You're Here

8月31日、朝から降っていた雨が上がると冷たい風が吹いた。夏休み最終日、夏の終わりに相応しい淋しげな天候。涼しいのだけれども、コンビニまで自転車を走らせたら汗だくになってしまってやっぱり痩せなきゃ、と思うのだった。寒くなって脂肪を蓄える時期が来るというのに。もうすぐ秋色のチェックを着たりふわふわのマフラーが巻けると思うと嬉しくなっちゃうな。夕方に帰省していた母を迎えに車で空港へ。雨が降ったあと、とても空気が澄んでいて東京中の灯りがいつもよりキラキラと輝いてみえる。窓の明かりやビルの輪郭がくっきりとしている。遠くまで明瞭に見えて、鉄橋を渡る電車がすれ違う。お台場と葛西の観覧車が回っている。すべての景色が高画質の映像のように車窓を流れる。あっという間に流れていく。

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向かいのホームの電気が消えて

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お盆休みに突入したのを機に、NetflixTSUTAYA DISCASを導入した。未知の映画を求めて検索していた筈が、気付くと観たことのあるお気に入りの映画ばかりマイリストに入れているのは私だけでしょうか。『人のセックスを笑うな』とか『横道世之介』とか『愛の新世界』とかあると観たくなっちゃう。これで『水曜どうでしょう』のシリーズが揃ったらいよいよどうなってしまうのか。そんな誘惑に打ち勝ち観た作品。

【早期購入特典あり】LOVE(劇場版B2ポスター付き) [Blu-ray]

ギャスパー・ノエ監督『LOVE』。慈愛のこもった行為と欲望による行為が異なる描かれ方をしつつ、その境界がスレスレのところで融けあいそうになるスリルがある。愛のある/ないセックスとよく言うけれど、愛が性へと導くのか、性が愛を生むのか(ときに人の形を伴って)、愛とは性とはと延々考える羽目になった。胸を締めつける愛おしき気持ちと、身体の芯をジンとうずかせる劣情は、限りなく近い場所で私たちを狂わせる。ときに手を組み、ときに対岸に立ち。不可分だからややこしいのだ。明滅、ハートマークを模したキスシーン、ラストシーンで流れるエリック・サティ『グノシエンヌ第1番』など、べったりと脳裏に焼きつく映像も後を引く。見所のひとつであろう精液のシーンは確かに3Dで観てみたい。ときに、私は安部公房が『砂の女』で用いた〈白子の打ち上げ花火〉という表現が大層お気に入りなのですが、きっと映像になるとこんな風なのでしょう。打ち上がり、残滓が火花を散らして下降する。下から見るか?横から見るか?冗談はさておき、カップルの親密さの生々しい写し取り方は毛色はまったく違えど井口奈己監督『人のセックスを笑うな』と通ずる凄まじさがある。『LOVE』のテーマもまさに「人のセックスを笑うな」ということなのでは?という気付き。ちょっと違うか。あと、息子の名前がギャスパーでエレクトラの元カレがノエっていうのは何かあるのだろうか。

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宮藤官九郎脚本『コワイ童話 親ゆび姫』。若かりし栗山千明高橋一生矢沢心皆川猿時だけでお腹いっぱいになるな。高橋一生に想いを寄せるあまりに薬で彼を小さくして思い通りにしようとどんどんサイコと化す栗山千明のお話。めちゃめちゃ面白い訳ではないけれど、後半に出てくる自ら望んで小さくなったおじさんたちに宮藤官九郎を感じた。それから、相手への想いが空回って斜め上に飛んでいってしまう感じも昨今の作品と通づるものがある。『我輩は主婦である』でもそっくりな格好をさせられていましたが、昔の高橋一生は笑うとニヤケているときの宮藤官九郎に本当に似ている。

正しい相対性理論

正しい相対性理論

 

なぜか近くの市立図書館に所蔵されているのを見つけ借りてきた『正しい相対性理論』を聴いた。菊地成孔SPANK HAPPY名義で参加しているのにずっと聞かず仕舞いでいたのだった。わたしは菊地成孔のボーカルが大好きなので無条件に愛でてしまう。高校生のころによく聴いていたので、少しの懐かしさも手伝ってかとても面白いアルバムに聴こえる。

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8月15日から両親と祖母と2泊3日の小旅行。那須に宿泊して周辺を見て回る、旅行と呼ぶには張りのないお出かけだ。車移動なので本を数冊と『ストレンジャー・シングス』『ラブ』をダウンロードして準備万端。

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餃子を食べに宇都宮へ立ち寄る。当然みんみんをはじめとした有名店は軒並み行列なので、その近くで唯一空いていたお店に入る。予想通りのシケた昼食と思いつつ店を見渡すと、いたるところにE.YAZAWAの文字。カウンターにE.YAZAWA。お手洗いの扉も電源カバーもE.YAZAWA。なのに店内BGMは中島みゆき。テレビも点いていて音が混ざり合っている。静かなる混沌。思いがけずテンションがあがる。餃子も美味しくいただいた。

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商店街の店先のベンチに祖母と座っていたら、通りすがりの小柄で妙齢の女性がコップに浸けてある植物を見て「これ水に浸けておくだけで沢山根が伸びるのよね。こんなに大きくなる。」と話しかけてきた。「へえ〜そうなんですね」と相槌を打ち、隣に腰をかけるだろうかとうかがっているとそのまま歩き去っていった。まぼろしだったかもしれない。

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宇都宮は、駅前に商業施設、商店街、脇道に飲み屋と風俗店がぎゅっと揃う地方都市ならではの風景でとても見所が多かった。古い建物も沢山残っていて良い街だ。商店街を脇に入るとPaul Smithがあったり、古い時計屋の上にAngelic Prettyがあったり、アニメ系のお店が固まっていたり、色々な文化が混在していて面白い。

