ニュースクラップタウン

私事で恐縮です。

平成29年1月覚書

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年始は浅草にお参りにいったり高尾山に登ったり、楽しく過ごしました。お楽しみの年始特番は『キングちゃん』(パペルvsぴぱな!)、『ゴッドタン マジ歌選手権』(劇団ひとりドローン!バカリズムのsuchmos!)、『富士ファミリー2017』、『ご本、出しときますね?SP』が期待を上回る面白さで、今年も貪欲にテレビ欄チェックに精を出そうと心に誓いました。面白いシーンがあればそこだけ切り取ったものがあっという間に拡散されていくようになりましたけど、やっぱり番組自体を見逃していると悔しいし、テレビも映画も本も演劇も音楽もなるべくちゃんと享受していきたい。

 

10日火曜日

FMyokohama松重豊「深夜の音楽食堂」ceroゲスト回が印象的だった。ceroが所属するカクバリズムの話になった際に二階堂和美キセルの名前が出て、松重さんてこういう音楽を聞くんだなーと。それから、松重さんがセレクトして読み上げた「roji」の朗読が素晴らしかった。現実世界とパラレルを行き来するceroの楽曲群の中でも「roji」は現世側だと思って今まで聞いていたのが、松重さんが発話することで静かにドラマがはじまりパラレルワールドの気配がスッと漂ってくるような感触がした。

 乱暴に取った受話器から聞こえた不気味な風の音

すぐ通話途絶えて背筋も冷えたし

開け放ってた窓もそろそろぼちぼちいい加減に閉めようか・・・

 

新しい日々のはじまり 感じ取っているはず

どこか別の世界での約束 どうしても思い出せない

 朗読の最後にドアを開けるベルの音で曲が始まる演出もきまっていたな。

 

13日金曜日

www.nhk.or.jp

『お母さん、娘をやめていいですか?』が面白い。母(斉藤由貴)が娘(波留)のデートを尾行するシーンがもうサスペンス。家を建てているけどお父さん(寺脇康文)はリストラ寸前だし、どうなっちゃうの~~という感じで楽しみだ。『ディストラクション・ベイビーズ』『ゆとりですがなにか』に続き、柳楽優弥がとても良い。

 

14日土曜日

天気予報の通り「最強の寒波」がやってきて、歩いていると鼻の奥がツンとする寒さの一日だった。埼玉は朝から晴天で雪は降らないだろうと思っていたら、お昼過ぎに空が真っ暗になってほんの一瞬だけ雪が降った。しんしん、でも、はらはら、でもなくバラララッと幻のように通り過ぎた今年の初雪。

池袋シアターKASSAIにてジエン社『夜組』を観劇。『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』内の「家族」というコーナーに着想を得て、実際にリスナーにも取材をして作られた作品ということで観に行きました。深夜ラジオのリスナー=夜に生きる人と捉え、ディストピアのような夜の世界での彼らと彼らの家族との交錯を描いているのはとても面白い。同時多発的な会話や不明瞭な設定についてゆけずにのりきれなかったのも正直なところ。でも帰り道や眠るまでの間、深夜ラジオでしか成立しない空気感や面白さ、沢山のリスナーからのメールが読まれているのにこのラジオを聞いているのは自分だけなのではないかと感じる不思議について延々と考えていたので、結果的に観てよかったなと思えた。ジエン社主宰の山本健介、出演者の寺内淳志、善積元によるアフタートークでは、取材をしたリスナーがみんな周囲にラジオを聞いていることを話していないという話題が出ていて、ラジオの中にのみ現れるキャラクターとコミュニティという点においてこの作品が少し分かったような気がする。それから、この日の昼公演にアルコ&ピースの酒井さんが来て、レッドブルを差し入れしていったそうです。

酒井さんといえば、最近では1月10日放送分アフタートークで話されていたエピソードがとても好きです。 お正月に川崎に帰省した際、地元の友達に絡まれないように実家までタクシーに乗ったら夜に「帰ってきてるだろ」と電話で呼び出された話。バカいかちい・・・。こんなにイメージ通りの川崎エピソードってあるかよ。川崎といえば、以前『関ジャニクロニクル』を観ていたら「ハロウィンの夜に一人で歩いている女性はどんな人なのか?」というテレ東チックな趣旨のもと、ハロウィンパレードで有名な川崎に丸山くんが取材に行く企画をやっていたのを思い出した。繁華街で輩に「関ジャニ!」と叫ばれ追いかけられるなかなか衝撃的な映像を土曜のお昼に見たのが強烈に残っています。

 

サザンウィンドウ・サザンドア (フィールコミックス)

サザンウィンドウ・サザンドア (フィールコミックス)

 

 石山さやか『サザンウィンドウ・サザンドア』を読んだ。「離れていても同じ空(花火)を見ている」と言葉にすれば陳腐に聞こえてしまうようなことをスマートかつキュートに描いた「今年の花火」からずっと心地の良い温度感、リズムでとても好きです。団地や風景の緻密な書き込みとラフな線の引き方のバランスも凄くて、ずっと眺めちゃうページが沢山あります。

 

17日火曜日

待ちに待った『カルテット』、会話と視線の応酬がもうたまらない。すずめ(満島ひかり)の巻(松たか子)へのミッションが一話で明かされましたけれども、今後のサスペンス的展開は自ずとそれぞれの人間ドラマとイコールになるのだなと思うと構成と脚本に期待が膨らみまくります。「あしたのジョーの帽子」とか「みかんつめつめゼリー」とか「高級箱ティッシュ紫式部」とか唐揚げにレモンをかけながら「おいしそー」「ですよねー」って会話するすずめと別府さん(松田龍平)とかとかとか、分かっちゃいたけど、いたるところまで4人の佇まいが最高の最高。ミゾミゾする。巻さんの「さかむけ、肘まではがされます」って台詞と発話がとても好きです。脚本やキャスティングの方向性だけでなく、椎名林檎のペンによる主題歌「おとなの掟」、maegamimamiのイラストといった訴求力は制作側の視聴者への目配せというよりも、良いものを作ろうという自信と信念が感じられてとても良いな、と思う。「こういうの好きなんでしょ?」じゃなくて、「これ素敵じゃないですか?」「とても良い!」という感じ。

 

18日水曜日


長澤まさみら新キャストで蘇る!ミュージカル『キャバレー』公開ゲネプロ | エンタステージ

EXシアターにて松尾スズキ演出『キャバレー』を観劇。長すぎる手足にクシャッとした笑顔にダンスに歌に・・・サリーが登場するたびに「まさみーーー!」と叫びたくなるほど長澤まさみが最高でした。石丸幹二のMCはこの作品を貫く「上品にときにお下品に」というキャバレーのテーゼを見事に体現していた。白塗りメイクでも地顔がわかる造形の濃ゆさ。まさか劇団四季にもこういう演目と役あるのかな、と思うくらいハマっていたな。ギラギラでお下品なキャバレーのシーンはどれも最高で、それだけでもショーとして成立する強度を誇っていた。1920年代のドイツ、ナチス政権という時代の影が迫り来る1幕のラストと2幕での淡々とした人間模様や情勢の変化のコントラストは、気付いたときにはこうなっていたというやるせなさのようなものが漂っていてゾワっとする。「反対を表明しないことは賛成したのと同じことだ」というクリフ(小池徹平)の台詞。ド派手なショーのフィナーレはこれまでの曲のプレイバックで、いかにも走馬灯のような静けさと寂寞を湛えていた。さようなら、と去っていくMC。みんなはどこへ行ったのだろう。どこかで破滅を予感しながら繰り広げられる乱痴気騒ぎと快楽はあまりにも虚しく、だからこそ甘く美しい。

