ニュースクラップタウン

私事で恐縮です。

もともと約束していた用事があって、距離を置こうと言われて以来、好きな人に会った。あの日以来、連絡は一切こなかったし、私も約束のための時間の連絡をしたくらい。そしたら普通の返事が返ってきた。なんとなく、あの日のことには触れるべきではないだろうなとは思っていて、実際そのような空気にはお互いならなかった。ならないようにしていた、というのが正しいのか、顔を合わせてからお別れするまで、本当に何もなかったみたいに、普通に喋って、食べて、歩いた。こうなる前によく話していたことをたくさん話した。本当だったら私から切り出すべきだろうと、手紙を書こうかとも思ったけれど、あまりにも重たいからそれはやめた。

好きな人に言われたことを反芻して、仕事のこともポジティブに話せた、好きな人の話も素直な気持ちで聞いた。会う前は、爪を綺麗に磨いたり、新しいシャンプーを試してみたり、新しいワンピースをおろして、なるべく可愛いと思ってもらえるようにした。最後に会った日から2kg痩せた。少しでも可愛く映っているといい。また私のこと好きになって欲しかった。好きな人は相変わらず素敵だった。髪の毛がいつもよりおめかし寄りのセットだったように思えて、それが嬉しかった。格好良かった。

知り合ってからというもの、1ヶ月近く顔を合わせず、連絡もとらないということがなかったので、本当に本当に長かった。自分でも意外なことに、千切れるような痛みは最初の1週間で消えて、少しずつ少しずつ、別れを覚悟して、もしかしたらもう大丈夫かもしれない、と思ったけれど、顔を見たら、声を聞いたら、そんなのもう、そんなわけない、大丈夫なわけない。

好きな人は元気そうで、私のことは全然気にしてなさそうだった。もっと大変なことがほかにあるから、本当に、私のことは思い出さなかったのだろうと思った。悔しかったし悲しかったけど、それよりも目の前に好きな人がいることが嬉しかった。楽しく過ごす、ということにひたすら集中した。実際、とても楽しかった。好きな人もそんな風にしてくれた。本当に楽しかったのかはわからない。

あまりにも何も変わらず、自然に隣にいたから、あの日のことも、言われたことも全部なかったんじゃないかな、なんて錯覚しそうになるほど。少し前まではこれが当たり前で、私はその尊さを自分で踏み潰してしまったのだよな、と思う。当たり前じゃないから、ちゃんと守っていかなきゃいけなかったのに。こんな時間をたくさん、たくさん過ごしてきたね。もう忘れてしまったかもしれないけど。

具体的な話はなにもしなかったから、また会えるような気がしてるけど、次の約束は取り付けられなくて、別れ際にご飯行きましょうというのが精一杯だった。そうだね、と言ってはくれたけど、大人はすぐにそういうことをするね。

今日の私は結構ちゃんとできたと思う。このままぼんやりと終わってしまうのだけは嫌だな。どんなふうに思ってるかだけでもいいからちゃんと聞きたい。ちゃんと教えて欲しい。好きな人のこと、忘れられない、諦められないって思ったけれど、別に忘れる必要も諦める必要もないのだと思った。最初はずっとずっと片想いのつもりだったから、何も変わってないじゃん。そうだよ。大丈夫、刺したりはしない。

一緒に暮らすとか、そういうのはもうどうでもいいから、もういちど、私の隣に来て欲しい。そんな虫のいい話、おかしいのはわかってる。こんどこそ会えたら、私の醜さも全部話して謝る。取り戻す努力くらいは、してもいい?

私はたぶん、この先何があっても、好きなままです。好き。