ニュースクラップタウン

私事で恐縮です。

脆弱な愛

f:id:Vanity73:20190916182023j:image4月から着実に体重と貯金が減っている。ホットヨガに通い始めて5か月で10kg痩せた。医療脱毛に通い始めた。薄給2か月分の施術料を一括で払ってから財布の紐が全開になってしまって、財布や眼鏡を新調したり、欲しいと思った服やアクセサリーを迷わずに買ったりしていたら、当たり前だが一銭も貯金が増えない。身の回りのものが新しくなると嬉しいのだけれど、流石に焦ってきたのでそろそろ貯蓄モードに切り替えようと思う。ホットヨガにしても脱毛にしても、決して安くはないけれどお金と時間でコンプレックスが解消されていくことにとても救われている。どんなに気分が沈んでいても、鏡を見ればそこには数か月前と比べると確実に細くなった身体があって、あと3回ほどでムダ毛を気にしたり処理に時間をかける必要もなくなるのだと思うと、生きていこうと思える。そう思う反面で、こんなにも容姿を気にしてしまう自分が情けなくもある。誰が、何が、体型やムダ毛を気にさせるんだろう。ぜんぶ自分のためだと思っていることだし、私自身がこれを他の誰かに求めることはないのだろうけど、痩せていることや肌がすべすべなことを是とする価値観って本当に正しいんだろうか。どうして私はこれを是としているんだろうか。電車の広告を見ると気が滅入る。でも、台風のあとの満員電車の中で目の前にあった江原道の広告の満島ひかりは心から美しかった。BEAUTYはこれからだ。

f:id:Vanity73:20190916182040j:image8月31日、東京都美術館で伊庭靖子展『まなざしのあわい』をみる。布やシーツ、ガラスの質感は肉眼で見ているとあっという間にどこかへ消えていってしまいそうな儚さがあって好きなのだけれど、絵に写し取られてもなおその儚さが湛えられていてとてもよかった。絵としてたしかに目の前にあるのに、とらえどころがなく今にも消えていってしまいそうで、いつまでも眺めていられる。アクリルボックスを用いた新しい作品群が全部持って帰りたいくらい好き。美術館を出ると上野公園ではタイフェスをやっていて、大音量で流れるタイ語の「恋するフォーチュンクッキー」が私的VIDEOTAPEMUSICオープニングアクトという感じで最高の趣があった。ここで何か食べようかとも思ったけれど、ぐっとこらえて鶯谷まで歩く。お目当てのDENは人が並んでいたので諦めて、やっぱり屋台で食べるべきだっただろうか、と思いながら適当なカレー屋さんに入ったら、夕方の中途半端な時間だったせいか店員さんがお店のソファで寝転がっているところで、今日いちにちの自分のムードにあっていてよかった。もちもちの皮でサラダを包んだ料理が想像以上に美味しかった。

f:id:Vanity73:20190916182423j:imageカレー屋さんの数件隣り、東京キネマ倶楽部にて『The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC』へ。この夏ずっと聞いていたアルバムも素晴らしく、上がりに上がった期待値を上回る最高の夜だった。横山剣が登場したときの高揚感とか、折坂悠太の歌う「Hong Kong Night View」とかどの瞬間も素晴らしくて枚挙に暇がない。これまではピアニカがメロディの大半を担っていたのが、ボーカルを迎えることでピアニカで表現されるムードの幅が広くなったように感じられて、とても良かった。トランペット、サックス、フルートを迎えた豪華な編成もキネマ倶楽部のムードと相まって本当に美しい夜だった。VIDEOさんが、MCで「CDを出すときもライブをするときもいつも不安だ(からこんなに人が集まって盛り上がってよかった)。」という旨の発言をしていて、だからこの人の作る音楽と映像は美しいんだな、と改めて思う。日常の風景も、特別な夜も、いずれ忘れられていく景色がすべて等しく、美しく、何度も繰り返される。その掬い上げ方の繊細さが、不安な夜にも私たちをうっとりとさせてくれるのだと思う。

