ニュースクラップタウン

私事で恐縮です。

平成29年年間報告

f:id:Vanity73:20171231113010j:image今年は就職が決まらないまま大学を卒業してフルタイムのアルバイトを始め、そこで知り合った人に一目惚れをした。大きく環境が変わり、俯瞰で見れば「節目」と呼ぶにふさわしい一年だ。フルタイムとはいえ非正規雇用、今後の身の振り方を考えるための猶予のつもりだったのが恋に身悶えているうちにあっという間に一年が終わろうとしている。もともと目指していた職種だったこともあり仕事内容も職場も好きなので、契約が更新できる限り続けようと思ってはいるけれど、このままで良いのだろうかという不安は常につきまとう。生活リズムも変わり、以前のようにバラエティ番組やラジオをチェックするのが難しくなってしまったこと、それらを心の支えのように思っていたけれどないならないであまり気にならないことに寂しさを覚えたりしている。しかしそれよりも今は恋である。錯乱しているのでこの記事に「恋」という項目を作ろうとして流石に止めたものの、今年のメイントピックであることに間違いはない。何を観ても何を聴いても何を読んでも意識の一部にはいつも好きな人がいて困ってしまった。まさか自分がこんなことを思う日が来るなんて思ってもみなかったけれど、恋、めちゃくちゃエンタメ。そんな酔狂な状態の私を夢中にさせた素晴らしい作品の数々で1年を振り返ります。

 

舞台

f:id:Vanity73:20171213205617j:imageジエン社、サンプル、玉田企画、シベリア少女鉄道、ナカゴー、ままごと、贅沢貧乏、東葛スポーツなど、名前は聞くけれど見たことのない劇団の作品を積極的に見に行った。中でも突出して印象に残っているのはナカゴーの鎌田順也が女優の川上友里、墨井鯨子とやっている「ほりぶん」。初演の評判を受けて見に行った『得て』が衝撃的に面白く、女たちが身体を酷使する阿鼻叫喚の最新作『牛久沼』も凄かった。すっかり大好きな劇団となったロロは3月にいつ高シリーズ一挙上演、9月に新作『BGM』、11月に『父母姉僕弟君』再演と充実していて、目覚ましい躍進ぶりにとにかく夢中だ。三浦さんの筆致がよりポップに洗練されていくのに呼応するように、俳優たちも見るたびに素晴らしい。他には岩井秀人前野健太森山未來によるコドモ発射プロジェクト『なむはむだはむ』やアブシャロム・ポラック&インバル・ピントの百鬼オペラ『羅生門』、城山羊の会『相談者たち』などが好きだった。すでに完成されたものというよりも、実験の過程を見せながら構築されていく作品の面白さが印象に残っている。

 

ドラマ

おとなの掟

今年は坂元裕二『カルテット』、岡田惠和ひよっこ』、宮藤官九郎監獄のお姫さま』とリレーのように好きな脚本家のドラマが続いてとても充実していた。中でも『カルテット』はあまりにも特別な作品で何度も見返していて、いまだに新鮮であると同時にずっと共にあったような気もする既に私のオールタイムベストだ。来年1月から始まる広瀬すず主演の『anone』、田中裕子に加えて小林聡美阿部サダヲ瑛太火野正平という最高が約束されたようなキャストでいやおうなしに期待が高まる。阿部さんはちょっと意外だったけれど、そういえば宮藤さん脚本の水田伸生の映画に出ているから納得でもある。『ひよっこ』は『あまちゃん』ぶりにハマった朝ドラで、登場人物もエピソードもひとつ残らず愛おしいというのもやはりあまちゃん以来の感触だった。市井の人々の小さな物語をお喋りで転がしていく持久力に舌を巻いた。岡田惠和は作品毎にも、作品の話の中でも少しムラのある作家という印象があるけれど、ひよっこは中だるみすら逆手にとって仕上げてきていて完璧だったな。毎日15分の楽しみがあるというだけで日々のモチベーションがまるで違うので、朝ドラはなるべく面白くあって欲しい。次は坂元裕二古沢良太にお願いしたい。『監獄のお姫さま』は毎週楽しみに観ていたけれど熱中できる程ではなく、佳作という印象が残った。どこか上滑りしている演出のチープさが気になってしまったのが大きい。それでもおばさんたちのこと大好きだし、塚本高史がずばりクドカンの男の子像のままで嬉しかった。それから、三浦直之(ロロ)が脚本、松本壮史(EMC)が監督を担当した回がとにかく瑞々しい『デリバリーお姉さん』も忘れてはならない。ロロの魅力がそのままにテレビドラマというフォーマットで発揮されていて素晴らしかった。

