ニュースクラップタウン

私事で恐縮です。

窓際

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 緊急事態宣言下の日記を集めた『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』と『コロナ禍日記』を読んだ。前者は職業、後者は居住地の多様さがそれぞれの特徴になっていて、もともと人の日記を読むのが好きなのでどちらも面白かった。前者は名の知られた人以外にもスーパーの店員や介護職、専業主婦など、市井の人々の日記も多く収録されていて、こういった人たちの文章を本の形で読めるのが嬉しい。後者に収録されているベルリン在住の香山哲さんの日記には、アジア人に対する差別的な空気も書かれている。インターネットやテレビで扱われるよりも、本で読む方がずっと真に迫って感じられるのはどうしてだろう。こういうとき、自分は紙に書かれた情報を信用しているのだなと思う。家族の生活、仕事、政府の対応、世界情勢などその人の置かれている立場によって異なる関心のウェイトやスタンスが文章に表れている中で、ほとんど全員に共通しているのが「食」に関する話題なのも興味深かった。そして、4/12にアップされたあの動画について半数以上の人が呆れと怒りを記録している。特に王谷晶さんのブチギレっぷりが気持ちいい。これらの日記が書かれた5月から約4か月が経った現在、検査数が増えているとはいえ当時は55人という感染者数に震えていたことが遠い過去のように感じる。

f:id:Vanity73:20200912170237j:plain9月に入って演劇を2本観に行った。ロロ いつ高Vol.8『心置きなく屋上へ』は、見知った登場人物たちを見てほっとした気持ちに。三浦さんの作る演劇にはいつも客席の想像力を信頼した魔法がたくさん込められていると思っているのだけど、今回は屋上の魔法陣で本当に「魔法(望む力)」が目の前で展開される。屋上から遠くに向けられたまなざしの先に、間違いなくあの子がいるのだと思えるのも演劇の魔法のひとつで、これは劇場という空間でなければ味わえないものだ。ケムリ研究室『ベイジルタウンの女神』は、あらかじめ幸福が約束されたような座組で、久しぶりにどっぷりと物語に浸かる体験ができた。菅原永二さんがKERA作品初出演なのは意外だったけれど、どこにいてもあの異物感が光っていて最高だったな。

自分が行った回はどちらも客席が半数だったけれども、9月末から徐々に100%収容可能に変更された。来月、再来月にチケットを取っているものは諦めるには惜しいので行くけれど、これから新しく予定を増やすことはしないかもしれないなと思う。通勤電車では普通に隣に人がいる状態で座ってしまうし、日頃から徹底して人と距離を取れているかというと出来ていないので、満員の客席に座ることと何が違うの?と思ってしまうが、リスクを冒してまで娯楽に興じている、という意識があるのだろう。もちろん劇団や会場の対策は徹底されているものの、観劇という趣味に対する自分の中での折り合いの付け方が難しい。観ている間はすべてを忘れて楽しめるからなおさら。

f:id:Vanity73:20200821141704j:plainテレビ画面でNetflixが観れるようになったこともあり休みの日はだいたいテレビの前にいる。話題になっていた韓国ドラマ『愛の不時着』と『梨泰院クラス』にもまんまとはまった。特に『愛の不時着』はリ・ジョンヒョクにメロメロという感じで、かなり久しぶりに夢中になってドラマを観た。キャラクターの魅力、脚本の技巧、映像のスケールとなにもかもが揃っていて恐れ入る。韓国文学も面白くて、チョン・セラン『フィフティ・ピープル』を皮切りに、ハン・ガン『回復する人間』、チェ・ウニョン『わたしに無害なひと』、キム・エラン『外は夏』などどれを読んでも面白い。短編集が多いのだけれど、個人的なスケールの物語にも社会的な問題や事件が自然に織り込まれていて、とっかかりが沢山あるのも良い。

f:id:Vanity73:20200821141508j:plain仕事は社会情勢とは無関係に退屈で如何ともしがたい。いままで接客と事務仕事が半々だったのが、今年度から事務仕事のウェイトが増えたものの、ルーティンワークの多い担当から外されてものすごく暇だ。自分の担当領域はやるべきことが曖昧で形になるのに時間がかかるのもあって、ついぼーっとしてしまう。それが許される環境なのはありがたいことなのかも知れないけれど、手を動かせば終わる仕事が欲しい。これでは窓際嘱託職員だ。今年度いっぱいで契約も終了するし残業も責任もしがらみもない立場の快適さにあぐらをかいてしまうけれど、いつまでもこのままという訳にはいかないのでぼちぼち転職活動をしている。6月から目に付いた求人に応募しては書類落ちを繰り返しているのだけど、ここに来て来月に面接が2件入る。しかし、私の書類を通すなんてよっぽど見る目がないか誰も定着しないひどい職場なのではないか?と穿った見方をしてしまう。淡々と仕事ができるところが見つけられたらいいなと思うけれど、きっとそう簡単にはいかないだろうな。