ニュースクラップタウン

私事で恐縮です。

うづき見聞録

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子どもの頃から花粉症で、桜の花が開くすこし前からムズムズしはじめて、ゴールデンウィークあたりに落ち着くのが風物詩なのですが、毎年花粉症のはずなのにいつも4月のおわりになるといつ頃まで薬を飲んでマスクをしていたか思い出せなくて悩む。ゴールデンウィーク前までだったか終わり頃だったか。

 

4月7日 木曜日 

ハイバイ『おとこたち』於:東京芸術劇場 シアターイース
同じ失敗を繰り返し、内省せず、老いを受け入れられないおとこたち痛々しさ。その愚かしさを、突き放すでも肯定するでもなく、これ以上ない絶妙な距離感で立ち上げ、おかしみをにじませながら描く作劇の面白さと、描かれていることの恐ろしさの両方に震えました。CHAGEASKA「太陽と埃の中で」のフレーズが彼らの不可逆な人生を象徴するかのように響く。凄すぎる・・・。

 

 

CREA 2016年5月号 人生に大事なもの3つ。

CREA 2016年5月号 人生に大事なもの3つ。

 

 雑誌『CREA』 の「人生に大事なもの3つ。」という特集で高橋一生小沢健二の音楽を挙げていて、その回答の完璧さというか、イメージ通りというかイメージを更に増幅させるというか、とにかく興奮しました。7月の舞台『レディエント・バーミン』も大変楽しみです。

 

4月16日土曜日
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岩井俊二監督『リップヴァンウィンクルの花嫁』 於:ユーロスペース
大号泣してしまいました。結婚式の偽親族や別れさせ屋が商売として成り立つ、空虚な人間関係が渦巻くこの国で、そんな商売を介して出会った七海(黒木華)と真白(Cocco)が築きあげる関係の美しさよ。空虚ではあるけれども、偽親族で演じた家族が偽物のまま、嘘が嘘のまま誰かを救うような、歪さと可笑しさ。優しい顔をして他人に取り入るような、じわじわと食いつぶしてしまうような安室(綾野剛)も、最後の七海の姿を見ると、実は悪人のような、あながちそうではないような。この辺はインタビューで岩井俊二監督が語っていたことで溜飲が下りました。

一見すると七海にとってはどんどん堕ちていく話なんですけど、堕ちているように見えて実は昇っているような、そういう話がつくれないかなと思っていました。社会のヒエラルキーを堕ちていく話というのは、往々にして非常に失礼なことになるんです。この前までお屋敷に住んでいた人が長屋住まいになるくらい落ちぶれてしまった、というような。堕ちた先にも人は住んでいるし、その人たちなりの生活があるわけじゃないですか。「長屋の人たちがそんなに悪いのかよ」っていうことにもなるし(笑)。この社会から堕ちることは、実は解放されることだったり、堕ちているように見えて逆に伸びあがっていくことなんじゃないか。そういうことを描けたら、とは思っていました。

 
3時間の長さもあまり感じず、好きなシーンも沢山あって大好きな映画になりました。黒木華の所在無さげな佇まいから徐々に凛とした表情になっていくのが美しく切り取られている。ドラマ『重版出来』での元気な彼女もとにかく可愛くて毎週楽しく観ております。
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 ULTIMATE MUZIK?!  於:六本木VARIT
VIDEOTAPEMUSICとGROUPの2マンライブ。
5人編成のVIDEOTAPEMUSICはいつもよりメロウな雰囲気。ソロで演奏された「1990年のカッコーオーケストラ」、1990年と2016年のVIDEOさんがピアニカを吹いていて面白かったな。
最後に演奏された「煙突」、Patricia Pombo『Casiotone Works』収録のヴァージョンしか聴いたことがなかったのでバンド編成で聴けて嬉しかったです。MCでVIDEOさんが物販を「CDなども売買できますので・・・」と斬新な言い方をしていて、「売買」ってなんか良いなと思いました笑 この日も披露された新曲「Sultry Night Slow」はメロウなフレーズがとても良くて6/25のライブとてもとても楽しみです。共演はcero!EVIS PRESLEY BAND!DJ松永良平!これでもかという最強の布陣ではないですか。
GROUPはドラム、ベース、トランペット、サックス、ギターが扇形に並ぶステージングが超クール。ギターのフレーズからはじまって徐々に厚みを増していく演奏が聴き応えたっぷりで格好良かった。
 
