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私事で恐縮です。

映画『愛の新世界』

愛の新世界(無修正完全版) [DVD]

ここ1、2年の間にNetflix、hulu、amazonプライムビデオなどの定額制動画配信サービスは一気に波及したように思う。私もいくつかトライアルで使用してその充実ぶりと便利さの虜になっている。もちろんレンタルビデオ店をうろついて借りてくるのも楽しいのだが、一覧性や品揃え、ワンクリックで再生される手軽さはあまりにも魅力的だ。もしつまらない作品や気分に合わない作品に当たってしまったとき、レンタルビデオだとなんだか途中で消すのがもったいないような気がするが、オンデマンドならワンクリックで消しても損はない。そういった環境で、知らなかった作品や自分ではあまり手に取らない作品に思いがけず出会うことができるのも嬉しい。そうして出会ったのが1994年公開の高橋伴明監督作品『愛の新世界』だ。

SMクラブの女王様をやりながら劇団員として舞台に立つレイ(鈴木砂羽)と、ホテトル嬢のアユミ(片岡礼子)の青春グラフィティ。島本慶荒木経惟の共著が原作となっており、作中には荒木経惟の撮影した鈴木砂羽の写真が大量に登場する。R指定のついたくっきりと写されるSMやホテトルのプレイシーンは、行為を詳細に撮っているのに不思議なほどにエロティックさを感じさせない。よく性風俗の描写に伴う悲愴感は皆無で、あっけらかんとしてとびきりチャーミングな彼女たちの姿も相まって清々しいほどだ。

見所のひとつにキャスト陣が挙げられる。レイの所属する劇団の主宰は松尾スズキ、劇団員には阿部サダヲ宮藤官九郎らが名を連ねており、プチ大人計画なのである。若かりし彼らがプールではしゃいだり、一緒に性病科にかかったりするシーンなど、この映画でしかお目にかかれまい。最後には公演シーンもあり。SMクラブのママに杉本彩(眉上ぱっつんのロングヘアーが最高に可愛い)、萩原流行大杉漣などはあられもない姿でMの客を演じている。ホテトルお付きのヤクザ・哀川翔がサングラスのレンズをバリバリと食うシーンも最高です。

80〜90年代の渋谷の街並みと狂騒的な時代の鱗片をドライに写し取りながら、それらと共振するような彼女たちの明るくポジティブなパワーに溢れた青春を描いている。かつてのネオンや活気に溢れた街の景色、当時のファッションへの憧れを満たしてくれる映画でもあるのだ。中でも、夜遊びを終えたレイとアユミが、山崎ハコの歌う「今夜は踊ろう」をBGMに夜が白み始めた東京の街を疾走するシーンは何度も繰り返し見てしまうほどに大好きだ。「星降る街角」をカラオケで熱唱し、ナンパした男たちの車のハンドルを奪って爆走し、夜明けの海で全裸で戯れるレイとアユミの姿なんてもう「青春」以外の何物でもない。彼女たちの「今」を生きる、その迷いのない姿がこの上ない輝きを放ちフィルムに記憶されている。映画を締めくくるレイのナレーションに全てが詰まっているといってもいい。理屈抜きに大好きな映画です。

明日から、また祭りの準備が始まる。

明日から、また超面白いに決まってる。

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