最近読んだ橋本倫史『ドライブイン探訪』がとても面白くて好きなのだけれど、対象へのまなざしや作ること/書くことへの姿勢が橋本さんとVIDEOさんは通ずるものがあるなあと読んでいる間考えていた。あとがきの中で、橋本さんは「僕は媒体となり、それを書き留めるだけだ。」と書いていて、その身の置き方や対象との距離感が心地よい。VIDEOさんの音楽にも彼自身の我みたいなものは感じないのだけど、その掬い取り方には個性があって、両者のそういうところが好きだなと思った。

ドライブイン探訪 (単行本)

ドライブイン探訪 (単行本)

 

f:id:Vanity73:20190916182117j:image9月5日、渋谷シネクイントでルイス・オルテガ『永遠に僕のもの』をみる。映像の彩度やロレンソ・フェロ演じるカルリートスの天使的な美しさだけでも楽しめてしまうのだけれど、物語や筆運びはどこか散漫なような印象だった。犯罪を重ねる過程や、カルリートスのラモンへの眼差し、両親との関係など、すべてが半端なように感じてしまったけれど、カルリートスをただ破滅的な人物として描くのではなくて、ふとした視線や仕草に行動原理や整理できない感情が宿っていて、それはいいなと思った。映画を観たあと、MANDYS CUBE STEAKでステーキを食べて名曲喫茶ライオンへ。ライオン、久しぶりに来たけれどこんな空間が東京に存在していることに感動する。今日は2階席に座ってみた。シャンデリアとスピーカーの上に鎮座するライオンの顔が近くで見れる。時折ぼんやりしながら、斉藤倫『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』を読んだ。

しみじみと良い。こんな詩があるのだから、この先何があっても生きていけるという感覚が優しかった。渋谷ヒカリエでイヤリングを物色する。髪を短くしてからイヤリングが欲しいのだけれど、ハンドメイドを中心におびただしい数が並んでいて、この中からいちばん好きなもの、欲しいものを選びとれる気が到底しなくて気が遠くなった。ここ最近、こういう商業ビルでたくさんのアクセサリーやコスメを見ているとすごく癒される。その中から実際に買うものは少ないのだけど、あれが欲しいとかこういうメイクがしたいとか、そういうことの積み重ねでなんとか毎日やっている感じ。

f:id:Vanity73:20190916182159j:image思わずウィンドウショッピングに夢中になっていたら到着がギリギリになって焦ったけれど、伝承ホールにてカネコアヤノ単独公演『燦々』へ。新しいアルバム『燦々』の曲をMCなしでひたすら歌い上げる姿がこうごうしかった。細かい光が飛び散ったような照明の中、ところどころ箔のおされた白いワンピースで歌う彼女の姿は光そのもののよう。美しいライブだった。

f:id:Vanity73:20190916182248j:image9月13日、オペラシティで『ジュリアン・オピー展』をみる。私もシルエットになりたい。風景画が美しかった。fuzkueで雑誌を眺めつつぼうっとして過ごす。ゴルゴンゾーラとはちみつのトースト美味しいし、ふかふかの椅子もあるし。代々木の住宅街を散歩しながら新宿へ。随分と涼しくなって歩きやすくなったのが嬉しい。埼京線で大崎へ向かって、アトリエヘリコプターにて五反田団『五反田怪団2019』をみる。初五反田怪団。語りを聞くときと、演劇をみるときは違う集中力を要すると思うのだけど、語りも演技も巧みで面白かった。思い返すときに、語りを聞いている時に自分で想像した風景と、演劇としてみた風景の両方が思い出されて、不思議な感じがする。ちゃんと怖いんだけどところどころ混ざってくる違和感と思い切りとぼけてる演出も絶妙で楽しい。あと、『クレイジージャーニー』でみてから吉田悠軌さんのルックスや佇まいのファンなので大活躍で嬉しかった。前田さんが話を聞くときの、組んだ足の隙間から腕を通した姿勢がいかにも前田さんっぽい無頼な感じがしてよかった。