4月17日日曜日
楽しみにしていたドラマ『99.9』と『ゆとりですがなにか』がスタート。
『99.9』は冒頭から片桐さんが大活躍していて嬉しい。ものすごい運動量だ。2話では片桐さんがコンテナから橋に飛び移るシーンがあって、おお!と思いましたが、おそらく吹き替えでしょう。
コメディ要素も強くて(スベッている気がしないでもないけど)、毎週片桐さんが見れて嬉しい限りです。あの中でエレ片でも話されているやらかしをやっているのか・・・。
 
『ゆとりですがなにか』は宮藤官九郎が挑む社会派ドラマということで、ラジオでも思い浮かぶギャグを封印しながら書いているというようなことを話していたのでどんな仕上がりになっているのかしらとドキドキしながら視聴。ダサめのオープニングテーマがさも格好良いかのように演奏シーンまで付けて流れたときにはマジか・・・と思ったりしましたけど(オープニングに時間を割いて脚本を削ったりしていたら嫌だなー)、男たちのわちゃわちゃした会話にいつもの宮藤さん脚本を感じながらも、これは新たな意欲作になるのでは!という期待と予感がありました。そして柳楽優弥、最高!
ドラマ制作発表時の宮藤さんのコメントも、やっぱり信頼できる。

国が定めた教育方針で図らずも『ゆとり世代』とくくられた彼らが、自虐的に『ゆとり』と口にせざるを得ない、そんなゆとりのない現代社会。

ゆとり、という言葉が取り沙汰されるようになる前から『池袋ウエストゲートパーク』や『木更津キャッツアイ』『タイガー&ドラゴン』などで宮藤さんがチャーミングにクールに愛すべき存在として描いてきた社会的にちゃんとしてるとは言えないけれどそれぞれの場所で懸命に生きる若者たちと、今回描こうとしているゆとり世代の若者とのギャップに最初は戸惑ってしまったのですが、2話のラストで太賀演じるゆとり社員の山岸がモンスターとして描かれているのと、この記事を見て、そういう方向に振っていくのかーと納得。

多くの視聴者が持っている「ゆとり世代」のイメージと実像のギャップを際立たせるために山岸が存在する。「宮藤さんは、脚本を書き始めるころ、今回初めて本当の悪役を描きたい、これまで描いてきた、どこかかわいげのある愛すべき悪役とはまた違う、本当にイヤなヤツにしたいと話していました」

 
 
4月19日火曜日
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新木場に用事があったので、夢の島熱帯植物館へ立ち寄る。温室に足を踏み入れた途端にむわっとした湿気に包まれ、ただでさえ陽射しが強くて暑い日に来ることなかったかしらとやや後悔するも、イヤホンからVIDEOTAPEMUSICが流れればそこは楽園に早変わりであります。
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バナナやらヤシやらドリアンやらの成る大きな木を見上げながら人工の南国へしばしトリップ気分を味わいました。しかし、昔から植物にあまり興味がなくて、眺めるのは好きだけども名前や種類が覚えられない。温室の骨組みは外から見ても中から見ても最高に美しい。
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4月25日月曜日
6月放送の『小林賢太郎テレビ8』に片桐仁が出演、2009年の公演『TOWER』以来7年ぶりにふたりが揃うニュースがアナウンスされた。発表された日は一日中Twitterのトレンドワードに「ラーメンズ」があって、かなり話題になった模様。久しぶりの共演がテレビなのだなあとか、大泉洋片桐仁のもじゃもじゃ共演かあ、とか色々思いながらも、私は『TOWER』終了直後にラーメンズを知って間に合わなかったクチなので、毎回『小林賢太郎テレビ』を特集しているTVbros.の表紙を今回はラーメンズが飾ることになるのかしら、なんて考えながらとてもわくわくしています。
エレ片コントライブ コントの人10』で披露された衝撃の片桐仁ドキュメンタリーコントで、過去の自分に「多摩美に行ってある男と出会うんだ!」と力説する片桐さんを見たあとだと、尚更感慨深いものがあります。コントでは「ラーメンズ OR DIEならぬ性犯罪者」ですからね!(エレ片リスナーじゃないとなんのこっちゃですが笑)
 