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那須高原の宿泊地は電波も弱く特に観たいテレビ番組もないので、読書とNetflix鑑賞にはもってこいの環境だった。家にいるよりも集中できるような気がして、こういう風に読書や映画鑑賞のためにのんびりと外泊するのもよいかもしれない。『旅猿』でたまにやっている海外ドラマ夜通し耐久旅行みたいなね。友だちとお勧めのドラマや映画を持ち寄って観るのも楽しそうだ。しかし、森に囲まれた環境で観るには『ストレンジャー・シングス』はマッチしすぎて怖くなりそうだったのでやめておいた。ビビりな上に直ぐに影響されるので、サメの映画を見るとお風呂やプールが未だにこわくなる。その上いつもと環境が変わると上手に寝付けないので、イヤホンでナイツの漫才を聞きながら眠った。 旅行中は本を2冊読んだ。車でも宿でも直ぐに眠たくなってしまって、思ったよりも進まなかったな。

水やりはいつも深夜だけど (角川文庫)

水やりはいつも深夜だけど (角川文庫)

 

窪美澄『水やりはいつも深夜だけど』。家族にまつわる短編集。日々の暮らしのなかで、自分の中にだけ留めている後ろ暗い感情が淡々と炙りだされる。閉塞感、見栄、嫉妬、差別感情…想起することとそれを口に出すことの間には大きな大きな川が流れているとはいえ、それを抱え続けるにも限度がある。そういったものをぶつけてもいいのではないか、受け入れてくれるのではないかと思ってしまう関係性が夫婦や親子というもので、だから一緒にいるのか、だから離れてしまうのかわからないけれど。それと同じくらい家族だから受け入れられないこともあって。それでも私たちは関わりあうことを諦めない。そういう繊細で複雑な機微がとてもシンプルに描かれていて、色々なことを考える余白があるのも良い。

週末カミング (角川文庫)

週末カミング (角川文庫)

 

柴崎友香『週末カミング』。何かが起こったような、何も起こっていないような週末に関する短編集。気候や体調などの描写と、それに伴う感覚の描き方が巧みでするすると引き込まれていく。街の風景などの外的要因と感情の描き方の距離感がとても心地がいい。押し付けがましさがなくて、主人公たちはいつも外縁から世界を眺めているような人が多い印象を受ける。「地上のパーティー」での一節が象徴的だ。

おれは、この世界で生きてる、と思った。いろんな人が勝手にいろんなことをやって、地球は勝手に回転して夜が来て、今日が終わっていく。この世界に、そのばらばらのものたちと同時に存在している。

雲の上から見たら、地上の全体がパーティー会場みたいに見えるかもしれない。一つの場所に集まってるけど、みんなてんでに勝手なことを考えてる。おれもその中の、一つの点だ。なんかおもしろかった。

柴崎友香の小説の温度感と距離感がいつも好きだ。あと、「ここからは遠い場所」の河野さんは頭の中で会話を想像する癖があって、私もよくやるのでシンパシー。

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2日目は母の希望で福島県会津へ。昼食に名物らしいソースカツ丼を食べた。福島といえば、もてスリムによるロロ『BGM』フィールドワークレポートにも登場する。

水を飲んでカツ丼を待っている間、ふと気付いたことがあった。「もしや、三浦さんが頼んだ煮込みカツ丼とは、ただのカツ丼なのではないか……?」。口に出すかどうか迷っているうちにそれぞれのカツ丼が到着する。三浦さんの目の前に置かれたのは、やはりただのカツ丼だった。「やっちまったー……」「煮込みカツ丼ていうから、なんか味噌煮込み的なのをイメージしてた」「でも、考えてみたらいわゆるカツ丼って煮込みカツ丼のことですよね」。ソースカツ丼で知られる店を訪れて普通のカツ丼を食べる三浦直之。端から見ると「通」っぽいセレクトに見えるが、三浦さんの表情は暗い。

このくだりがすごく好きです。愛おしすぎる。『BGM』への期待も日に日に高まっています。

note.mu

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昭和なつかし館に立ち寄る。1階が雑貨屋、2階が昭和の街並みを再現したスペースで、こういうスポットはどこにでもあるといえばあるのだけど、否応なしに吸い寄せられてしまう。東京タワーとはとバスのパンフレット、板橋ヘルスセンターのポストカードセットを購入しました。良い買い物をした。高度経済成長期に華やいだ東京の街や文化に情景を抱きながらも、現在オリンピックを目前に変わりゆく東京を歓迎する気分にはなれない。時代や情況が違うのは当然なのだけど、もしもわたしが過去に生まれたとして当時の変化に魅力は感じただろうか。まあ、そんな理屈を抜きにして当時のデザインにときめく気持ちは変わらないのだけれど。

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旅の間は満腹中枢と金銭感覚が完全に馬鹿になるので、猪苗代で馬鹿などら焼き350円を買って車で食べた。ご覧の通りのあんこの味がしました。

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最終日は私のリクエストで東武ワールドスクエアへ。小雨が降っていたし入場料も決して安くはないので止めようかともなったのだけれど、折角ここまで来たからと入場。東京駅や羽田空港、新緑川駅など近現代のミニチュアにひとり興奮している一方で、両親や祖母はお城や宮殿などの世界遺産をなかなか楽しめたようで安心した。もっとテーマパーク的なものを想像していたのだけど、ひたすらにミニチュアでストイックさすら感じた。スカイツリーの周辺でも車の車種がすこし古くて、製作者の趣味を感じ取ることができたのもよい。

