ニュースクラップタウン

私事で恐縮です。

不可侵領域

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私のバイト先は、いつもいる場所の近くが吹き抜けになっていて雨が降ってくるとすぐに音でわかる。音が聞こえると大抵上を見上げて「雨ですね」「予報出てましたっけ?」「帰りまでに止むといいですね」なんて会話を交わすのだ。いつだったか、都内に雹が降った日はものすごい音がして思わず顔を見合わせて笑った。安全な室内にいるから、あまりにも強い音がするとちょっとわくわくしてしまう。外の様子は見えなくて、音だけで想像するのがいい。私はこの場所を心から気に入っている。

 

最近ずっと聞いている音楽。

鶴岡龍とマグネティックスの新作『甘夏 EP』、バリエーション豊かな4曲で永遠に聴いていられるくらい良い。とにかくメロウでラグジュアリーで、うだるような真夏の夜に聴きたい。10月のモーションブルー横浜でのライブも大変楽しみです。

めたもるシティ

めたもるシティ

 

TBSラジオ菊地成孔の粋な夜電波』で「第六感コンピューター」を聞いてからずっと楽しみにしていたけもののアルバムも聴けば聴くほど好きになる。やはり「第六感コンピューター」「tO→Kio」「Someone That Loves You」と菊地成孔がボーカル(tO→Kioは作詞も担当)で参加している曲がたまらないのですが、青羊さんのボーカルと作詞にもやられっぱなしだ。池野恋によるジャケットや長尾謙一郎『クリームソーダシティ』からの引用であろう「C.S.C.」にみられる漫画の世界観と、ひりひりしちゃうような乙女心の描写が混在していてとても面白い。キッチュなシンセや複雑な音の重なりが印象的なサウンドや「フィッシュ京子ちゃんのテーマB めたもVer」のナレーションには、乙女界の問題児ことフレネシにも通ずるセンスを感じる。勝手な想像だけれど、けものの青羊さんとフレネシさんは気が合いそうだな。


フレネシ「不良マネキン」PV

7月27日、曇り空で気温は30℃に満たずとても涼しい。動くと湿気で汗ばみはするものの、連日の猛暑と比べると天国のようだ。もう、夏終わったのかと思った。うっかり夏の気分で調子にのってクリームソーダとか冷製パスタを食べたらお腹をこわした。久しぶりに胃と腸が悲鳴をあげて顔が真っ青になったので冷たいものは当分食べない…

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浅草九劇にてナカゴー本公演『ていで』を観劇。3月にほりぶん『得て』で鎌田順也の作品を見て以来かつ初のナカゴー。客入れのときから役者たちが繰り返し台詞を喋っているし、はじまって早々幽霊があらすじ全部喋っちゃうのに、というか、だからこそ面白い。パズルのピースがはまっていくように本編で台詞が発話されていくのは快感ですらあった。散々言い尽くされたとは思いつつも言わずにはいられない金山寿甲の素晴らしさ。惚れてまうやろ。あれは。

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東京芸術劇場シアターイーストにてノゾエ征爾演出『気づかいルーシー』を観劇。岸井ゆきのちゃんが本当に絵本から飛び出てきたようにキュート。頭の先から指の先までルーシーだった。栗原類の王子もとても良くて、ルーシーとのバランスが完璧だ。松尾スズキがインタビューでよく話している「神様ノイローゼ」(子供のころ自分の行動はすべて神様に決められていると思い、神様にも予想できないような動きをしてやろうと奇妙な身振り手振りを繰り返していた)話がとても好きなのですが、栗原類のぬるっとした動きや表情は松尾さんに通ずるものがあると感じた。

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8月3日、ザ・スズナリにて赤堀雅秋作・演出『鳥の名前』を観劇。当事者たちには預かり知らないところでうごめく「因果」の話。女の妄想癖も、痴漢冤罪も、理不尽な暴力も、すべては見えないところで関与しあい繋がっているという果てのない絶望と希望。色々なことを考えさせられてとても後に残る作品でした。面白かった。新井浩文荒川良々、水澤紳吾、山本浩司とダメ男を演じたらピカイチみたいな役者が揃っていたのできっとそういう話なんだろうという予想をしていたら、ダメはダメなんだけれどそれぞれに必死でみんな生きてて、最後には登場人物たちが愛おしくなる感触もあって良かった。自分ではどうしようもない渦の中、憮然と立っている新井浩文の役はとても象徴的だったし、その存在の仕方が救いのようにも感じられる。f:id:Vanity73:20170807141949j:image