 

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21_21DESIGN SIGHTの『デザインの解剖展』へ。人が多〜い。子供の頃、世の中に出回っているあらゆる商品は全て完璧なものに見えていて、大人は何でも完璧にしなくちゃならないから大変だなあなんて思っていたことがあったんですけど、パッケージのフォントひとつ取ってもこんなに考え抜かれているんだから、やっぱり大変だなと子供の頃の気持ちに引き戻された。大人になったら私も完璧にならなきゃいけないんだとなんとなく怖かったので、たまに大量に刷られるポップやメニューに誤字を見つけると、「よく見つからずにここまで来たね」とちょっと嬉しくなる。揚げ足取りとかそうゆうのじゃなく。これは2年くらい前に見つけたドリノクバー。

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話は戻りまして、スーパーカップ超バニラの「超」の文字だけクローズアップされるとピンと来ないもんだなー

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高校教師 DVD BOX

高校教師 DVD BOX

 

オンデマンドで『高校教師』(1993年)を見始めたら止まらなくなって一気に視聴。羽村真田広之)と繭(桜井幸子)の距離が近付いていく前半はもうムズキュンどころの話ではない。心臓破裂しそう。 桜井幸子の大人びたルックスと雰囲気、いたずらな可愛らしさ、儚さ、危うさ、透明感…どの角度から見ても完璧すぎる。真田広之も、世界で一番ハンサムなんじゃないのと思うくらい。横顔がもうすごい。完璧なフォルム。直子(持田真樹)と新庄(赤井英和)もすごく良いんだよな。あと一話に駅員役の松尾スズキが出ている。惚れた腫れたとか付き合うとか別れるとかももちろん面白いですけれども、誰かのことを好きになって惹かれあっていくときにしか流れない時間のきらめきみたいなものが見たくて私は恋愛の物語を求めているのかもしれないとすら思います。他の誰にも知り得ない、ふたりだけの愛としか呼びようがないもの。すべては「人が恋に落ちる瞬間」と「普通の恋」ですよ。後半のサイコ色強めの展開もめちゃくちゃ面白い。結末はこの上なく完璧なハッピーエンドだと思った。視聴者プレゼントの映像も入っていたのですが、森田童子「ぼくたちの失敗」の短冊CDがドミノ倒しになって最後に羽村と繭の写真が出てくる映像がシュールで良かった。なんだありゃ。

 

22日日曜日

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LINE LIVE『港カヲルのお悩み相談室』でsnowにはしゃぐカヲルさん、暴動さん、ゴスペラーズ安岡さんが可愛すぎる問題。「なにこれ~!」「うわ~!」「やだ〜!やだ〜!」って。画質の良いスクリーンショットが取れなかったので小さくしたらプリクラみたいでなお可愛い。LINE LIVEはアーカイブが残るので便利ですね。

 

24日火曜日


「住住」PR 主題歌ver

バカリズム・オードリー若林・二階堂ふみの『住住』、シンプルに駄弁っていてとても面白かったな。ハプニングを起こすのではなくて、キャラクターのおかしさで転がしているのも良い。何より、脚本ありの本人役というフィクションとノンフィクションの境が曖昧なシチュエーションを絶妙〜なラインで演じる二階堂ふみが上手い。上手すぎる。素のように振る舞いすぎるとグダグダになりそうなところを、きゅきゅっと締めている。すげ〜エンディングにEnjoy Music Club、イラストにボブa.k.a.えんちゃんという明確な方向性も安心しますね。

 

27日金曜日

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国立新美術館開館10周年記念イベントのエマニュエル・ムホー「数字の森」。

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渋谷の名曲喫茶ライオンにはじめて入った。薄暗い店内に巨大なスピーカー、大量のレコード、赤いヴェルヴェットに白いカバーのかかった椅子…また来よう。ミステリアス100点満点の店員さんに小声で「ごゆっくりどうぞ…」と言われると本当に異世界に迷い込んだみたいだった。円山町と百軒店に挟まれた立地も最高なんですよね。 

明るい夜に出かけて

明るい夜に出かけて

 

佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』を読み終える。先日見たジエン社『夜組』と同様に、『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』とそのリスナーを題材にした作品でこちらは更にがっつりとラジオの内容が反映されている。どちらにも共通しているのは登場人物が皆人生の途中で立ち止まっている寄る辺なき人々であるということで、やはり深夜ラジオにはそういう磁場があるんだなあと思う。『明るい夜に〜』では、物語の山場にアルピーANNの1部から2部への降格がクロスオーバーして、なかなかの臨場感。

天才ハガキ職人の不思議系女子高生・佐古田のヴィジュアルを清野菜名でイメージすると私的にしっくりきて大変楽しく読めました。可愛いですよねえ、清野菜名ちゃん。RIP SLYMEPOPCORN NANCY」のMV超好きっす。

ライオンを出て渋谷LOFT9のエレキコミックトークライブ『僕らの飲み会』へ。通例では後半にゲストなのが、今回は早々に到着しているというので先に登場。ゲストはダチョウ倶楽部・寺門ジモン。いやあ、面白かった。ネイチャーと食べ物の話、感化されそうになるくらい興味深かった。突然「渋谷には悪人と迷い子しかいない」と言い出したのも、最後は「(ここまで食にこだわると)モテない」で終わったのも最高でした。

 


江本祐介「ライトブルー」MV

あまりにもまばゆすぎる。太陽の光を直視したあとみたいに目がちかちかする。私はこんな風に文化祭を謳歌したタイプの人間ではないのですが、このMVの中の彼女たちや文化祭は素直に良いな、と思える。MVのための文化祭なのでいわばフィクションでもあり、いわき総合高校の高校生にとってはこれも間違いなく青春の1ページとして記憶されているのだろうなと思うと愛しさと切なさと心強さで胸がきゅっとしちゃう。彼女たちの時間もきっとこんな風にワンカットで、あっという間に流れていくけど、一生ものだね。ロロの島田桃子さんによる振り付けもとても良くて、サビと連動した弾けるようにしなやかな躍動を見ているだけで泣いちゃいそう。

 

28日土曜日

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四谷区にある東長寺にて行われたザ・プーチンズのライブ「ぷ寺」へ。会場に足を踏み入れて、本当にお寺だ・・・と疑っていたわけではないけど改めて驚く。本堂へ入るときに水のはられたお庭のようなところを通るのですが、そのお水が本当に綺麗でここでのライブも見てみたいなあと思っていたら、アンコールできっちりと活用されていてやっぱりザ・プーチンズ最高だなと思いました。写真は新曲「なまはげランド」の撮影タイムでの写真です。

 

いま『高校教師』と高橋一生に夢中なので、「高橋一生の『高校教師』」という言葉がふと浮かんだんですけど、そんなの見たらもう死んじゃいますよね。真面目でふわっとしたところがあってちょっと冴えなくて可愛くて子供っぽいところもあって真剣で…と羽村先生のキャラクター造形を考えれば考えるほどぴったりで頭を抱えています。以上です。

映画『愛の新世界』

愛の新世界(無修正完全版) [DVD]

ここ1、2年の間にNetflix、hulu、amazonプライムビデオなどの定額制動画配信サービスは一気に波及したように思う。私もいくつかトライアルで使用してその充実ぶりと便利さの虜になっている。もちろんレンタルビデオ店をうろついて借りてくるのも楽しいのだが、一覧性や品揃え、ワンクリックで再生される手軽さはあまりにも魅力的だ。もしつまらない作品や気分に合わない作品に当たってしまったとき、レンタルビデオだとなんだか途中で消すのがもったいないような気がするが、オンデマンドならワンクリックで消しても損はない。そういった環境で、知らなかった作品や自分ではあまり手に取らない作品に思いがけず出会うことができるのも嬉しい。そうして出会ったのが1994年公開の高橋伴明監督作品『愛の新世界』だ。