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こちらも私のリクエストで、メヒコ フラミンゴ館つくば店で夕食。前日に郡山店を通りがかったのだけれども夕飯には時間が早く悔しかったので、うれしさ倍増。書き割りのようなエキゾチズム。たまらない。一生分、じっくりとフラミンゴを見た。見れば見るほど不思議な足だ。羽を広げると筋肉のような赤い羽根が見え隠れして一瞬ギョッとしてしまう。興奮して同じような写真を何枚も撮ってしまった。

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myplanet2017.amebaownd.com

8月18日、三鷹市芸術文化センター 星のホールにてままごと『わたしの星』を観劇。スピカを探すシーンで涙がこぼれ、そこからは感動でずっとぷるぷる震えていた。出演者自身の演奏にのせてそれぞれのシーンが交差しループしながら進んでいく完成度と運動そのものの美しさに胸を打たれてしまう。最後にスピカが全員に転校を告げるシーンはおそらく彼らの中には存在しなかった時間なのだけれども、いままさに私たちの前で演じられてそのシーンが確かに存在しているという、演劇の儚さと力強さを目の当たりにした。うまく言葉にできない。照明演出も美しかったし、ミュージカルの練習シーンも素晴らしかった。キャスト全員が本当に魅力的で、中でも私はタイちゃんが可愛くて仕方なかった。タイちゃんがバランスボールを手にヒビラナに告げる台詞のなんと力強いことか。新鮮な驚きのある内容ではないけれど、台詞やダンス、動きのひとつひとつがとにかく瑞々しい。

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中央線沿線にくると目的地だけではなんだか勿体無い気がするので、三鷹から隣駅の武蔵境まで歩いて武蔵野プレイスへ立ち寄った。建物全体がなめらかな曲線で構成されていてわくわくする。近くにこんな図書館があったら毎日通ってしまうな。その後、国立へはじめて降り立つ。広々とした大学通りと建物がぎゅっと詰まった駅前の通りがよいコントラストだ。

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ロージナ茶房でビーフストロガノフとアイスコーヒーを召す。今日の大学通りには夏の日差しも学生たちの笑い声もなかったけれどSummer Soul。


cero / Summer Soul【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

  

わが星「OUR PLANET [DVD]

わが星「OUR PLANET [DVD]

 

『わたしの星』観劇後に購入した『わが星』のDVDを観た。名作としてとにかく名前を聞くのに未見だったのだ。口ロロ「00:00:00」はずっと聞いている曲なのでとても耳馴染みが良い。口語とラップがシンクロしていく様や、回るという運動とループにぐんぐん巻き込まれていくような心地良さ。作品の中で言葉が完成されているので、なかなか感想を綴るのは難しいけれどこの先何度も見返したくなるだろうと思う。

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夕方ごろ、大きな音で雷がなって雨が降り出した。東京には雹が降ったらしい。「轟く」とはこういうことだと言わんばかりに轟く雷鳴。いかにも夏の終わりのような雨だ、と思ったところで、いつも夏ばかり始まりと終わりを意識していることに気付く。私が他の季節の変わり目に鈍感なのか、夏に伴うイメージに憧憬を抱きすぎているのか定かではないけれど、そんなことはないかしら。夏の終わりというタイトルやテーマって多くないかしら。夏はいつもいつも惜しまれている。惜しまれるために待たれ、去るために訪れるようだ。お盆休みの最終日は髪を切ってマニキュアを落とした。

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宮藤官九郎脚本『悪いオンナ 占っちゃうぞ』を観た。メンヘラ気質の美少女という点でも『親ゆび姫』とテイストが似ていて、演出や主題歌にIWGPあたりの懐かしさを感じる。これもめちゃめちゃ面白いわけではないのだけれど、高田聖子が魅力的で見ていられる。あと若かりし河原雅彦宮藤官九郎がめちゃ可愛い。クドカンとまちゃぴこですね。

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8月20日18時44分、胸のあたりがどんよりと重たく気分が沈む。周期的なもので少し経てば回復することはわかりつつもそれなりにきつい。こうなる度に、私の好きなもの(演劇、テレビ、ドラマ、音楽、ラジオ、本、お洋服)をひとつひとつ確認して心の中で言い聞かせるのだけど、結局私は何も好きじゃないのではないかという結論に至ってしまう。幾度となく救われた。でも、愛すべきポップカルチャーを、たかが私の慰みものにはしたくない。それでも、私が愛しているのはつまるところ私だけ、という醜い事実がどこまでも着いてくる。そして、私を愛するのは私だけ。ああ、でも、愛しているよ。来週は『ゴッドタン』ゴールデンスペシャルだ。

 


あだち麗三郎 - フラミンゴの翔ぶところ

 

不可侵領域

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私のバイト先は、いつもいる場所の近くが吹き抜けになっていて雨が降ってくるとすぐに音でわかる。音が聞こえると大抵上を見上げて「雨ですね」「予報出てましたっけ?」「帰りまでに止むといいですね」なんて会話を交わすのだ。いつだったか、都内に雹が降った日はものすごい音がして思わず顔を見合わせて笑った。安全な室内にいるから、あまりにも強い音がするとちょっとわくわくしてしまう。外の様子は見えなくて、音だけで想像するのがいい。私はこの場所を心から気に入っている。

 

最近ずっと聞いている音楽。

鶴岡龍とマグネティックスの新作『甘夏 EP』、バリエーション豊かな4曲で永遠に聴いていられるくらい良い。とにかくメロウでラグジュアリーで、うだるような真夏の夜に聴きたい。10月のモーションブルー横浜でのライブも大変楽しみです。

めたもるシティ

めたもるシティ

 