8月5日、IHIステージアラウンドにて劇団☆新感線『髑髏城の七人 鳥』を観劇。わたくし、初ドクロそして初ぐるぐるして参りました。新感線の時代ものには正直食指が動かないと思っていたものの、やはり繰り返し上演されている演目だけあって3時間半があっという間だった。今回はかなり毛色の違うショウアップされた演出だったようで、それも私の好みにあっていたのかなと思います。なるほど確かに、これはひとつ見ると他の演者と演出も見たくなる。でも〈月〉のキャストが高田聖子/羽野晶紀の極楽太夫以外そそられなくて若干拍子抜けしてしまった。これが最後なの?と思っていたら来年に〈極〉をやるそうで、極ってタイトルからしてやばそう。ガッチリ劇団員で固めてくるのだろうか。というか、ステージアラウンドは髑髏城専用劇場にでもなるのだろうか。劇団四季みたいな。今回の〈鳥〉は、口をひらけば「森山未來まじ最高」としか言えなくなるぐらい森山未來の天魔王が素晴らしかった。早乙女太一との殺陣は最早芸術だ。腕一本、足一本を動かすだけで魅力されてしまうのだから。新感線のトゥーマッチな演出の中においても、身体表現の根源的な面白さが活きていて、これは森山・早乙女コンビでなければ成されないものだなあ。阿部サダヲ池田成志の下北沢パートも最高だった。この2人は気負いなく立っているようで、見せるところではズッシリと見せてくるので毎回ため息が出る。

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8月10日、黄金町のシネマジャック&ベティにて越川道夫監督『海辺の生と死』を鑑賞。満島ひかり奄美大島の映画である、以外の感想が浮かばないのが正直なところですが海や光は見事に美しかった。こんな表情が撮れればもうそれだけでいいよな、という表情をバンバンするのでやっぱりすごい満島ひかり。原作を読めばまた印象が変わるのかもしれません。宇波拓による劇中やエンドロールの音楽が神秘的かつ妖しくて好きでした。

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黄金町、伊勢佐木町、関内、野毛を散策する。念願のジャック&ベティで映画を観ることができて上機嫌で歩いた。この周辺にくるのは3度目くらいですが、歩くたびに発見があってとても面白い。昼と夜とではだいぶ印象も変わる。艶のある街で、鶴岡龍の音楽が本当によく似合う。

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当初はバスを使う予定でいたものの、google mapで20分とあったのでKAATまで歩いた。野毛から中華街はなんとなく遠いイメージを抱いていたけれど、全然歩けるな。横浜の町自体はコンパクトだけれど、エリア毎の情報量がすごい。

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KAAT大スタジオにて『ハイバイ、もよおす』を観劇。「RPG演劇のニセモノ」「大衆演劇のニセモノ」「ごっちん娘」の豪華3本立て。RPG演劇は、冒頭の明転の時点でノックアウトだ。田村健太郎の声のトーンとかずっこけ方とか、完璧にアニメですごい。全体的に悪意かと思いきや、岩井さんのソーシャルゲームを通じてピアニスト(『て』の音楽を担当)と知り合った話を聞くとあながちそうでもないのかなと。大衆演劇も楽しかった。黒田大輔、平原テツ、岩瀬亮がもうスター。まぶしい。これの手がかかりまくったホンモノのやつ、この前豊洲で見たなと思ってしまった。「ごっちん娘」は泣きながら笑い、自分が笑ってしまったことに胸が痛くなり、むちゃくちゃ複雑な気持ちになる。でも、後藤剛範の筋肉おもしろすぎてずるい。反射的に笑ってしまう。櫓風のセットやテキ屋風衣装の岩井さん(金ピカのネックレスと時計が完璧)からしてお祭りモードのハイバイでとても楽しかったです。下らなさと世知辛さと切なさが混在していて、ハイバイらしさがより凝縮して感じられたのも良かった。

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8月11日、スタジオコーストにてcero主催の"Traffic"。VJに出てくる顔がめっちゃ怖かったけど格好良さがイカツいDaiki Tsuneta Milennium Parade、ボーカルの浮遊感と骨の太いサウンドがライブでも最高に良かったD.A.N.、ゲストコーラスの角銅真実がキュートだった古川麦トリオwith strings、フロントマンのキャラクターの濃さと演奏の質の高さがえげつなく楽しい藤井洋平&The VERY Sensitive Citizens Of TOKYO、Trafficベイベ全員骨抜き岡村靖幸、オールフリーでご機嫌かと思いきや締めるところは締め上げてくる高城さんが末恐ろしいcero。と、雑な感じですが概ねこんなテンションで今年もずーっと楽しかったですTraffic。「魚の骨 鳥の羽根」「TWNKL」と何度かライブで聞いたことのある曲に加えて、アンコールで公開リハーサルと称して演奏された新曲にも興奮した。最後にメンバーがドラムセットの前に集まり全員でシンバルを叩く前衛的な光景をさらりとやってのける格好良さよ。「魚の骨 鳥の羽根」や滝をテーマにしたこの新曲(タイトル失念)の歌詞を断片的に聞いていると、サウンドと共にかなりエキゾチックで、深く原始的な場所へ進んでいるような印象を受ける。アルバムは来年頭くらいかと推測しておりますが、一体どんなものが出てくるのか、さらにひと捻り予想を覆されそうな予感もあって楽しみで仕方がない。あと、聞いたことのないアレンジで新曲かなと思っていたら「Contemporary Tokyo Cruise」の歌い出しがはじまったときの高揚感とか、「My Lost City」も面白いアレンジになっていて、留まるところを知らないceroの躍進に心底わくわくさせられる。

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7月末から8月にかけて、毎週のように観劇の予定が入っていて充実した日々を送っている。それに加えて最近は周回遅れの青春みたいな日もあって、友だちと夜の10時に王将で炒飯を食べて帰りの電車で胃を痛めたりしている。どうしようもなく楽しいです。夏だからかな。


柴田聡子「後悔」(Official Video )