4月21日木曜日 
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細川徹 作・演出『あぶない刑事にヨロシク』 於:本多劇場
チラシの写真の穴だらけの皆川さんだけでももう笑ってしまうんですが、終始くだらなくて楽しかった。最後にタカとユージよろしく飛んだ皆川さんと荒川さんのジャンプの低さが愛おしい。ストーリーを進めるための台詞や転換の間が多くて、コメディにしてはテンポが停滞してしまっているかなと思う瞬間もありましたが、テルミンやシンセなどを駆使したTUCKERさんの生演奏もとても格好良くて概ね満足です。
 
4月28日木曜日 
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黒田清輝の作品もさることながら、師であるラファエル・コランの作品の素晴らしさに見蕩れてしまった。
 <<フロレアル>>の美しさよ。印象派的な技法で描かれた背景に浮かび上がる、筆跡ひとつ無いなめらかな肌の裸婦。こちらを見据える憂いを帯びた眼と薄く開いた口元に寄せられた草と指先のニュアンス、どれをとっても完璧。この例えが相応しいかは分かりませんが、頭に浮かんだのはオリエント工業ラブドール。独特の官能と美しさを湛える限りなく理想化された女体だと思いました。久しぶりに美術館でこの絵の前から動きたくない、と思う作品と出会って大満足であります。<<庭の隅>>の少し上から見下ろした構図も、画家の女性への視線を感じさせる。ここでも指先まで美しく描かれていて、この指先のニュアンスというのは黒田清輝にもしっかりと受け継がれているのが見て取れた。
デッサンにも手を描いたものが散見されこだわりがうかがえるのですが、中でも空襲で焼失してしまった<<昔語り>>の一部の男性と手をつなぐ舞妓の下絵や画稿に目を奪われました。繋がれた手のアップの下書きでは角度や指を添える位置が試行錯誤されていて、極めつけは男性の肩に添えられた手。指先が物語っている。黒田記念館のホームページで見ることができます。☛ 昔語り
 
4月30日土曜日
『トットてれび』がスタート。演出・井上剛、音楽・大友良英ということで『あまちゃん』のエッセンスも感じつつ、30分という短すぎず長すぎずの尺もちょうど良くて、そして何よりトットちゃん黒柳徹子を演じる満島ひかりがチャーミングで、良いですね。
表情を丁寧に捉えたり、虚実ないまぜの突飛な転換が起こる井上さんの演出と満島さんはとても相性が良い気がします。ファッションもとびきり可愛くて、出てくるワンピース全部欲しいなと思いながら観ています。他にもわくわくするようなキャストが揃っていて楽しみ!
 

4月28日 木曜日 フジロッ久(仮)超ライブツアー2016ファイナル

 

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 フジロッ久(仮)超ライブツアー2016ファイナル 於:渋谷WWW
 
ライブの写真やPVからきっと怖いに違いないと思っていたNATURE DANGER GANGは、予想通り冒頭から乱闘に近いダイブやモッシュで嵐のようなライブを繰り広げていた。しかし、目の前で巻き起こる意味の分かるような分からないような叫びや馬鹿みたいに脈絡のない動きの連続は純粋でなぜだか美しくて、あの狂騒に加わりたいとすら思いました。ステージ上にメンバーが並んだときのルックも抜群に格好良い。