TBSラジオ菊地成孔の粋な夜電波』で「第六感コンピューター」を聞いてからずっと楽しみにしていたけもののアルバムも聴けば聴くほど好きになる。やはり「第六感コンピューター」「tO→Kio」「Someone That Loves You」と菊地成孔がボーカル(tO→Kioは作詞も担当)で参加している曲がたまらないのですが、青羊さんのボーカルと作詞にもやられっぱなしだ。池野恋によるジャケットや長尾謙一郎『クリームソーダシティ』からの引用であろう「C.S.C.」にみられる漫画の世界観と、ひりひりしちゃうような乙女心の描写が混在していてとても面白い。キッチュなシンセや複雑な音の重なりが印象的なサウンドや「フィッシュ京子ちゃんのテーマB めたもVer」のナレーションには、乙女界の問題児ことフレネシにも通ずるセンスを感じる。勝手な想像だけれど、けものの青羊さんとフレネシさんは気が合いそうだな。


フレネシ「不良マネキン」PV

7月27日、曇り空で気温は30℃に満たずとても涼しい。動くと湿気で汗ばみはするものの、連日の猛暑と比べると天国のようだ。もう、夏終わったのかと思った。うっかり夏の気分で調子にのってクリームソーダとか冷製パスタを食べたらお腹をこわした。久しぶりに胃と腸が悲鳴をあげて顔が真っ青になったので冷たいものは当分食べない…

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浅草九劇にてナカゴー本公演『ていで』を観劇。3月にほりぶん『得て』で鎌田順也の作品を見て以来かつ初のナカゴー。客入れのときから役者たちが繰り返し台詞を喋っているし、はじまって早々幽霊があらすじ全部喋っちゃうのに、というか、だからこそ面白い。パズルのピースがはまっていくように本編で台詞が発話されていくのは快感ですらあった。散々言い尽くされたとは思いつつも言わずにはいられない金山寿甲の素晴らしさ。惚れてまうやろ。あれは。

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東京芸術劇場シアターイーストにてノゾエ征爾演出『気づかいルーシー』を観劇。岸井ゆきのちゃんが本当に絵本から飛び出てきたようにキュート。頭の先から指の先までルーシーだった。栗原類の王子もとても良くて、ルーシーとのバランスが完璧だ。松尾スズキがインタビューでよく話している「神様ノイローゼ」(子供のころ自分の行動はすべて神様に決められていると思い、神様にも予想できないような動きをしてやろうと奇妙な身振り手振りを繰り返していた)話がとても好きなのですが、栗原類のぬるっとした動きや表情は松尾さんに通ずるものがあると感じた。

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8月3日、ザ・スズナリにて赤堀雅秋作・演出『鳥の名前』を観劇。当事者たちには預かり知らないところでうごめく「因果」の話。女の妄想癖も、痴漢冤罪も、理不尽な暴力も、すべては見えないところで関与しあい繋がっているという果てのない絶望と希望。色々なことを考えさせられてとても後に残る作品でした。面白かった。新井浩文荒川良々、水澤紳吾、山本浩司とダメ男を演じたらピカイチみたいな役者が揃っていたのできっとそういう話なんだろうという予想をしていたら、ダメはダメなんだけれどそれぞれに必死でみんな生きてて、最後には登場人物たちが愛おしくなる感触もあって良かった。自分ではどうしようもない渦の中、憮然と立っている新井浩文の役はとても象徴的だったし、その存在の仕方が救いのようにも感じられる。f:id:Vanity73:20170807141949j:image

8月5日、IHIステージアラウンドにて劇団☆新感線『髑髏城の七人 鳥』を観劇。わたくし、初ドクロそして初ぐるぐるして参りました。新感線の時代ものには正直食指が動かないと思っていたものの、やはり繰り返し上演されている演目だけあって3時間半があっという間だった。今回はかなり毛色の違うショウアップされた演出だったようで、それも私の好みにあっていたのかなと思います。なるほど確かに、これはひとつ見ると他の演者と演出も見たくなる。でも〈月〉のキャストが高田聖子/羽野晶紀の極楽太夫以外そそられなくて若干拍子抜けしてしまった。これが最後なの?と思っていたら来年に〈極〉をやるそうで、極ってタイトルからしてやばそう。ガッチリ劇団員で固めてくるのだろうか。というか、ステージアラウンドは髑髏城専用劇場にでもなるのだろうか。劇団四季みたいな。今回の〈鳥〉は、口をひらけば「森山未來まじ最高」としか言えなくなるぐらい森山未來の天魔王が素晴らしかった。早乙女太一との殺陣は最早芸術だ。腕一本、足一本を動かすだけで魅力されてしまうのだから。新感線のトゥーマッチな演出の中においても、身体表現の根源的な面白さが活きていて、これは森山・早乙女コンビでなければ成されないものだなあ。阿部サダヲ池田成志の下北沢パートも最高だった。この2人は気負いなく立っているようで、見せるところではズッシリと見せてくるので毎回ため息が出る。

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8月10日、黄金町のシネマジャック&ベティにて越川道夫監督『海辺の生と死』を鑑賞。満島ひかり奄美大島の映画である、以外の感想が浮かばないのが正直なところですが海や光は見事に美しかった。こんな表情が撮れればもうそれだけでいいよな、という表情をバンバンするのでやっぱりすごい満島ひかり。原作を読めばまた印象が変わるのかもしれません。宇波拓による劇中やエンドロールの音楽が神秘的かつ妖しくて好きでした。

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黄金町、伊勢佐木町、関内、野毛を散策する。念願のジャック&ベティで映画を観ることができて上機嫌で歩いた。この周辺にくるのは3度目くらいですが、歩くたびに発見があってとても面白い。昼と夜とではだいぶ印象も変わる。艶のある街で、鶴岡龍の音楽が本当によく似合う。