SMクラブの女王様をやりながら劇団員として舞台に立つレイ(鈴木砂羽)と、ホテトル嬢のアユミ(片岡礼子)の青春グラフィティ。島本慶荒木経惟の共著が原作となっており、作中には荒木経惟の撮影した鈴木砂羽の写真が大量に登場する。R指定のついたくっきりと写されるSMやホテトルのプレイシーンは、行為を詳細に撮っているのに不思議なほどにエロティックさを感じさせない。よく性風俗の描写に伴う悲愴感は皆無で、あっけらかんとしてとびきりチャーミングな彼女たちの姿も相まって清々しいほどだ。

見所のひとつにキャスト陣が挙げられる。レイの所属する劇団の主宰は松尾スズキ、劇団員には阿部サダヲ宮藤官九郎らが名を連ねており、プチ大人計画なのである。若かりし彼らがプールではしゃいだり、一緒に性病科にかかったりするシーンなど、この映画でしかお目にかかれまい。最後には公演シーンもあり。SMクラブのママに杉本彩(眉上ぱっつんのロングヘアーが最高に可愛い)、萩原流行大杉漣などはあられもない姿でMの客を演じている。ホテトルお付きのヤクザ・哀川翔がサングラスのレンズをバリバリと食うシーンも最高です。

80〜90年代の渋谷の街並みと狂騒的な時代の鱗片をドライに写し取りながら、それらと共振するような彼女たちの明るくポジティブなパワーに溢れた青春を描いている。かつてのネオンや活気に溢れた街の景色、当時のファッションへの憧れを満たしてくれる映画でもあるのだ。中でも、夜遊びを終えたレイとアユミが、山崎ハコの歌う「今夜は踊ろう」をBGMに夜が白み始めた東京の街を疾走するシーンは何度も繰り返し見てしまうほどに大好きだ。「星降る街角」をカラオケで熱唱し、ナンパした男たちの車のハンドルを奪って爆走し、夜明けの海で全裸で戯れるレイとアユミの姿なんてもう「青春」以外の何物でもない。彼女たちの「今」を生きる、その迷いのない姿がこの上ない輝きを放ちフィルムに記憶されている。映画を締めくくるレイのナレーションに全てが詰まっているといってもいい。理屈抜きに大好きな映画です。

明日から、また祭りの準備が始まる。

明日から、また超面白いに決まってる。

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平成28年年間報告

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今年も間も無く終わるので印象に残った諸々をざっくりと分野別に振り返ります。

 

舞台

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今年はいつ高2『校舎、ナイトクルージング』でロロ、『夫婦』でハイバイの芝居を初めて観た。小、中規模の演劇というのは未知の世界だったのだけども、とても面白かった。ロロの役者さんはみんなキャッチーでとても可愛い。この人の作品は必ず観に行くリストにロロとハイバイが加わりました。

大人計画的には、4月に細川徹あぶない刑事にヨロシク』、7月に松尾スズキ『ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン』、11月に宮藤官九郎 大パルコ人③『ステキロックオペラ  サンバイザー兄弟』と充実していた。平岩紙近藤公園の二人芝居『あたま山心中』(竹内銃一郎作、寺十吾演出)も濃密でとても印象に残っている。二人の演技はもちろん、桜の木の美術と照明も美しくてとても良かった。少人数の芝居といえば、吉高由里子高橋一生キムラ緑子の『レディエント・バーミン』(フィリップ・リドリー作、白井晃演出)も面白かったなあ。スリリングでした。

この人の作品は必ず観に行くリスト上位のケラリーノ・サンドロヴィッチは『ヒトラー、最後の20000年〜ほとんど、何もない〜』とKERA・MAP『キネマと恋人』という両極端の作風をそれぞれに最高のクオリティで上演していて素晴らしかった。来年の『陥没』も今から楽しみです。それにしても、音楽も演劇もものすごい仕事量かつクオリティで、ケラさんって凄いなといつも思う。格好良いよなあ。

お笑いライブは2月にエレ片『コントの人10』、3月に円山スクランブルエッグス『円山町再起動』、8月にKAJALLA#1『大人たるもの』、10月にエレキコミック『金星‼︎』、12月にナイツ独演会『あの山吹色の下着』、『エレ片IN両国国技館』を観に行った。ナイツの漫才を初めて生で観たのだけども、時事ネタ自体の強度よりもフォーマットでいかにいじくり回すかが肝なんだなと大いに笑いながら感心していた。塙さんのおかしさ底知れない。あの「兄から貰ったシリーズ」が大好きすぎます。

エレ片コントライブが今年で一区切りとして終了したり、今立さんが結婚したり、両国国技館でライブやったりと盛り沢山の一年だった。私はその当時はまだ聞いていなかったのだけども、自発的にリスナーを集めるイベントを頻繁に行っていたエレ片の集大成が両国だったのかな、とも思う。あれだけのリスナー(じゃない人も沢山いただろうけども)を両国国技館に集めるなんて、やっぱり凄いよ。

 

映画

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今年の一番大きな変化は映画館へ行く回数が増えたことだ。これまでは年に1、2回くらいだったのが、今年は月に1回くらいのペースで行くようになった。ようやく映画館で映画を観る楽しさがわかった…いくらなんでも遅すぎないか。きっかけは岩井俊二監督の『リップヴァンウィンクルの花嫁』で、めちゃめちゃに没入して泣いてしまったのは映画そのものだけでなくて大きなスクリーンと音響も関係しているんだろうなあとぼんやりと思ったのだった。初めて早稲田松竹にも行った。名画座って楽しいんだな〜ラインナップをチェックするのわくわくしますね。今年は邦画ばかりだったので、洋画にも目を向けたい。

庵野秀明監督『シン・ゴジラ』、新海誠監督『君の名は。』と世間を賑わせた作品も素直に楽しめて嬉しい気持ち。そして、今年を語る上で欠かせないのは片渕須直監督『この世界の片隅に』。映画が素晴らしかったのはいうまでもなく、上映館が拡大してテレビでも取り上げられる頻度が増えている状況もとても嬉しくなりますね。先日のNHKあさイチ』に出演したのんちゃんの生「あちゃー」、今年のぶっちぎりMVPでした。

 

テレビ

トットてれび DVD-BOX

毎週楽しみに見ていたテレビドラマは『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(坂本裕二脚本)、『ちかえもん』(藤本有紀脚本)、『トットてれび』(中園ミホ脚本)、『ゆとりですがなにか』(宮藤官九郎脚本)、『重版出来!』(野木亜紀子脚本)と上半期に集中していた。NHKのドラマは挑戦的かつ丁寧で見応えがある。『いつ恋』は正直なところ中盤や最終話の展開には疑問が残るけれど、1話の手紙や2話でのすれ違い、7話のレシートのシーンがあるだけでも大好きだと思えるドラマでありました。来年1月から始まる坂本裕二の新作『カルテット』に期待が高まりすぎて、いざ始まって自分の期待と温度差が生じるのが怖いので、もう考えるのやめるようにしてます。CMを観る限りこれも杞憂に終わりそう。何より、松たか子満島ひかり高橋一生松田龍平ってキャストの並び見るだけで幸せな気持ちになっちゃう。何度でも言いたい、松たか子満島ひかり高橋一生松田龍平

