ニュースクラップタウン

私事で恐縮です。

情緒・反射・積載

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毎日のように降り続いた雨と2週に渡って週末に訪れた台風が川をいっぱいに満たした。あと数ミリで氾濫するのではないかというくらい河川敷スレスレで、危うさと非日常に少し胸がどきどきとする。高い水面はいつもより近くで太陽の光や工場の灯りを反射して、ぴかぴかと輝く。それが綺麗だった10月のおわり。特に理由はないけれど、10月のことは殆ど書かないままに11月になってしまった。今年ももう、なんてこれまでもこれからも何回も言うんだろうね。

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11月2日、本多劇場にてエレキコミック第27回発表会『LEMON LIME 100% GIRL』。笑いすぎて劇場を出る頃にはぐったりしているエレキコミック恒例の現象が今回も。今回は特にパワー系というか、とにかく顔と動きとフレーズで攻めてくるコントが揃っていた。「やっつんだっつん」でのやっつんの「最高!大好き!!」というフレーズが本当に最高で、全体的なムードも明るい。最初と最後のレモンとライムを使ったアレを、芸歴20年のコンビがやってるのめちゃめちゃ格好良いし強い。最高!大好き!!

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11月3日、シアターサンモールにてロロ『父母姉僕弟君』を観劇。過去と現在も人間と動物も野球や家族の概念もとにかくしっちゃかめっちゃかで、一瞬振り落とされそうになりながらもキッド(亀島一徳)のラストシーンにガツンとやられた。あの後ろ姿と、淡々と語りながら徐々に熱を帯びていく発話が凄まじい。ロロの世界では、仙人掌(望月綾乃)のようにいつも人と人とが出会った瞬間に受け入れられて関係が出来るのがとても好きだ。出会ったばかりの人同士が、父にも母にもなってしまうマジカルはロロにしかなし得ない。そして出会ったからには別れが訪れる。でも忘れても消えていっても、それはなくならない。むちゃくちゃな「We are the world」を見ていたら、なんか全部大丈夫な気がしてくる。この作品で形成されていった家族って、知らない人同士が深く関わりあうという意味でそのまま劇団やバンド、アイドルグループの関係にトレースされるのだなと思い至る。

劇中の台詞からムーンライダーズ「Cool Dynamo,Right on」の

君に預けた 僕のハッピー

冷凍にして 持ってておくれ

そうすれば いつでも

あの頃が 戻るだろう Right on

という歌詞を思い出したりした。これはとても個人的な話なんだけれども、いま私は片想いの真っ最中で好きな人のことや会話を日記にできるだけ細かく記録していて、それはこの先忘れていくときのために残しているものだ。私の場合は関係を築く以前の話だけど、おんなじだと思った。

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『父母姉僕弟君』で号泣して感極まった状態で、好きな人を含めた数人で食事とお酒という大イベントに挑む。一杯しか飲んでいないけれど思ったよりもお酒が強かったようで少しぼうっとしてしまい、うまく言葉が出てこなくて会話が滑らかに運ばなかった。楽しみにしていたし楽しい瞬間もあったけれど結果は惨敗で、異様に悲しい気持ちに包まれた。自分がいかに人と関わるのが下手か改めて痛感してしまったのもある。これまでもめちゃくちゃ気を遣わせていたんだな、というのを感じ取ってワーッとなる。難しい。人と関わるの難しい。ちょっと疲れたな、と思ってしまった自分に悲しくなった。私には触れられない領域(それは例えば過去のこと、極私的なこと)が思った以上に広くて呆然とした。私には関係がない。私この人と何も関係なかった。それなのに、『カルテット』を毎週楽しみに見ていたと話していたことを思い出すと嬉しくて好きな気持ちが湧き上がる。今更こわくて恋人の有無も確認できていないのに。同じドラマが好き、という以上に大切なことなんて果たしてあるだろうか。

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 一晩中悲しくて、浅い眠りを繰り返した。最近打ち解けられたことは事実だけれど、それは自分の所在なさから気を遣わせていたことに思い至って、仲良くなれただなんて思い上がりを恥じる。自分の期待通りに進まなかったことに拗ねていることにも気が付いてしまって自己嫌悪に陥る。自分に関心が向かなかったことを不満に思う。なんて幼稚だろう。歳月には勝てない。そのどうしようもなさが悲しい。しかも、言わなくていいことを言って友だちを傷付けてしまった。胸のあたりに柔い圧迫感がある。この気分の落ち込みは周期的なものだと思う。誰かと関わることで得た喜びは身震いするほど大きくて、得たことで生まれる不得手或いは喪失の悲しみは身体が痺れるほどに甘い。

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11月5日、新木場スタジオコーストにてカクバリズム15周年ライブ。スカート澤部さんも角張社長も鏡開きが割れなかったオープニングにどうなることかと思ったけれど笑、超迅速な転換でとても快適に楽しめて本当に良いアーティストの揃った気持ちのいいレーベルだなと思った。2階席に座れたのでのんびりとceroまで見て、フィナーレを見ずして…という気持ちもありつつ空腹と頭痛に耐えかねて帰路につく。とても好きなスカート「回想」から始まって、浴びるように沢山の良い音楽を聞いた。TrafficやDC/PRGとの対バンで見たときはかなり気合いの入った演奏をしていた印象が強かったceroは、今日は肩の力が少し抜けたような軽やかさがあった。ニカさんで締まったので僕らは次回予告のつもりでと髙城さんが言っていて、祭りの終盤のムードに寄り添うような「街の報せ」が沁みる。

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新譜『ON THE AIR』をリリースしたばかりで期待値も高かったけれど、スタジオコーストの大きなスクリーンをバックに見るVIDEOTAPEMUSICのライブは素晴らしすぎた。最後に演奏された「Fiction Romance」では、MVに登場する社交ダンスクラブの人々がメロディを口ずさみながら踊る映像が暗転し、VIDEOさんがピアニカソロを弾き終えると大きなミラーボールが回り出して会場中を白い光が包み込む。そのあまりの美しさに息をのんだ。これは他のカクバリズムアーティストにも通ずることだと思うのだけど、聞こえてくる音や見えている映像以上の景色や世界を見せてくれる。複雑さや奥深さと、純粋な音楽の楽しさが同居していてとても好きだ。

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目がさめると昨日、一昨日まで胸を覆っていた靄が少し晴れている感覚があった。カクバリズムのおかげだ。そういえば8月も精神状態が最悪だったときにカクバリ夏祭りで回復したな。と思ったのも束の間、バイトで凡ミスを連発し頭を抱える。落ち込むよりも、やっちまったな〜!みたいなテンションが残っているので全然大丈夫だけれども、そこそこにキツい。私情で仕事に影響を及ぼす自分の甘さが一番キツい。前は調子を崩す予兆があるときは直ぐに宮藤官九郎のドラマやエレ片のラジオ、お笑い、音楽を摂取して乗り越えていたけれど、最近それすら忘れてひたすらに落ち込むことが増えた。揺るがないと思っていた自分の好きなものを忘れて、虚像を追うような恋にうつつを抜かすなんて、私としたことが。でもドラマもラジオも音楽も、すべての物語と表現は思い出せばすぐそばにあって、すぐに会える。生み出され残されるものたちに、これまでもこれからも救われ続ける。それだけは何度も思い出せる。


柴田聡子 - ぼくめつ