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当初はバスを使う予定でいたものの、google mapで20分とあったのでKAATまで歩いた。野毛から中華街はなんとなく遠いイメージを抱いていたけれど、全然歩けるな。横浜の町自体はコンパクトだけれど、エリア毎の情報量がすごい。

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KAAT大スタジオにて『ハイバイ、もよおす』を観劇。「RPG演劇のニセモノ」「大衆演劇のニセモノ」「ごっちん娘」の豪華3本立て。RPG演劇は、冒頭の明転の時点でノックアウトだ。田村健太郎の声のトーンとかずっこけ方とか、完璧にアニメですごい。全体的に悪意かと思いきや、岩井さんのソーシャルゲームを通じてピアニスト(『て』の音楽を担当)と知り合った話を聞くとあながちそうでもないのかなと。大衆演劇も楽しかった。黒田大輔、平原テツ、岩瀬亮がもうスター。まぶしい。これの手がかかりまくったホンモノのやつ、この前豊洲で見たなと思ってしまった。「ごっちん娘」は泣きながら笑い、自分が笑ってしまったことに胸が痛くなり、むちゃくちゃ複雑な気持ちになる。でも、後藤剛範の筋肉おもしろすぎてずるい。反射的に笑ってしまう。櫓風のセットやテキ屋風衣装の岩井さん(金ピカのネックレスと時計が完璧)からしてお祭りモードのハイバイでとても楽しかったです。下らなさと世知辛さと切なさが混在していて、ハイバイらしさがより凝縮して感じられたのも良かった。

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8月11日、スタジオコーストにてcero主催の"Traffic"。VJに出てくる顔がめっちゃ怖かったけど格好良さがイカツいDaiki Tsuneta Milennium Parade、ボーカルの浮遊感と骨の太いサウンドがライブでも最高に良かったD.A.N.、ゲストコーラスの角銅真実がキュートだった古川麦トリオwith strings、フロントマンのキャラクターの濃さと演奏の質の高さがえげつなく楽しい藤井洋平&The VERY Sensitive Citizens Of TOKYO、Trafficベイベ全員骨抜き岡村靖幸、オールフリーでご機嫌かと思いきや締めるところは締め上げてくる高城さんが末恐ろしいcero。と、雑な感じですが概ねこんなテンションで今年もずーっと楽しかったですTraffic。「魚の骨 鳥の羽根」「TWNKL」と何度かライブで聞いたことのある曲に加えて、アンコールで公開リハーサルと称して演奏された新曲にも興奮した。最後にメンバーがドラムセットの前に集まり全員でシンバルを叩く前衛的な光景をさらりとやってのける格好良さよ。「魚の骨 鳥の羽根」や滝をテーマにしたこの新曲(タイトル失念)の歌詞を断片的に聞いていると、サウンドと共にかなりエキゾチックで、深く原始的な場所へ進んでいるような印象を受ける。アルバムは来年頭くらいかと推測しておりますが、一体どんなものが出てくるのか、さらにひと捻り予想を覆されそうな予感もあって楽しみで仕方がない。あと、聞いたことのないアレンジで新曲かなと思っていたら「Contemporary Tokyo Cruise」の歌い出しがはじまったときの高揚感とか、「My Lost City」も面白いアレンジになっていて、留まるところを知らないceroの躍進に心底わくわくさせられる。

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7月末から8月にかけて、毎週のように観劇の予定が入っていて充実した日々を送っている。それに加えて最近は周回遅れの青春みたいな日もあって、友だちと夜の10時に王将で炒飯を食べて帰りの電車で胃を痛めたりしている。どうしようもなく楽しいです。夏だからかな。


柴田聡子「後悔」(Official Video )

 

ご自愛ください

映画は好きですか?(私はあなたが好きです)

テレビは好きですか?(私はあなたが好きです)

どんな音楽が好きですか?(私はあなたみたいな人が好きです)

好きな本は何ですか?(私はあなたのことが好きです)

好きな食べ物は何ですか?(私が好きなのはあなたです)

お休みの日は何をしますか?(私はあなたを好きでいます)

 

へえ、そうなんですね(私はいま気が狂っています)

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焦がれる人よ窓のむこうに

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近頃は覚えておきたいことが多すぎて、毎日書いている日記がどんどん長くなる。今日話したこと、楽しかったこと、嬉しかったこと、笑ったこと、後悔したこと、反省したことぜんぶ忘れたくなくて帰りの電車で反芻して寝る前に書いてみるけど、細かいニュアンスはどうしても残せない。それでも、たとえば一年後に読み返してこのときの気持ちを少しでも思い出せれば上出来だ。以前は毎日何かしら書き込んでいたTwitterを使わなくなって久しい。とはいってもタイムラインは毎日読んでいるので使ってはいるのですが。先日の『ゴッドタン』ケンカ&ダンス、最初は意味不明で面白いなと見ていたけれど、ふと「もしかしてこれはLA LA LANDなのか?」と思い至ったときなんかは、すぐさまTwitterに書きたくなる。けれどもそれはやめて日記なりブログに書くようになった。深い意味はないし、スピードが売りのインターネットでは致命的な時差を生んでいるけど、このくらいのテンポと距離感も悪くないかなと思っている。それから、帰り道に前髪みたいな模様のある可愛い猫をみつけて写真を撮ったとき、髪型が似ている人の顔が浮かんだから似てる猫がいたよといますぐ送りたくなったけど、暗くて写りも良くないし流石にリアクションに困るだろうなと思ってやめた。こうして言いたいことを頭の中で考えているうちにだんだんと自分と会話をしている感覚になっていく。これはまさしく、tofubeatsが『BABY』で言い当てた感覚と似ている気がする。結局、私の感情や考えは私だけのものだし、誰かに伝えたいだなんて押しつけがましいにも程がある。でも誰かに聞いてほしい。伝えることは諦めて、誰かに読んでもらえることを期待してそっと置いている。さっきから、誰かって誰だろう。