バラエティ番組では『ゴッドタン』が「劇団ひとりキングコング西野の仲直りフレンドパーク」「エロ格好付け芸人ドッキリ(小島みなみ)」とめちゃくちゃにソリッドな企画を立て続けに放送していて最高でした。キングコング西野超良い奴。ゴッドタンはMC陣がよぼよぼになっても続いてて欲しい。『おぎやはぎのメガネびいき』での矢作さんの結婚発表は聞いてて興奮しました。

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佐久間プロデューサーの番組はオードリー若林がMCの『ご本、出しときますね?』と千鳥の冠番組『キングちゃん』も面白くて毎週楽しく観ていた。上のスクショは『キングちゃん ドラマチックハートブレイク王』での好きなシーンです。どちらも最初から放送クールが決まっていたようで終了したのが残念だけども、年始にスペシャルがあるようでとても楽しみだ。『キングちゃん』の名作「又吉プロデュース王」では作家先生の扱いから抜け出そう!という趣旨があったけども、これって『ご本、出しときますね?』での作家のパーソナルかつラフな側面を引き出していた点とも少し通ずるスタンスだなと思いました。

それから今年は『芸人キャノンボール』や復活した『クイズ☆スター名鑑』、相変わらず面白い『水曜日のダウンタウン』と藤井健太郎プロデューサーの番組も充実していた。内容はもちろん、編集や美術、音楽の格好良さも唯一無二だ。昨日放送された毎年恒例の『クイズ正解は一年後』も面白かったな〜

他には『ドキュメント72時間』『クレイジージャーニー』『そんなバカなマン』なんかを毎週楽しみにしている。こうして好きなテレビ番組を羅列していると、小学校3年生の頃にテレビが好きな友達と3人くらいでそれぞれが毎週観ている番組を書き出したリストを作っていたことを思い出した。当時何を観ていたかとかどんな話をしたかはあまり思い出せないけども、結構幸せな記憶。

 

音楽

Sultry Night Slow

Sultry Night Slow

  • VIDEOTAPEMUSIC
  • ポップ
  • ¥250

一番ライブに足を運んだのはVIDEOTAPEMUSIC。先日のワンマンライブは間違いなく今年のベストアクト!夏フェスの類には行かなかったので完成形を見ることはできなかったのだけど、6月にWWWで行われたVIDEOTAPEMUSIC主催「Sultry Night Slow」でのcero とのジョイントライブも素晴らしかったなあ。あと、立川ギャラリーセプチマでのNRQ、泊との対バン「棕櫚の庭」も印象に残っている。

超ライブ

今年はじめて見たフジロッ久(仮)にも打ちのめされた。アルバム『超ライブ』には何度も励まされている。4月のライブと6月の「CRYまっくすド平日」インストアにしか足を運べずにいるうちに、ろっきーさんに続いて元希さんも脱退してしまった。

Blue Forest

アーバンギャルドの歌姫よこたんこと浜崎容子のソロアルバム『Blue Forest』のリリースがあったことも大きい。前作やこれまでのバンドでのイメージを覆すヴィジュアルや歌詞にドキドキした。やはり、「ANGEL SUFFOCATION」の詞の提供、『粋な夜電波』へのゲスト出演、ライブでの共演と菊地成孔とのコラボレーションにはテンションが上がったなあ。

街の報せ

アルバム購入特典として発表されていたものを入手しそびれていたので、cero 『街の報せ』のリリースも嬉しい。12月に新木場スタジオコーストで見た「MODERN STEP TOUR」での新編成がそれはもう格好良くて、シングルに収録されている「よきせぬ」もライブでのアレンジが進化しまくっていたので、変わり続けるcero の今後が楽しみだ。生まれ変わったらcero みたいな男の子になりたい。

他にも婦人倶楽部『フジンカラー』、鶴岡龍とマグネティックス『LUVRAW』を愛聴しています。それから、Only Love Hurts a.k.a. 面影ラッキーホールのワンマンを2回も見れたことも嬉しかったな〜最高最高格好良い。

 

美術展

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アツコバルーでの『神は局部に宿る 都築響一 presents エロトピア・ジャパン』。秘宝館、ラブホテル、イメクラ、ラブドールを凝縮した濃密空間。私はこのバリエーション豊かな日本エロ文化が一番好き。

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府中市美術館での『立石鐵臣展』。偶然ポスターを見るまでこの画家のことも知らなかったのですが、今年見た中で断トツに好きな作品です。

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川崎岡本太郎美術館での『鉄道美術館』。入り組んだ電車の路線をチューブで表現した栗山貴嗣《東京動脈》をはじめ、インスタレーション中心の楽しい展示。鉄道のヘッドマークや過去のポスターが沢山みれたのも嬉しい。岡本太郎美術館ははじめて訪れたのですが、常設展も凝っていてとても面白かったな〜また行きたい。

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他にも、『旅と芸術展』で見たポール・デルヴォー《森》や、『水-神秘のかたち-』での宇賀神像、『黒田清輝展』でのラファエル・コラン《フロレアル》、『ポンピドゥーセンター傑作展』でのフルリ=ジョゼフ・クレパン《寺院》、『ダリ展』での「ガラの晩餐」などなどが印象に残っている。

 

おざなりではありましたが、最後はカメラロールに眠っているお気に入りの写真をベタベタと貼って締めくくりたいと思います。今年も色々なものを観て聞いて読んで、大変楽しい一年でした。「よいお年を」ってどういうテンションで言うのが正解なのか分からないまま今年も年を越します。

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長崎ランタンパレード

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梅屋敷

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土木展

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四日市コンビナート

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向ヶ丘遊園駅周辺

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都橋商店街

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野毛

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としまえん

 

エレ片 IN 両国国技館

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2016年12月28日、ついにこの日がやってきた。TBSラジオエレ片のコント太郎』10周年を記念して開催されたこの大大大イベント、エレ片IN両国国技館!2月末にエレ片コントライブ『コントの人10』の終演後に告知されてからというもの、両国国技館という未曾有のキャパシティ、徐々に明らかになるイベント内容とチケットの売れ行きに期待と不安を抱えながらこの日を待ちわびていました。いざ蓋を開けてみればアリーナ席と升席はまあほぼ満員と言っていいのではないかという客入りで、普段のコントライブの会場では味わえない雰囲気に胸が踊るではありませんか! 

開演までの1時間は田中知之(FPM)によるDJと共に歴代のコントの人オープニング映像が流れていました。そして18時、『エレ片のコント太郎』のオープニングであるFPM「paparuwa」に乗せてエレ片の三人が登場。客席を見渡しての「埋まってる!」という景気の良い一声で明るいスタートを切りました。最初の企画はゲストに番組に縁の深い大槻ケンヂとゲッターズ飯田を招いて10年の歴史を振り返るというもの。DVD未収録のVTR「崖の上のジン」「パロディCM(片桐さんによる広瀬すず、今立さんによるダチクン・ビーバー)」、大槻さんリクエストの「今立泥酔ツッコミ(桃太郎公園)」、伝説のやついおもらし事件の写真などで歴史を振り返ります。そしてラジオでも予告されていた衝撃の「片桐キャンプ事件」と、TBSから直々にお叱りを受けタブーと化していた「アネロス放送」のVTRでは異様な空気が国技館に充満するというなかなか出来ない体験をしました。コントライブの幕間の映像のためにキャンプへ行った際の、片桐さんの不機嫌とガチギレ。買い出しに行かされ、帰ってくると寝ていたエレキや作家陣に腹を立て、作家ゴウヒデキの腹を蹴りつけるという衝撃の映像では笑いとドン引きが巻き起こる。ずっと映像を流すことを渋っていた片桐さん、今から流れるという段になったときに衣装のタキシードに付いていたバレッタをいじけたようにイジっていて、国技館でも変わらぬカタギリ感を発揮しまくっていました。「アネロス放送」でのこれがラジオで放送されたことが今となっては信じられない片桐さんの音声には、近頃地方のFMにハマってエレ片を聞かなくなっていたという大槻さんも「また聞くよ!」と言うほど驚かれてましたね。それから大槻さん、「崖の上のジン」で映った片桐さん所蔵のエロマンガに対して「片桐くんはエロマンガの絵柄にあまりこだわらないんだね」とコメントしたり、「アネロス放送」では片桐さんの着ていたキング・クリムゾンのTシャツに「これ着たままやったの?」と独特の反応をされていてすごく良かった。こうしてエレ片の歴史を振り返ってみると、やついさんのおもらし事件や宇宙液、今立さんの泥酔や女性遍歴とそれぞれに強烈かつシモ寄り多すぎなエピソードがありつつ、やはり片桐さんの人間味溢れすぎなエピソードの数々とそれをゲラゲラ笑いながら楽しみさらなる臭みを引き出すエレキコミックの関係性が「エレ片」なんだなあと改めて思う。この振り返り企画はこれだけでも何回かイベントが出来る情報量なので、オールナイトなんかでやったらとても楽しそうだなあと思いました。

