いくつかの台風が近くをかすめながら通り過ぎていくうちにするすると夏が終わり、もう秋になったのかしらというお日柄。9月末には思い出したかのようにぶり返す初夏の陽気。半袖という気分でもないけれど湿気もあるので何を着たら良いのかわからないなあと例年通り思いながらお気に入りのジャージを羽織って過ごしております。「去年は何を着ていたっけ」と思いながら服装に迷うのが季節の変わり目というもの。次の夏の始まりが来ても「去年は何を着ていたっけ」とおんなじことを忘れる準備はもう出来ている。
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15日木曜日。『新世紀エヴァンゲリオン』全26話を見終える。劇中のアナウンスや環境音、例のサントラ(デーンデーンデーンデンドンドンってやつ)、ヤシマ作戦にシン・ゴジラだ~!といちいち興奮する逆転現象を起こしながら観た。2015年の話なんだな。「11才でドストエフスキー 15才でエヴァンゲリオン」は相当最悪なコースであることを感じ入りながら「普通の恋」(菊地成孔 feat.岩澤瞳)を聴けるようになりました。
17日土曜日。 第9回したまちコメディ映画祭in台東で『ぼくのおじさん』を観る。おじさん(松田龍平)、最高です。ストーリーテラーでもある雪男(大西利空)のおじさんを見る眼差しや「~かい?」という小学生らしからぬ言い回しも素晴らしい。おじさんというキャラクターのおかしさだけに依拠するのではなく、小学生たちの会話のちょっとしたおかしさ(文脈は省きますが、雪男の同級生の女の子が「渡瀬恒彦みたいで格好良いよね」と言うシーンが好きです)、おじさんを完全に小馬鹿にしている雪男の妹、普通の両親(寺島しのぶがちょっとカリカリしている普通の母親を演じていて新鮮/チョビ髭の威厳ある父(宮藤官九郎)も普通の父親なのだけど、どこかおじさんの兄であるという説得力があって宮藤さんがキャスティングされた理由がわかる気がする)・・・周囲との関わりで引き起こる可笑しみが丁寧かつ冷静に描かれている。そして、こまごまとした描写が連なる普段の町からハワイへと広がっていくのも「映画的」で心地の良い画面の連続。大ヒット!しそうな派手なタイプでは無いけれど、コンスタントに続編が作られる映画になったら良いな。何度でもおじさんと雪男に会いたくなる。
松田龍平さん演じる“おじさん”の人形が完成しました!これから宣伝で大いに活躍してもらいます!色んな場所に登場するのでお楽しみに!#ぼくのおじさん #松田龍平 pic.twitter.com/CVAXh8Pl6Y
— 映画『ぼくのおじさん』公式 (@bokuno_ojisan_) 2016年9月16日
劇中に登場する大橋裕之画のおじさん、舞台挨拶で大西利空くんがアロハシャツに人形をつけていてとっても可愛かった。大橋さんの作風と松田龍平、ぴったりですね。是非ともグッズとして発売よろしくお願いしたい。おじさんと雪男のアロハも欲しいけど公開11月だとアロハは無いかあ。
18日日曜日。今日もしたコメで『大江戸りびんぐでっど』。前日の『ぼくのおじさん』にも出演していたので実質宮藤官九郎2daysであーる。最後の戸板のシーンすごいな。宮藤さんも修正不可能のテンションで死神を演じる中村獅童、最高の最高でした。
アンヂェラスでフルーツポンチ。
京急の特快に乗ったら新幹線のような前向きのシートでわくわくする。「え?蒲田に?」の蒲田も通過するし。そういえば、デイリーポータルZで見たやつだ。たまに乗ると少し旅行気分になるけれど、日頃使うとなると窓際に座ったら下車するときに気を遣いそうだし立っているスペースも少ないしちょっと不便そうだな。
横浜で下車して西口方面を彷徨っていたらソープランド富士の立派な建物に遭遇する。なんとなくカメラを向けにくくて写真は撮れなかったのですが、ロゴといい飾り窓といい素晴らしかったな。なによりでかい。閑散としたオフィスビルや飲食店の中に突如表れるのでびっくりしてしまった。