ずっとさ 自分としゃべってる
気分でいつも暮らしてるから
人はさ 難しいこと言う
どこまで 応えられてるのかな
どこか遠くに行きたいけれど
なぜか行けないのさ


tofubeats / トーフビーツ -「BABY」

 

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6月22日、Bunkamuraザ・ミュージアムにて『ソール・ライター展』を観賞。ファッション誌Harper's BAZAARのための写真の頃からの特徴だった鏡やガラス、障害物越しの構図がどんどんエスカレートしていくの面白かったな。画角からほとんどはみ出している赤い傘は、気付いた時には過ぎ去っていく時間を感じさせる。あっという間に目の前を通り過ぎていく瞬間を捉える、というよりもカメラを向ければ自ずとそこに瞬間が写り込むのだということか。印象に残る風景というのは鮮烈なものばかりではなく、案外ぼんやりとしているかもしれないな、と彼の写真を眺めながら思った。ぼんやりと思い出されるいつかのどこかの瞬間。本来ならば写るはずのないであろうものがいくつも写真に収められていて感動してしまった。

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渋谷から横浜へ移動して中華街の状元郷でルーロー飯を食べた。台湾は憧れの地ではあるのですが、八角の匂いがどうも苦手で食が合わないかもしれないなあと思っていたけれどお店で食べたものは大丈夫だった。あと、エビとたけのこをライスペーパーで包んで揚げた春巻きみたいなのが大変美味しかった。エビはぷりぷり、たけのこはとろとろ、ほんのりと甘い。また食べたいなー

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KAAT大スタジオにてサンプル『ブリッジ』を観劇。劇団としての活動を休止する前の最後の公演とのことで。私は初サンプルでした。とても面白かった。モツ宇宙(コスモ)とか言ってるのでとんちんかんな芝居かと思って臨むと、意外とまともというか、人間の脆い部分をえぐられるお話だった。講演のように客席に語りかける形で進むので、見ているうちにまんまと自分まで参加させられて傍観から内部に入っていきそうになる危うさすらある。スピリチュアルなものに対してこれは本当なの?嘘なの?と判断しそうになる時点でもうダメなんだよな。宗教に限らず、何かから弾かれた人同士が集まっても、またその中で軋轢は生まれるし、誰かが弾かれてしまう無常観。我々はどこへいくのか…とラストでは呆然としてしまった。側からみたらバカみたいだけど、当事者たちは真剣なんだよなというざわざわする気持ちを巻き起こす、過剰や過激には感じないけど超ヤバい演出の数々もとても良かったな。古舘寛治さんは完全にスターだったし、『ひよっこ』の松下さんこと奥田洋平さんも素晴らしくて良い役者さんの揃っている劇団だったのだなー今後の変態活動も楽しみにしております。

 

#losapsontshirtsfair #LosApsonTfair

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6月23日、恵比寿KATAのロスアプソンTシャツフェアにてVIDEOTAPEMUSICの熱海温泉Tシャツを購入。グレーも風合いと文字がぴったりで迷ったのですが、汗が目立ちそうなので白にしました。スコーンと空が抜けるような晴天の日に着て出かけたい。今年の夏は白いTシャツを着こなす女になってみせる…

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ユーロスペースにてエドワード・ヤン監督『台北トーリー』を鑑賞。これを観にきたといっても過言ではない、フジカラーのネオンをバックにしたシーンがやはり出色。静かに進んでいくストーリーや叙情的な映像の中に、死の匂いがいつもどこかに漂っているのが不思議だ。これと『牯嶺街少年殺人事件』しか見たことないけど、私の求めるネオンの灯りと陰影は、すべてエドワード・ヤンの映画の中にあるのではないかとすら思ってしまうな。ホウ・シャオシェン時任三郎萩原聖人鈴木一真のグラデーションなので見ていて飽きない。

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夜は伝承ホールにてザ・プーチンズのワンマンライブ『ぷ道館』へ。正直「ナニコレ」推しにはもう飽きているので迷ったけれど、予想もつかないようなものが見れるんじゃないかという期待があって結局足を運んでしまう。昨年と構成やネタもあまり変わっていなかったけれど、マチコさんがメインボーカルをとった新曲「いきなりテルミン」がとても好きでした。客同士で合コンさせたり客を連れ去って寿司にしたり、よくわからん暗い箱に入れられるよりもずっとエキサイティングでクレイジーで最高に楽しい所業の数々はやはりすごかった。

往復書簡 初恋と不倫

往復書簡 初恋と不倫

 

6月28日、坂元裕二の朗読劇「不帰の初恋、海老名SA」「カラシニコフ不倫海峡」を書籍化した『往復書簡 初恋と不倫』を読んだ。めちゃくちゃ面白かったです。お得意の手紙とメールのやりとりのみで、ドラマティックな展開をみせる筆致に打ちひしがれる。言葉のみで想像させる朗読を生かして突拍子もないドラマを描いていて、エキセントリックな物語にも普遍的な恋物語にも読めるところが素敵だ。映像や演劇ではできない面白さが詰まっている。どちらも女性のキャラクターがどことなく村田沙耶香的なのが新鮮だったな。好きな箇所をあげればキリがないけれど、「カラシニコフ不倫海峡」の別々に同じ場所へ行くデートとか読んでいて手に力が入りました。それから、「不帰の初恋、海老名SA」での『カルテット』8話のすずめちゃんの台詞を思い出させる一節にも胸が熱くなった。

君がいてもいなくても、日常の中でいつも君が好きでした。

電車で読んでいたのですが、変なスイッチが入ってしまったのか人目も憚らずにぼろぼろ泣いてしまった。ぜひとも再演してほしいな〜高橋一生×酒井若菜、三浦誠己×中村優子が見たいっす。