休憩中にはグッズ宣伝のための「恋ダンス」映像が!これまでのコントでの女装も登場し、動きがバタバタしていてとっても可愛かった。座布団を二枚持たされた片桐さん、めちゃくちゃ踊りにくそう。そして、エレキコミック発表会『金星!!』で流された「今立プロポーズ大作戦」のVTRに、先日のスペシャルウィーク「シン・結コント太郎」で発覚した真実(飲み会で知り合ったとされていた→本当はFacebookのファンからのメッセに返信した)を加えたバージョンの映像が流れ休憩が終わると、いよいよ今立さん・まいさんの結婚式へ。

お二人の選曲という布施明君は薔薇より美しい」に乗せてアリーナ席後方の扉から新郎新婦の入場。私はちょうど通路側の席だったのでお二人の姿を間近で見ることができたのですが、シルバーのタキシードの今立さんと真っ白なウェディングドレスのまいさんを見ていたらなんだかグッときてしまった。ラジオのリスナーが集まって今立さんの人生の門出を見守るの、めちゃくちゃ良いな。ドレスの裾を持って歩いた新婦友人の子ども達が「まいちゃん」「ご結婚」「おめでとう」と習字を掲げる微笑ましい一幕もあり、会場は一気に結婚式ムードに。壇上には司会のやついさんとおかっぱの片桐さんことアネロス牧師が登場し、コント仕立ての結婚式が執り行われました。指輪交換や誓いのキスだけでなく、なぜか牧師を相手に新婦の相撲(行司は作家の川尻さん)、岩下の新生姜ペンライトタワー挿入というエレ片らしさ。続いての披露宴は、トゥインクルコーポレーションの上田マネージャーによる挨拶でスタートしました。緊張からか信じられないほど噛みまくり、そもそも文章も破綻していて爆笑をかっさらっていく上田マネ。「ちゃんちゃんちゃんこ鍋、覚えていますか?今夜は、まいちゃんちゃんちゃんちゃんちゃんこ.....」と最後のキメまでアクロバティックに噛みまくる。最高でした。続いてはラジオやトークイベントで共演しているシルクラボ所属のエロメン一徹・月野帯人による挨拶。持ち前の品の良さで爽やかにポケットTENGAを新婦に手渡す一徹さんと、おもむろにズボンを下ろして「3Pしてください」と頭を下げる月野さんのはちゃめちゃさが楽しい。氏神一番に生声で「OEDO」を歌わせたかと思えば、峯田和伸大槻ケンヂが弾き語りで歌う銀杏BOYZ「BABY BABY」という素晴らしすぎる爆弾を落とすのもエレ片だからできること。そして何といっても最高だったのは片桐さんのスピーチ!「BABY BABY」を聞きながら既に涙ぐみ、号泣しながら読まれたスピーチには片桐さんと今立さん、そしてエレ片の青春が詰まっていた。学生時代、毎週のように片桐さんのアパートで遊んでいたことや、今立のツッコミを受けていると自分が面白い人間になったんじゃないと思ってしまうこと、そして今立さんのツッコミを受け続けている片桐さんからの「相手を上から見下すのではなく、面白いとこを見つけて楽しむことができる優しさ」という最大の賛辞。飲み過ぎる今立さんを心配し、「格好良くいてほしい」と言う片桐さん。今立さん特有の気付いたら一人でいなくなっている行動へのアドバイス。片桐さんの愛とユーモアに溢れたスピーチは間違いなくこのイベントのハイライトでしょう!今立さんももらい泣きする中で相方のやついさんは司会に徹しているのもまた彼ららしくて、エレ片三人の関係性に胸が熱くなりました。ご親族も来ている中、こんなめちゃくちゃな結婚式で大丈夫なのだろうか...という不安を一瞬にして吹き飛ばすまいさんのスピーチもとても良かったです。手紙が出てくるかと思いきや原稿はなんとノート、言いたいことは伝わってくるけど何しろおかしい言葉のチョイス。今立さんが結婚を決意するほど惚れ込むのも納得のキャラクターがにじみ出ていて、祝福の気持ちを込めて力いっぱいの拍手を送りました。末永くお幸せに!

多幸感溢れる結婚式の次はコントコーナー。転換中にはマギー、クリープハイプ尾崎世界観森脇健児鴻上尚史甲本ヒロト笑福亭鶴瓶と番組やメンバーに縁のある人々からのメッセージが流れました。なぜか銭湯から出てきた森脇さん最高っす。甲本ヒロトはコメントを終えたかと思うともう一度カメラを戻して「さっき言い忘れたんですけど、「RIKACOのメス」と「デンジャラ~ス」が好きです。」とコメントしていて、めっちゃ聞いてる!!と嬉しくなりました。スーパースターなのに目線が完全にリスナーなのがもうめっちゃ格好良い。またゲストに来て欲しい。

レキシの池ちゃんを迎えたコントでは、「シトラスラベンダー」にジョイントした歌ネタを披露。「マツジュン」「ちんこに見えちゃう」「サタデーナイト」やっぱり名曲です。「はにわに見えちゃう」と「ガンダムに見えちゃう」もグダグダで最高。レキシの「狩りから稲作へと」では会場が湧きましたね。あと池ちゃんが三つ編みを付けてセーラー服を着ると超ニッチェでした。

Negicco、峯田さん、池ちゃんと全員でのコントは、片桐さんが執拗にマイケル・ジャクソンに間違われる「BAD」を披露。エレキとともに中学生に扮し片桐さんにちょっかいをかける峯田さん、新幹線の座席のセットに思い切りダイブして大回転&激突&背もたれ破壊をキメていて超最高でした。エレ片のコントでお馴染みの可愛らしいダミーちんこを出しながらマジでコケる姿にも大いに笑った。あと学ランが似合いすぎててセクシー。セーラー服のNegiccoちゃんも片桐さんに勢いの良い蹴りをキメ、ステージ裏からやついさんの笑い声が響く一幕も。「99.9?」「知らね」「コバケンなら知ってる」と声を合わせる姿がなんともキュート。池ちゃんは赤い革ジャンでもうひとりのマイケルを名演。エレキ、峯田さん、NegiccoがBADのイントロを歌いながら片桐さんを挑発するシーン、可愛すぎました。わちゃわちゃ感がたまらないコントが見れるのもこういうイベントならではでとても楽しかった。