 

映画

お嬢さん(字幕版)

パク・チャヌク監督『お嬢さん』が圧倒的に好きで、 3月の時点で今年のマイベストワンどころか生涯ベスト級が決まってしまった。策略と裏切りの連続でどう転がっていくのかわからないミステリとしての面白さと、スッキと秀子が強く結ばれていくラブロマンスとしての面白さ。容赦ない官能とバイオレンスの映像美。中盤くらいからこれはやばい、大好きだ、やばいと思いながら観ていて、未だにその感覚が残っているくらい好きです。あまり観にいけていないけれど、ほかに映画館で観たものだと西谷弘監督『昼顔』、エドガー・ライト監督『ベイビードライバー』が好き。

At the terrace テラスにて

公開は昨年だけれども今年DVDで観た山内ケンジ監督『At the terrace』が面白すぎてそわそわした。覗き見てしまった他人の秘密を誰かに話したくて仕方ないような気分。石橋けい演じる添島夫人が明らかにおかしい人物として置かれつつ、各々の変態ぶりが炙り出されていく過程にニヤニヤが止まらない。帰りたいのになかなか帰れない人と、見るからに帰った方が良いのに帰ろうとしない人。ワンシチュエーションで空間の出入りを巧みに操るお得意の手法が映画でも面白く見れる。出演者も当然のごとく全員良い。ああ、面白い。同じく山内監督の『友だちのパパが好き』も見返したのだけれど、これまたおかしくて前に見たときより好きになった。どうやら私は山内ケンジの作品がめちゃくちゃ好みらしいと自覚する。

 

音楽

ON THE AIR

今年も相変わらずVIDEOTAPEMUSICばかり聴いていた。なんといっても10月にリリースされた『ON THE AIR』の空気や湿度のような目に見えないものを漂わせたムードは唯一無二、まだ霧のかかっている新しい世界へ進んでいくようで本当に目が離せない。今回のアルバムはサンプリングに加えてフィールドレコーディングも取り入れられていて、耳を凝らさないと聞こえない音や、それとは反対になんとなく流していてふと耳に入ってくる音が無数に混ざり合っているのでいつまでも聞いていられる。東京キネマ倶楽部でのワンマンライブに行けなかったのは本当に心残りだけれど、11月のモーションブルー横浜でのライブも素晴らしくてうっとりとした。

めたもるシティ

菊地成孔がプロデュースや作詞、ヴォーカルで参加しているけもの『めたもるシティ』もとてもよく聴いた。キッチュなサウンドや菊地成孔とのデュエットはSPANK HAPPYを彷彿とさせるのだけれどあの窒息するような甘さとはまた違っていて、青羊さんの音や言葉のひとつひとつが沢山の光を反射してつやつやに輝いているような感触がある。

ほかには柴田聡子や東郷清丸などもよく聴いた。なんとなく並べたくなるジャケット。

愛の休日

2兆円

 

 美術

大学では西洋美術史のゼミに所属していたこともあってこれまでは絵画をよく見に行っていたのだけれど、じっくりと見る体力と集中力がなかなか湧かず、インスタレーションや写真などの現代アートばかりをかじるようにちらほらと見に行っていた。 黄金町バサールとヨコハマトリエンナーレで横浜の街を歩き回ったのが楽しかったな。黄金町バザールは平日だと人がほとんどいなくて本当に入っていいのだろうか、という雰囲気だったのだけれども、おそるおそる覗き込む感じが黄金町の街のムードと同調していた。

f:id:Vanity73:20171231193903j:image

ヨコハマトリエンナーレ赤レンガ会場で見た宇治野宗輝の「プライウッド新地」。

f:id:Vanity73:20171231193541j:image

東京都庭園美術館「装飾は流転する」での山縣良和。

 

他にも色々とあった気がするのだけれど、駆け足で薄味な振り返りになってしまった。来年はもっとこまめに書き記しておこうと思う。来年はどんな面白いものが見られるだろう。沢山のものに出会いたい。