ニュースクラップタウン

私事で恐縮です。

ときめき返納

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寝ぼけ眼でTwitterのタイムラインを眺めていると、通勤に使う地下鉄が遅延しているらしい。私が乗る時間にはもう落ち着いていそうだとは思いつつ、念のためルートを変えることにした。乗り換える駅も路線もいつもと違う。不思議な感じ。たどり着く場所は同じなのに、違う場所へ向かっているような、違うことをしにいくような気分になった。気分転換というのはこういう風にするものなのか。定期圏から外れるのでいつもという訳にはいかないが、たまにはルートを変えてみるのも良いかも知れない。普段と違う駅のホームへ歩きながら、劇団☆新感線『五右衛門VS轟天』に出てくる池田成志演じるヴィジュアル系忍者ばってん不知火の「手段のためなら目的を選ばない男」という台詞を思い出していた。いや、全然違うなこれは。でも良い台詞だな。

殺人出産

殺人出産

 

自殺のニュースを聞くといつも村田沙耶香の『殺人出産』単行本に収録されている短編小説「余命」を思い出す。自死が当たり前になり、死に方やタイミングをすべて自分で選ぶことができる世界の話。とても短い作品でシンプルながらそのインパクトは絶大で、私はこれを読んだとき素直に良いなあと思った。こんな時代が来ればいいのに、と。自分のタイミングで人生や生命を終わらせることができたらどんなに良いだろう。実際に死なないにしても、そうできる、ということが生きるための担保になり得る。その選択は、どんな場合も尊重されるべきだと思う。村田沙耶香は、社会のしがらみから生じる様々な軋轢や抑圧、倫理的には良しとされないが誰もが持つであろう発想や価値観を小説の中で解放させる。極端に合理化された「社会」を通して、美しく逸脱していく様がとても好きです。


悲しみのない世界 (You Ishihara Mix) / 坂本慎太郎 feat. Fuko Nakamura (zelone records official)

 

近頃はSPANK HAPPY以降に菊地成孔が女性とデュエットした曲ばかり繰り返し聴いている。他にもまだまだ知らない曲がありそうだ。完璧なプレイリストを完成させたい。単体でも好きだけれど、女の子の声と重なった瞬間に生まれるあの官能はなんだろうか。胸のあたりがじんわりと圧迫されるような、心地のよい痺れ。ときめき、とはきっとこのことだという感覚を聴くたびに覚える。

けもの「第六感コンピューター」「tO→Kio」「Someone That Loves You」

相対性理論「QHPMAS」

菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール「I.C.I.C feat.I.C.I.」

菊地成孔と浜崎容子「泥の世界(Rinbjöカバー)」

祝福

祝福

 

長嶋有の短編集『祝福』を読んだ。人物の視点から主観で話が進んでいるかと思えば、ときに全体を俯瞰したような感覚になるのがいつも不思議だ。極私的のようであり、普遍的のようであり。カルチャーを好む夫婦の、冷めているわけではないけれど適度に保たれた距離感や冷静さを描いた「ファットスプレッド」という短編がお気に入りです。

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8月24日、こまばアゴラ劇場にてFUKAIPRODUCE羽衣『瞬間光年』を観劇。白いふわふわのアンサンブルが澱んだ空気、塩素水、クーラーの風、生ゴミの臭い、想像の鷹となってそれぞれの人物を繋ぐのは面白いなー、と思いつつ、ダンスや演技にそれほど魅力を感じられなかったのが致命的でノリきれず。最後ののたうちまわるような躍動やミニマルな音楽に合わせた動きは、見ていてなぜだかわからないけど「わかる」と思った。

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池袋に移動して西口にあるカフェ・ド・巴里へ。内開きの自動ドアから、エスカレーターへ乗り、ギラギラのシャンデリアに近付いていく高揚感。都会のテーマパークだ。ビーフシチューセットとチョコレートケーキを食べた。セットについてくるバターのたっぷり塗られたパンとシチューにのった生クリームが混ざると背徳的なくらい甘い。要するに太りそうな味がする。

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窓際の席から池袋の街を眺めていると、交番に出前が入っていくところを目撃した。特別な光景でもないのだけれど、お蕎麦と丼ものと思しきものの乗ったお盆を肩に抱えて交番の奥に歩いていく様が、ドラマでよくあるワンシーンを見たようでなんだか得した気分だ。  

abさんご

abさんご

 

黒田夏子abさんご』を読んだ。平仮名が多く固有の名詞が最小限に絞られた文字列を追っていると、なんだかぼんやりとしてくる。しかし、本から離れると先ほどまでいた世界が恋しいような気持ちになり再び文字に目を落としたくなる。ひとつひとつの表現を味わうには体力や集中力を要するし、きっと内容の半分も理解できていないのだけれども妙に惹き寄せられる稀有な読書体験だった。