そしていよいよ、新メンバーの加入が告知されていた危険日チャレンジガールズ!のライブコーナーへ。ライブ前には一番最初のレコーディングにやついさんが一時間遅刻したときの映像や、「純情エクスタシィ」のPV・アー写撮影の模様が。遅刻しているのにドラクエ9を見せびらかし、片桐さんとゲームソフト奪取ゲームしている映像、延々と観ていたい。アー写撮影での上田マネとの即興デリヘルコントも良かったですね。

ライブではNegiccoと共に「純情エクスタシィ」と新曲「ONE NIGHT SENSATION!」を披露。立ち位置からモタつき、徐々に口パクもままならなくなっているキケチャレのおじさんたち、もはや愛おしい。そしてキケチャレとコラボを続けてくれるNegiccoちゃんが考案した「ONE NIGHT SENSATION!」の振り付けも優しさに溢れていました。Negiccoとのライブが終わり、遂に新メンバーの発表へ。カウントダウンとともに開いた幕の向こうにいたのは、まさかまさかの…手島優!女装じゃないのかー!どことなく女装っぽいけど!これまでにエレキのネタに名前が登場したりラジオで爆乳ヤンキーが話題になったりしていたので言われてみればの人選。爆乳ヤンキーでのスイカ早食いや『ゴッドタン』での勇姿を見る限り、キケチャレに上手くハマってくれるのではないでしょうか。キケチャレネームは何になるのだろう。手島優を新メンバーに迎えた危険日チャレンガールズ!寿として2月にメジャーデビューすることも発表され、今後の展望が感じられて楽しみです。キケチャレはNegiccoとの曲やSmall Boysとの「クラクラッ・シンデレラ」などやたらといい曲が揃っているので、売れまくって欲しい。「Funky Fun!!!」でゲストも再び登壇し宴もたけなわ。氏神一番の地獄のようなスベりも含めて大団円を迎えたエレ片IN両国国技館。最後はやはり番組のコーナーから生まれ、コントの人のエンディングを飾ってきた峯田和伸による「キラキラいいにおい」の弾き語りでお開きとなりました。

両国国技館という1万人規模(ライブのセットでは約6千人)の会場で相も変わらずくだらないトークとコントを繰り広げるエレ片はとにかく最高でありました。ラジオともコントライブとも違う賑やかさで後にも先にもないお祭り、こんなことできるのエレ片しかいないよ、という気持ちです。一生続いてくれ〜

VIDEOTAPEMUSIC one man show "Her Favorite Moments"

 

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12月10日、渋谷WWWで開催されたVIDEOTAPEMUSIC初となるワンマンライブ"Her Favorite Moments"。会場に入るとステージには大きなスクリーンに加えて大小6台のブラウン管テレビにHer Favorite Momentsのネオンサインが光り、ミラーボールをカラフルな照明が照らしている。異国のクラブパーティにでも迷い込んだかのような空間だ。19時になるとスクリーンには映画が始まる前の予告編のように7inch『Kung-fu Mambo』、坂本慎太郎との12inch『バンコクの夜』、配信シングル『Sultry Night Slow』、アルバム『世界各国の夜』のコマーシャルが次々と流れ、本編の開始を告げるように再びHer Favorite Momentsのネオンが現れるとVIDEOTAPEMUSICとバンドメンバーが登場した。フライヤーに描かれた交差点に人や車が往来する映像とともに演奏がはじまり、レトロスペクティブなネオン瞬く交差点はいつしか現在の渋谷スクランブル交差点へと変わっていく。カメラはセンター街の雑踏を抜け、見覚えのある階段を登っていく。辿り着いたのはまさしく今日の会場である渋谷WWW。なんと完璧なオープニングだろう!これから映画が始まるというときのあの得も言われぬ高揚感。映像と演奏が混ざり合い、いまここにしか無い空間が作り上げられていく様には興奮を禁じ得ない。あの素晴らしきオープニングを忘れずにいるために言葉で書いてみるものの、素晴らしさの微塵も表現できないのがもどかしい。しかし、拙くとも書かずにはいられぬほどに素晴らしいワンマンライブだったのだ。

 

オープニングの高揚感を損なうことなく、ライブは様々な表情を見せながら展開していく。ライブではお馴染みのメンバーである松下源(パーカッション)、高橋一(トランペット)、増田薫(バリトンサックス)、潮田雄一(ギター)にDorian(キーボード)を加えた編成はメロディアスでより一層ゴージャスな雰囲気だ。新曲「密林の悪魔」は低音と歪んだギターが格好良いキラーチューン。ハトヤ、密林、ハワイ、団地などをテーマにした楽曲と映像に身を委ねていると、今が12月であることも、ここが渋谷であることも忘れてしまいそうになる。


VIDEOTAPEMUSIC / Sultry Night Slow【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

ソロで演奏された「Pianican night club」と「Her favorite song」では時空さえ越えて心地の良い悪夢のような音と映像の世界が繰り広げられる。映像も終わり真っ暗になった会場にピアニカの音だけが響き渡った「Pianican night club」の最後も忘れがたい。ときに、CD-Rなどでリリースされた過去の曲を再録したアルバムを出してはくれないかしら。


VIDEOTAPEMUSIC「PIANICAN NIGHT CLUB」

泊の山田参助を迎えての「青いドレスで」(泊)、「Hong Kong Night View」も素晴らしかった。ブラウンの中折れ帽、チェックのシャツに着物の着流しという粋なスタイルの参助さんがなんとも素敵だ。サンプリングを用いない生演奏をバックに歌われた「青いドレスで」は楽器のように声を操る参助さんのボーカルが豊かに響きあう。

「Kung-Fu Mambo」や新曲「熱い砂のルンバ」「Slumber Party Girl’s Diary」と畳み掛けるような終盤に演奏された今回のライブタイトルを冠した新曲「Her Favorite Moments」は新たなステージを感じさせる一曲だった。「これは2016年の福生を捉えた映像である。」というオリジナルのナレーションが付けられた福生の映像。街並みに続いて映し出されるのは基地のお祭りで踊る外国の少女たち。


VIDEOTAPEMUSIC One Man Show "Her Favorite Moments" Trailer

この光景については2016年のベストにRihanna「Work ft.Deake」を挙げたこの記事で語られている。

fnmnl.tv

 今年の世界的なヒットであることは間違いないと思うのだけど、それ以上に個人的な体験として、今年9月に福生横田基地の祭の片隅でこの曲を音の割れた安物のコンポで流しながら合唱し踊る十代半ばくらいのアメリカ人の少女達の楽しそうな姿が記憶に焼き付いている。海のむこうのグローバルなヒット曲が、東京郊外のローカルな風景の中で美しく鳴っていた瞬間。

 2016年の映像に乗せてナレーションは「当時の曲を聞いてみましょう。VIDEOTAPEMUSICでHer Favorite Moments」と曲を紹介する。つまり、未来に置かれた視点から現在を見ているということである。VIDEOTAPEMUSICがこれまでサンプリングしてきた過去の映像群に現在のものがオーバーラップし、更にその先から俯瞰した視点の登場。これまでも単なるノスタルジーやエキゾな心地よさのみに陥いるのではなく、かつてどこかで鳴っていた音楽が、再び再生され現在と繋がるというロマンやその揺るぎない事実に自覚的であるところが魅力のひとつであったが、ここへきてより一層、過去・現在・未来へのアプローチが可視化されてきたように思う。VIDEOTAPEMUSICの音楽と映像に宿るノスタルジーには、その殆どが初めて見聞きするもののはずがどこか知っているような気にさせられる普遍性があり、これらは「誰かにとっての何処か/何時か」なのだという実感が伴う。映画からのサンプリングとリフレインが巧みであることは言うまでもなく、その一瞬一瞬に特別で親密な空気が流れているのだ。これは彼の対象への眼差しでもあるのだろう。