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6月29日、アトリエヘリコプターにて玉田企画『今が、オールタイムベスト』を観劇。冒頭から、玉田真也演じる中学生の屈折していて卑屈な喋り方にぐっと心を掴まれ夢中になって見た。いるいる、あるあるという人物とシーンの連続なんだけれども、それだけで終わらない切なさも描かれていて面白い。こういう思春期の自意識や、人間関係の気まずさを扱ったものは何かと内省的だったり内向きのエネルギーが強い印象だけれども玉田企画は的確に笑いを生んでいて開かれた雰囲気があるなあと思った。でもきちんと胸が痛む。身に覚えがありすぎて古傷をつつかれるけれど、それもなんだかクセになる。役者さんもみな素晴らしくてポップ。宮崎吐夢演じる父親、イケイケっぽいけど口調や仕草の端々に息子との類似を感じさせる部分があってたまらない気持ちになったな。あと、神谷圭介演じるウェディングプランナー川島の悪気のなさ空気の読めなさとか気遣いが下手で裏目に出てしまうのとかがいたたまれなくて、愛おしすぎた。乾杯の前に先にビール飲んじゃう感じとか、わかるわかるわかるわかると首を縦に振って同意したい気持ちになる。

7月1日、映画の日なので近所のシネコンで西谷弘監督『昼顔』を鑑賞。思い返してみると半分くらい手に汗を握って観ていた。サスペンスホラーラブロマンス。北野先生(斎藤工)の講演に行くためにお洒落をしたけれど、鏡を一瞥して普段着に着替える紗和(上戸彩)だけでもうグッときてしまったな。しかも、黒いヒールから履き替えた白いスニーカーで疾走するのだから。彼女を死へ導く黒いヒールを脱がすのはきっと神様ってやつだ。2人が疾走しながらすれ違うシーンのカメラとか凄くて、橋の下からぐるんと視界が回ったときには度肝を抜かれてしまった。乃里子(伊藤歩)情念のカーチェイスも大変にヤバい。私はこういうお話も好きな方ですが、それを抜きにしても映像と音だけで魅せていく力に溢れていたな。蛍の幼虫を探すだけのデートとか、バスの窓に待ち合わせの日時を書くシーンとかちょっと堪らないものがありました。繊細な反復を繰り返しながら辿り着く上戸彩のラストシーンも凄まじい。予告で電車の窓越しに見つめ合うシーンを観たときになんとなくドラマ『高校教師』(1993)を連想したのですが、シチュエーションやシークエンスは違えど2人の心が通う空気の描かれ方が似ていてそりゃあ大好きだわと思いました。立場だけ見ればインモラルだけど、その実はとても幼くて純粋な愛、というのに弱すぎる。というか、インモラルなんてのは理屈抜きの純粋な愛を描くための要素に過ぎないなと改めて思う。とても面白かったし、とても好きな映画です。

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気付いたら7月のお出ましだ。7月というと、1年の半分であり夏のはじめの月で特別なような気がするけれど、梅雨がぐずぐずと居座ったままいつもはっきりしない印象のはじまりだ。ことしも半分が経過して、私はいまのアルバイトをはじめて3ヶ月になる。右と左どころか前も後ろも分らなかった4月が遠い遠い昔のように感じる。まだまだ出来ないことだらけだけれど、前日の夜も当日の朝も仕事へ行くのがまったく苦痛じゃない嬉しさを噛み締め続けています。これが永遠ならいいのに。ずっとこのままがいいよ。さて、7月といえばあの季節です。今年もテレビ東京午後のロードショー、サメ特集の季節がやって参りました。最新作の放送へ向けて『シャークネード』シリーズに絞った潔いラインナップ。こうなるとなぜ1から4週じゃなくて、2、3、最新作、ジョーズ4なんだと思ってしまうわけですが、それもご愛嬌ですね。でもやっぱり1作目の衝撃は忘れられないな。夏休みになんとなく見ていた午後ローで味わう衝撃として、これ以上のものはない。シャークネードあるし、今年の夏も絶対たのしいに違いないって思います。

いとおしき

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毎日暑い暑いと過ごしてきたら、こんどは梅雨が待ち構えている。湿気の多い日の汗は、身体中に水の膜が張るようで歩いていると溺れていくような心地悪さがある。バイト先に着く頃には顔もべたべたで、汗のにおいも取りきれないような気がしてそわそわしてしまう。肌も髪も、常にお風呂上がりの綺麗な状態でいれたらいいのにと思うたびに、その綺麗な状態を見せられる親密な関係が羨ましくなる。わたしはその親密さに辿りつくことなんてこの先あるのだろうか、と気が遠くなりながら今日も汗をかく。銭湯とか、サウナとか行けばいいのかも。

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6月1日、シアターウエストにて吉田大八作・演出『クヒオ大佐の妻』を観劇。宮沢りえ岩井秀人、川面千晶、水澤紳吾という座組に観る前からかなりわくわくしていて、実際にとても良かった。地に足を着けつつ、徐々に噛み合わなくなる歯がゆさ。きちんと大きめの笑いが起こる間合いに岩井さんの凄さを感じる。宮沢りえ演じる大佐の妻の台詞回しの過剰さや歪さは、この芝居の描かれ方そのもののようでもあり、これは良いのか?良くないのか?どうなんだ。わからない。さも共通認識のように語られる米国に対するコンプレックスや、最後の仰々しい演出はめちゃくちゃ気持ち悪いなーという印象なのですが、その過剰さを誇大妄想とも笑えない居心地の悪さがあった。