オレたちは ひょうきんさ ふざけてる 

のフレーズに尽きる。
『生きてる』もとても良いですね。
 
フジロッ久(仮)のライブはこのライブを最後に脱退するキーボード丸山鮎子さんのインタビューとツアーのダイジェストで構成された映像からスタート。私はアルバム『超ライブ』から聴き始めて、ライブも今回が初めてだったのですが、これはなんというか、メモリアルな場に居合わせているという予感がひしひしと伝わってきた。
ホーン隊や春太郎(NDG)、野村(NDG)、中川理沙(ザ・なつやすみバンド)といったゲストボーカルを迎えたライブはどの曲もただただ素晴らしくハッピーでした。沢山のことを考えて考えて考えた上で吐き出されるシンプルな言葉も、それぞれの個性が複雑に重なり合って美しくひとつに響きあうキーボード、パーカッション、ドラム、ベース、トロンボーン、トランペット、サックス、慈しみや優しさやときには怒りのようなものまであらゆる感情を内包したような藤原さんのボーカルも、この人が言うならきっとそうに違いないと思わされる高橋さんの愚直なパッションも、全部が最高だ。
何よりも好きなのは、『ごはんのテーマ』に代表されるようなきちんと生活を送ること、その上で今日みたいな祭りを作ること、その尊さと喜びをとびきりキャッチーなメロディで歌ってくれること。『ドゥワチャライ久』のフレーズにも何度も何度も励まされています。

プロテストはプロテクト

インディペンデント それがヒント

 

自分は自分で守らないと

恋と愛と音楽と友情で

 

 
フロアで多発するダイブやモッシュも、こんな最高な音楽の前では、こうするしかないじゃないか!というどうしようもない興奮に溢れていて感動的ですらあった。アンコールの『ライブ』が終わったあと、客席から響いた「もう一回!」「最初から!」という声に私もおんなじ気持ち!と頷いた。それに対する藤原さんの「身体もたないでしょ。一緒にいるのはできるから、もっとチャーハンとかも一緒に食べようよ」という旨の言葉もグッときました。チャーハンってところが良いよね。
この空間の中にいて、藤原さんが

dayz.today

で書いていて印象に残っていた言葉を思い出しました。

わからないのに、きみとぼくがおなじうたを好きだなんて、なんという奇跡でアドベンチャーでロマンチックだろうかと思います。そして、おなじうたを好きな同士が集まれば、そんなの当然でしょ!としか思わない。そういう人のことは、ともにこの世を駆け巡る仲間のようだと感じます。

 
軟弱な私もWWWの二段目から大人しく少しだけ跳ねながら、興奮を抱えてワナワナと震えた。鮎子さんの脱退やシマダボーイが正式メンバーでなくなること、これからしばらくライブはないことなど、今日初めてこんな素晴らしいライブを見て、これは最初で最後なのだということも噛み締めながら。

TOKYO/この町にはあまり行くところがない

2月14日 日曜日

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東京都現代美術館にて『東京アートミーティング-見えない都市を見せる』。一番身近に感じたのは蜷川実花の展示で、美術館のロビーから見えるように設けられた3つの自撮りブース。自分自身を撮影することと、それを他者に見られることを1つの風景としてさらりと提示していて唸る。キャプションでも近頃とみに聞くようになった「承認欲求」について言及していて、それを肯定しているのも良かったな。

清澄白河駅から現代美術館までの道のりで惣菜屋さんに茶色の猫が入っていくところを見かけたのだけど、帰りに同じところを通ったらその猫が店先で椅子に座ってお客さんとテーブルを囲んでいた。季節外れの春の陽気と相まって、なんだかすごくいい風景でグッときた。可愛い。


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音楽実験室・新世界にて『官能教育 三浦直之(ロロ)×山本直樹「この町にはあまり行くところがない」』。リーディングと芝居を行き来し、他の短編もコラージュしながら山本直樹の作品世界を立ち上げる。カキフライやアイスクリームを使った見立てと、朗読に2度登場する’肛門’の言葉が並ぶことで、性的嗜好を越えて人間の根源的なものすら感じてしまう。飴屋法水演じる男の存在感や淡々としたリーディングは性描写を無化してしまうほどの迫力。三浦直之演じる船田のオドオドとした佇まいからも、身体の距離が縮まるほどに虚しい、なんとも「エロ悲しい」感じが漂っていてたまらない。電車での絡みのシーンで大場みなみ演じる鱒山の背中に回された添えるようなしがみつくような船田の手に官能を感じたり。前髪で表情が見えない大場さんは声と足でめいっぱいエロを表現していて素晴らしくドキドキしました。

三浦さん、先月『校舎、ナイトクルージング』で見たときと外見が別人で驚いた。ヒゲとメガネでだいぶ印象が変わるなあ。「三浦直之」で画像検索するともっと混乱します。