更に面白いのは極私的な事柄がライブという体験によって共有されること。アンコールで演奏された「煙突」に関するエピソードが語られたのだが、この曲のメロディは当時PHSに打ち込んだものを布団に押し付けながら流して録音し、低音を拾ったのだという。また、今年の7月に行われた立川のギャラリーセプチマでのライブ『棕櫚の庭』では、映像に登場する煙突は実家から撮影したもので、多摩モノレールから見えると話していた。勿論これらのエピソードを知らなくても「煙突」という曲は素敵なのだけど、この曲を通して当時のVIDEOさんに接続したような気分になるのも楽しみ方のひとつだと思うのだ。

先述の「Her Favorite Moments」に映る彼女たちも、彼女たちの人生の中ではほんの一瞬の光景に過ぎないのだけど、こうしてVIDEOTAPEMUSICが捉えたことで、私はあの子たちに接続することができた。また、ライブ中には気付かなかったのだけども、構図から色使いまで全てがパーフェクトなフライヤーを眺めていると、交差点の建物に「三千里」の文字があることに気付く。ということは、この交差点は渋谷ということだ。私たちの知らない過去の渋谷と、過去の人たちの知らない現在の渋谷が接続する。時代、季節、場所、時空、過去・現在・未来の境界をシャッフルし混線させることで出会うどこかのだれかのいつかの瞬間。そして演奏と映像によってその瞬間を立ち上げるライブという表現空間もまた、その瞬間にしか存在しない刹那的なものだ。半永久的な映像記録と刹那的なライブという相反する媒体。永遠の一瞬に身を委ね、今夜は踊ろうではないか。


VIDEOTAPEMUSIC/世界各国の夜 (Digest)

 

素晴らしいワンマンライブの興奮を引きずってごちゃごちゃと書き散らしてはみたが、だんだん訳が分からなくなってしまった。初めてライブを見たときから感じている、都築響一『ROADSIDE JAPAN』とそのフィーリングを受け継ぐ雑誌『ワンダーJAPAN』や『八画文化会館』周辺のカルチャーとの親和性についてもいつかまとめてみたい。支離滅裂の文章を通して結局何が言いたいかというと、VIDEOTAPEMUSICは最高!大好き!ということです。新曲群もキラーチューン揃いで、既存の曲もフレーズや映像がアップデートされていて今後の展開が楽しみで仕方ない。本当に素晴らしいワンマンライブでした。

ちかごろは、

www.tbsradio.jp

9月末からTBSラジオで始まった『アルコ&ピースD.C.GARAGE』を聞いてみたら面白くてすっかりアルコ&ピースに夢中だ。平子さんのキャラクターが強い印象だったのですが、ラノベのコーナーの導入を聞いていると酒井さんも相当イカれてることが分かった。過去のオールナイトニッポンもこつこつと聞いているのですが、ちょっと今までに味わったことのない面白さで、こんなに面白いものを知らずにいたのか…とショックを受けている。「いかちい」「バカかっけえ」といった最高の酒井ボキャブラリーを使いたくてたまらない。ラジオ内で驚異のアマチュア新人として名前が出た漫才コンビ「まんじゅう大帝国」、そのネーミングセンスに心を掴まれGyaoM-1予選の漫才を見てみたら期待を軽々と飛び越える面白さ。他のネタも見たいな〜

 

11月11日

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横浜美術館にて『BODY/PLAY/POLITICS』を鑑賞。石川竜一の写真群に見入る。壁に被写体に関する文章がチョークで書かれた《小さいおじさん》や《グッピー》の見応えはもちろん、街の人々をスナップした写真の生々しさが尋常でない。渋谷駅前のギャルの太もものガーゼや、下北沢ヴィレヴァン前の女の子の白いレースのタイツから透けて見える絆創膏。そういったものが意図して写されているかは定かではないが、はっきりとピントを合わせて撮られた人物から立ち上る生々しい「生」と「身体」が焼きついて離れない。

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みなとみらい。

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STスポットでロロ『すれちがう、渡り廊下の距離って』を観劇。今回もとても良かった。 10分間のセッティングのときから不思議な存在感を放っていた大村わたるさんが演じた点滅、最高だったなー点滅、太郎、楽がラップでだんだん盛り上がるところ永遠に見ていたかったです。

vanity73.hatenablog.com

 

11月12日

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本多劇場阿佐ヶ谷スパイダース『はたらくおとこ』を観劇。それぞれが正しいと思って選択したことが全て間違っている。これ以上無いほどの最悪へと向かっていくさまにゾクゾクする。あらすじはそれはもう悲惨なんだけども、コメディとしての精度がとても高い。ブラックコメディともまた違う、やるせなさが漂う戯曲とそれを体現する役者陣の素晴らしさよ。

 


映画『友だちのパパが好き』予告編

 下北沢トリウッドで山内ケンジ監督『友だちのパパが好き』を鑑賞。喋る人物全員を画面内に収めてワンカットで会話を撮っているのが印象的だった。言葉尻をつかまえて相手を追求する会話のいやらしさや息苦しさが画面にも充満している。しみじみとおかしくて面白かったなー自分でお腹を刺すシーンで笑ってしまうとは。それから、年相応にくたびれているけど長い付き合いの愛人がいて、娘と同い年の女の子に言い寄られて結構簡単に手を出しちゃう軽薄な男を演じる吹越満の説得力が凄い。

上映後に舞台挨拶があったのですが、劇中では少しツンとして疲れがにじむ妻を演じていた石橋けいさんが素ではとても綺麗で華のある方で、月並みに「女優ってすごいな」と思いました。あと吹越さんバカかっけえ。

 

11月16日

www.nhk.or.jp

2019年の大河ドラマ宮藤官九郎が書く、という大ニュースが飛び込んできた。ラジオや週刊文春の連載でリオオリンピックへ行った話をしていたので何かしらの形で関わるのだろうと思ってはいたけれど、まさかオリンピックをテーマにした大河ドラマとは!クドカン脚本の約40分のドラマを一年間、毎週観ることができると考えただけでクラクラする。ドラマ放送時は視聴率のことなどで意気消沈する様子をラジオで聞いているので「だ…大丈夫だろうか」とか、大河を書くということは舞台はしばらくお休みかしらという気持ちにもなるのだけど、演出に井上剛というのは非常に心強い。脚本・宮藤官九郎、演出・井上剛、制作統括・訓覇圭とは言うまでもなく『あまちゃん』の布陣な訳で、そりゃあもう色んな期待が膨らんでしまうな。次から次へとこの人が出たら良いな〜という役者さんが浮かぶのだけど、特に『ごめんね青春!』で宮藤さん脚本、『トットてれび』で井上さん演出を経験した満島ひかりに出て欲しい。あとのんちゃん。のんちゃん。スポーツ選手なら森山未來も良いなあ。宮藤作品お馴染みの人だけじゃなくて、新しい人にも沢山出て欲しい。ああ~2年先にも楽しみが待っているなんて、幸せだ。2020年の東京オリンピックは本当にできるのか?という感じだけども。

 


『溺れるナイフ』本予告

 山戸結希監督『溺れるナイフ』を鑑賞。前触れなく走り出す夏芽(小松菜奈)とコウ(菅田将暉)の痛々しいまでの衝突。二人が交わす視線は火花が散っているかのごとく激しい。互いのもつ「特別なもの」に憧れと嫉妬をかき乱される様が、赤と青の鮮烈なコントラスト、追いかける・すれ違うといった運動性を通してこれでもかと画面に叩きつけられているかのようだ。「画」そのものに気を当てられるエネルギーがあって、凄いもん観ちゃったなーという感じだ。あと、『ごめんね青春!』の海老沢役を好演していた重岡大毅演じる大友が最高で「青春ってのはお前のことだよ!」と背中を叩きたい気分になった。カラオケのシーン良かったな。あとTシャツが絶妙。これに関して、スタイリスト伊賀大介のインタビューも面白かった。

realsound.jp

 