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タカセグリルでオムライスを食べた。池袋駅前が一望できるナイスロケーション。17時という夕食にはまだ早い時間だったので客は私ともう一組だけで、とても居心地が良かった。池袋はタカセ、伯爵、MilkyWayとよい喫茶店が色々あるのでいつもどこへ行くか迷ってしまうのですが、次はカフェ・ド・巴里へ行きたい。

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夜は赤坂RED/THEATERにてシベリア少女鉄道vol.28『たとえば君がそれを愛と呼べば、僕はまたひとつ罪を犯す。』を観劇。面白かった!バカだなあ。あのさも物語然としたシーンが、ぶっ壊すためだけに積み上げられたのかと思うと感動すら覚える。壊しつつまた作るというとんでもない技が繰り広げられていて興奮しきりの後半でした。シベリア少女鉄道の名前はよく聞くものの観たことがなくて、今回はいつ高シリーズ(ロロ)の楽こと大石将弘さんが出ているので足を運んだのですが、観に来て良かった。このきっかけを待っていた!

ナカゴー、木ノ下歌舞伎、イキウメと評判を聞いてから気になりだしてももう観に行ける日がないということが続いてアンテナを張り直さなければというお気持ちもあって今回はじめてみる劇団に挑戦してみたのですが、こうも面白いともっと色んなところを観に行こうという気持ちになれて良いな。

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高校生までは辛うじて体育の授業があったのでまだ大丈夫だったのですが、卒業以来まったく運動をしなくなり、好きなように間食をしていたらじわりじわりと体重が増え続け、もう無視できないレベルに達してしまった。今年に入ってから3回ほど電車で席を譲られそうになることがあり、みるからに体調が悪いわけでもないのになぜだろうと思っていたのですが、これは、おそらく、つまり、私が長年かけて蓄えた脂肪と贅肉が、新しい生命に見えているようなのです。それしか考えられない。これはまずい。残酷だけど、君とはお別れだ。

と、いうわけで意を決して駅前のジムに体験へ行った。色々と詳しく案内されるのかと思いきや基本的にご自由にどうぞというスタイルで、結構気が楽だ。とはいえまったくの素人なのでマシンの使い方を教えてもらいながらなんとなーく運動してみるとなかなか良いかもしれない。自由に参加できるスタジオではちょうどボクシングの動きを取り入れたレッスンがはじまるところで、茶髪・ムキムキ・ピタピタのタンクトップのインストラクターに対する恐怖と好奇心におされて参加。平日の昼間なので周りは年配の方が多くて、ダンスミュージックがガンガンにかかるなか冷静になると私は何をトチ狂ったことを…と頭を抱えそうになったけれど確かに良い運動になる。例えばこれが体育の授業だったらやらされているというスタンスでヘラヘラしていればやり過ごせるんだけれども、自ら望んでこの場にいるのに振り切れないという一番格好の悪い状況に陥ってしまった。恥、かき捨てていこうな。30分間テンションと利用者へのホスピタリティを保つインストラクター、素直にすごいと思う。でも次はヨガにします……。自意識にダメージを与えてしまったので今日はこのあたりにして、軽くお風呂とサウナに入って終えました。

運動ならお金を払わなくてもできるのでは?とも思うけれど、わたしのような怠惰な人間にそれは無理だし、そう思い続けた結果がこの体たらく。決して安くはないお金を出せば、もとをとらねばと頑張れる気がする。他にもいくつか見にいって来月に決めよう。帰りに自転車に乗っていたら、駅の近くでオレンジの外壁にジャイアンツのロゴマークを施したクールな民家を発見してなんだか得した気分になりました。

 

そこで「目抜き通り」の歌詞を読み直していただきたい。あれ、実は“カルテット~その後~”という体で書いたんです。

という椎名林檎のインタビューでの発言を受けて、

デートの夢は永い眠りで観ようか

と歌う『目抜き通り』を聴いていたら『カルテット』の8話が観たくなって、見返してたまらない気持ちになって号泣してしまった。真っ白なお洋服に真っ赤な靴をはいたすずめちゃんの姿だけで涙が出るほど可愛い。ドラマが終わって少し経ったけれど、観るたびに好きになる。あと、私いま好きな人がいるんですけど、別に付き合いたいとかそういうわけじゃなくてただ好きという状態で、自分の気持ちに対する答えもすずめちゃんの台詞にぜんぶあった。 

好きだってこと忘れるくらいいつも好きです

いつか好きってことだけ伝えたいかもしれないけれど、きっと私は「冗談です」って言うと思う。最初から物語に移入や共感を求めることはしないけれど、ふと自分自身に接続する瞬間や探していた言葉に出会うことがある。ずっと頭のまわりをふわふわしていた感情がこんなにも鮮やかにドラマに書き起こされていて、坂元裕二先生への心酔がまた改めて深まってしまう。是枝裕和とのトークショー、めちゃめちゃ行きたいけれどその日はアルバイトなんだよな。

 

不慮の事故で死ぬならいまがいい、というくらいに気分が沈む。思い浮かべるだけで幸せになれるテレビや音楽、楽しみで仕方のない舞台やライブに対する感情が希薄になってしまうことがひと月に一度ほどあって、そういうときにはこんなことばかり考える。いつもなら流してしまえる些細な失敗に支配されたり。もし突然死ぬなら幸せな状態で、とも思うけれどそれでは未練が残りそうではないか。気分も沈んで人生がどうでもいいときに事故にあったりしたら、案外ラッキーと思えるんじゃないか。こんな気分なので、折角のお休みを1日ごろごろして潰してしまった。けれど、やっぱり、そんなときでも美しいものは美しい。可愛いものは可愛い。愛おしいものは愛おしい。


MONDO GROSSO / ラビリンス

 


スチャダラパーとEGO-WRAPPIN' "ミクロボーイとマクロガール"(Official Music Video)