黄金町を散策。横浜橋商店街では神輿が出ていた。祭りの賑わいというよりは粛々と神輿が進んでいる不思議な雰囲気の、本当に商店街だけのお祭りで、知らないところに迷い込んでしまったかのようだった。あの場で地元の人間じゃないのはおそらく私くらいだったのでは無いだろうか。黄金町の川沿いから商店街への道のりには素敵な映画館ジャック&ベティ(ここで映画を観てみたい)。それから、もともとは「ちょんの間」であったことが関係しているのか住宅街のすぐ隣には風俗店や案内所がひしめきあっていた。風俗店やラブホテルのネオンと建物ってどうしてあんなに魅力的なのかしら。いつもは新宿や渋谷の繁華街でしか見る事がないので、生活圏にあるというのはどんな感じなんだろうと思った。ギラギラしているし浮かれたネーミングも子供心をくすぐるだろうけれどきっと当たり前の風景で、小学5、6年生くらいでどういうお店か知るのだろうか。もっと早いのかな。この辺りのお店で働く女性は結構遠くから来てるのかなあ。そうじゃないと、お客さんも近くの人なら知り合いに遭遇しまくりそう。
試聴室その2にて『出張シングル・マン 〜もう秋なのさ〜』。主催のHi,how are you?原田晃行のライブからスタート。らんま1/2のTシャツにオレンジの短パンで、「なーんにもしたくない」と歌う姿はさながら夏休みの少年。色んなちょっとしたこととか気持ちが的確な言葉とメロディで歌われていて素敵だった。
VIDEOTAPEMUSICは真美鳥のカバー「骸骨の花嫁」「Sultry Night Slow」「Her favorite song」などをソロでしっとりと演奏。「Speak low」冒頭の音声は藤田敏八の映画『スローなブギにしてくれ』からのサンプリングで、劇中で浅野温子が住む黄金町の高架下のアパートの部屋で流れるニュースの音声だそうです。「黄金町のアパートのシーンのある映画が映画館で上映されて、VHSになって、レンタルショップに並んで、それを買って、サンプリングして、その曲を黄金町の高架下で演奏する、ということが面白い」というようなことを話されていて印象的でした。建物が建ったり全く違う風景になったとしても、その場所で起きたことは「場所」「土地」がある限り永遠に残るというのを昔文学の授業で聞いたのですが、それとは別にその場で記録された「映像」や「音」が時間を飛び越えて違うかたちで残り続け戻ってくる、というのも実にロマンチック。というか、営為とも結びついているようで、上手く言えないんですが、VIDEOTAPEMUSICの音楽と映像の魅力がこういうところに詰まっているなと思いました。
ランタンパレードはいつも挨拶以外喋らずに訥々と歌っていて格好良い。本人の佇まいや声質からか、歌っているのに変な表現ですけど、「黙々と」という言葉が似合うなといつも思う。そうは言っても素っ気ない感じでは無くて、ギター一本だとより声と詞がするすると入ってくる。「魔法がとけたあと」の「生きることに飽きないために 眠りについてるみたい」という歌詞が何度聞いても好きだ。
最後は原田晃行、VIDEOTAPEMUSIC、ランタンパレードの3人で一風堂「すみれSeptember Love」をカバー。狭いステージに3人並んで、サビで声を合わせる姿がなんだか可愛かった。とても良いライブだったな。
21日水曜日。ユジク阿佐ヶ谷にてヤン・シュヴァンクマイエル『闇・光・闇』『対話の可能性』、ヴェラ・ヒティロヴァ『ひなぎく』の同時上映を観る。『対話の可能性』、面白すぎて興奮する。『ひなぎく』は50年経っても色褪せるどころかメイクもファッションもアートワークも今なお鮮烈。二人が「悪いこと」をする姿は今の時代においての方が切実かもしれない。
WWW Xにて『REAL IS BACK』。夏フェスの類には行かなかったのでグループ魂のライブを見るのは去年の野音以来だ。「さかなクン」で石鹸がトチって以降、石鹸を見ながらタイミングを合わせて歌う破壊がニヤニヤしてて最高でした。アンコールでのTH eROCKERSとの「非常線をぶち破れ」「セルナンバー8」素晴らしく格好良かった。
24日土曜日。片想い『QUIERO V.I.P.』レコ発ワンマンライブ。「Party Kills Me(パーティーに殺される!)」PVのパペットの登場や、紙吹雪、アンコールでのおっさんコーラス隊(めちゃかわいい)の登場などなどの演出と演奏のバランスが良い塩梅。本当に素晴らしいライブだったな。