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シアタートラムにてKERA・MAP『キネマと恋人』を観劇。KERA作品でお馴染みの小野寺修二による振付と上田大樹による映像で構成されたオープニングや場面転換の美しさに冒頭からため息がもれる。あのオープニングだけでも見に来て良かったと思うくらいの満足度。ウディ・アレンカイロの紫のバラ』をベースに展開される、映画を愛する女性・ハルコ(緒川たまき)と映画から出てきた男・虎蔵とその俳優・高木高介(妻夫木聡)のロマンチック・コメディー。ちょっと抜けてるキャラクターの緒川たまきがもう、可愛くて可愛くて。架空の方言を話すのですが、それもまた良い。「ごめんちゃい」ってのが最高にキュート!演劇にしては場面転換が多く、スクリーンの中や、虎蔵と高木が対面する場面でのケレン味あるアイデアなど見応え充分でありました。最後の高木の表情も、映画を観て笑うハルコの表情も、知っているのは私たち観客だけなのだと思うと切なさもひとしお。

 

11月17日

ユーロスペースにて片渕須直監督『この世界の片隅に』を鑑賞。もう、素晴らしかったです。私としては「のん」こと能年玲奈ちゃんの復帰作という意識が強くて、もっと純粋な心持ちで観るべき映画かも知れないなあと思いながら見始めたのですが、映画が始まると色んな思いが洗い流されてただただ『この世界の片隅に』導かれる。優しく力強い。

vanity73.hatenablog.com

 

11月18日

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世田谷パブリックシアターにて『遠野物語 奇ッ怪・其ノ参』を観劇。遠野物語を軽く予習しておいた方が良いかと思い図書館で色々と見ていたのだけども、水木しげる遠野物語を描いた漫画が読みやすくて面白かった。 水木しげるの描く座敷わらしがまた可愛いんだな〜

水木しげるの遠野物語 (ビッグコミックススペシャル)

水木しげるの遠野物語 (ビッグコミックススペシャル)

 

遠野物語岩手県遠野に伝わる神様や理屈では説明のつかない出来事を集めたもので、これといったオチがなくつかみどころがない話が多いということを前提に観ることが出来たので予習しておいて正解だったな。この芝居では、方言の使用や迷信といった科学的根拠のないものの記述・出版が禁止された世界を舞台に、語りと芝居の場面をシームレスに行き来する。遠野物語の伝承と、それが人為的なもの、色々な事情からそうすることしかできなかったものでもあるという側面を描き、境界を曖昧にしていく。「物語る」ということの必要性を浮き彫りにしているのは伝わってくるのだけど、最後のイノウエの失踪した妻の話やときおり挟まれる感情的な演技がどうも取って付けたもののように感じられてしまった。そこを除けば、シームレスな場面転換や全体の構成はとても面白かった。そして「語り」がテーマなだけあって声(と発声)が抜群に良い役者さんが揃っていて見応え&聞き応えあり。

映画『この世界の片隅に』

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こうの史代の同名漫画を片渕須直が映画化した『この世界の片隅に』を観ました。私がこの作品を知ったきっかけは、「のん」と名前を改めた能年玲奈が主演声優をつとめるというニュースです。映画が始まってすぐは、「ああ、のんちゃんの声だ」と感じ入っていたのですが、小さなすずさんが海苔を背負う仕草や、かじかむ手に息を吐き鉛筆を削る仕草など、ひとつひとつの動作が丁寧に描かれている姿を観ているうちに、聞こえてくる声はすずさんの声以外の何物でもなくなっていった。堅実に描かれた広島の街並みに、すずさんという人物が確かに存在しているのだ。井戸で水を汲む、野草を摘んでご飯を作る、着物をもんぺに作りかえる、畑から軍艦を眺める、道に迷う、絵を描く、周作さんと口づけをする、喧嘩をする、防空壕へ避難する...すべてのことが同一線上に並んでいる。ぼーっとしているすずさんがバケツを人にぶつけまくったり、お砂糖を蟻から守ろうとして水に沈めちゃったり、ハゲがばれないように周作さんの手を振り払ったりする日常の一幕がどれもチャーミングで愛おしい。「戦時下の人々」を描いているというよりも、ひとりひとりの暮らしに戦争が訪れ、色々なものが失われながらも暮らしを守り続ける様子を、綿密な時代考証のうえで堅実に描ききっている映画だと思いました。「戦時下の人々」にはひとりひとりに名前があり、暮らしがあるということを、はっきりとした感覚で得ることができる。黒い布を外したランプから漏れる家々の灯りの風景も忘れがたいシーンのひとつだ。

そして、すずさんが右手を動かすと線が引かれ、筆を置けば色がつくという一連のアニメーションもそれだけで素晴らしく、単純に映像を観るよろこびが詰まった映画でもある。色の付いた煙と絵の具を打ち付ける筆が混ざり合う空襲のシーンや、すずさんが右手と晴美さんを失った瞬間のアニメーションは胸に迫るものがあった。辛くて仕方がないのだけど、暮らしは続いて、そこには笑いも生まれるという感慨にそっと寄り添うのがコトリンゴの歌う「悲しくてやりきれない」だ。オープニングで流れるのだけど、観終わったあとに聞き返すと、これほど映画のムードに寄り添う音楽もないな、というくらい素晴らしい。

一本の映画を観たという以上にすずさんの暮らしを体験したという感覚に近く、数々のシーンを思い返すとなんだかずっと前から知っていたような気分にさえなる。呉の街を、あの人たちのことを私は知っている。なんて幸福な体験だろうと思う。私は原作を読まずにストーリーを知らない状態で観たので、後半の展開に涙が止まらなくなってしまって、見逃している細かい箇所が山ほどありそうなのでまた観に行きたい。好きなシーンやすずさんを演じたのんちゃんの声のここが最高、みたいなのも沢山あるんですけど、ひとつ挙げるならば、おばあちゃんの家で天井から現れた子のためにすいかを貰ってくるときの小声での「おばあちゃーん」でしょうか。「あちゃー」といったおっとりした場面から、強い意思を感じさせる場面まで、どこを取っても素晴らしくてのんちゃんはやっぱり凄い女優さんだと胸がいっぱいになりました。のんちゃんが主演じゃなかったら、私はこの映画を観ないままだったかも知れない。そう思うとぞっとする。

 

鑑賞後すぐに原作の漫画を購入して読みました。前述のすずさんが海苔を背負うシーンなど、漫画でも丁寧に描かれた動作がアニメーションになっていたのだなあという感動と同時に、とても自由な画面構成や筆触で描かれていることに驚く。なんというか、漫画全体がチャーミングで可愛らしい。映画関連のインタビューや記事でこうのさんが色々な方法・技法(紅や左手で描いた風景など)でこの漫画を描かれたことを知りました。楠公飯のシーンとかとても好きだ。映画ではリンさんとのエピソードはニュアンスは少し残しつつも大幅にカットされていて原作を読んでこれもまた驚いたのですが、確かに映画で描かれていたらキャパオーバーで受け止めきれなかったかも知れないな。沢山の注釈や参考文献が記載されていて重厚な読み応えがあるのだけれども、パラパラとめくって好きなところから読み返せるような親しみも持ち合わせていて、この先ずっと読んでいく漫画なんだろうなと思う。