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東京芸術劇場シアターイーストにて日本総合悲劇協会vol.6『業音』を観劇。観終えて改札まで歩く間、蒸し暑いはずなのに鳥肌が止まらなくて身体が芯から冷えたような心地がした。私が見たものは、聞いたものは一体何か。これが業の音か。舞台セットや衣装、人物の入れ替わりなどどこか浮世離れした設定に、松尾さんの描く世界はここではないどこかのような気がして、気兼ねなく笑ってしまうのだけれど、その次の瞬間に喉元に刃先を突きつけられたような現実感が迫ってくる。それでもどんよりとはせず、思考を続ける力を与えられたように思う。その力強さとは戯曲だけではなく演者たちの姿に由来するものでもあって、演劇でしか出来ないことだと実感する。『業音』は特に女優陣の格好良さが際立つ舞台だった。この物語の中で唯一、自分の確固たる意志で動き高みにいる杏子を演じた伊勢志摩の格好良さったら。発声のひとつひとつに痺れる。

 

「夜は短し歩けよ乙女」 Blu-ray 特装版

8月25日、早稲田松竹にて湯浅政明監督『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』を鑑賞。森見登美彦の原作を読んだのは随分と前だけれど、くどくてインテリで狂騒的な空気に妙に懐かしい気持ちになった。学生だった当時、なんだかとても新しいものに出会ったようで興奮したものだ。さくさくと進んでいくテンポと割と素直にハッピーなのが、今の私の気分にはぴったりだったな。『夜明け告げるルーのうた』はスタンダードだしエモーショナルだしでとても面白く観た。

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電車のBOXシートのような座席が特徴の喫茶ロマンへ。以前訪れたときは変則的にオープン時間が遅れていて入れなかったので念願叶って。いそいそと窓際へ座りました。全貌を楽しむなら壁際を選ぶのもよいなーナポリタンに生卵がのったスパゲッティーロマンとウィンナーコーヒーをいただく。

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高田馬場から新大久保まで歩いて汗だくだったのと、また喫茶店に入るのもなあと思って30分だけカラオケ館に入る。数ヶ月前にも無性にカラオケがしたくなってひとりで来たが、あまり楽しくなくて虚しくなってしまった覚えがあるのにまたやってしまった。ホログラムの壁をバックに無意味に自撮りしてみたり、森田童子「ぼくたちの失敗」を歌ってみたりした。30分1ドリンクで684円というのは喫茶店でコーヒーを一杯飲むのとあまり変わらないが、高いのか安いのか分からない。個室で靴でも脱いでくつろげるのはありがたいな、とも思うけれど。あと、よろけた拍子にサンダルが壊れかけていたことにカラオケに入ってから気が付いて、歩き回るよりもこの選択が間違っていなかったことに少し安心した。

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東京グローブ座にてフキコシ・ソロ・アクト・ライブ『夜』を観劇。吹越満8年ぶりの演芸で私はお初。溢れるアイデアと程よいくだらなさがたまらない。何をやっているのだろうと訝っていると徐々に目的が見えてきて、そのくだらなさにクスクスと笑ってしまう。かと思えば、ふと幻想的な光景が姿をあらわし、深い魅力にはまってゆく。でも着地点はやはり笑い。小林賢太郎Potsunenと同じく、発想とそれを具現化する過程そのものを魅せる面白さがある。具現化するためにどう身体を動かすか、どの道具をどう使うか、何が生まれるか。その逆もしかり、技術や動きをどう表現に昇華するのか。そのスリルは何物にも代え難い。あと、吹越さん好きなので永遠に見ていられる。カーテンコールのロボコップ演芸ではゲラゲラ笑った。

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8月26日、いそいそと帰宅してテレビを点けたら『ゴッドタン』ゴールデンスペシャルが何故か冒頭の5分と最後の30分しか録画できておらず、やり場のない悲しみに包まれる。と、思っていたら佐久間Pが予定はされていないとツイートしていた見逃し配信があり、テレビ東京と佐久間Pへの永遠の忠義を誓った。『キングちゃん』プチ復活の趣もあり、めちゃくちゃ楽しかった。


思い出野郎Aチーム / ダンスに間に合う 【Offcial Music Video】

8月27日、VIDEOTAPEMUSICに間に合うタイムテーブルだったので当日券でカクバリズムの夏祭りへ。この日はミスというかひとりでてんやわんやして要領の悪さを発揮することが重なり、後日に響きそうな小さい気がかりもあり、別のことでも頭がぐちゃぐちゃだったので、これはもうライブしかない!!!という気分。そう、今夜、ダンスに間に合う。18時過ぎに到着し、数十分押していたおかげで頭からスカートを見ることができた。澤部さんはなんかもう全身が格好良い。はじめてみたグッドラックヘイワも格好良かった。ふいに聞こえてくる美しい旋律とテクニカルな演奏に耳が忙しい。VIDEOTAPEMUSICは今年の夏唯一の東京でのライブということで一曲目「世界各国の夜」の出だしから気合いがひしひしと伝わってきたし、むちゃくちゃ最高のライブだった。しかもしかもしかも!10/25 3rdアルバム『ON THE AIR』リリース、11/23モーションブルー横浜・12/27東京キネマ倶楽部ワンマンライブが発表されブチ上がる。今日来て良かった〜〜〜!と心から思った。既にライブで聞いたことのある「密林の悪魔」や「Her Favorite Moments」はフレーズがより複雑になったような印象で進化を遂げていたし、最後に演奏された新曲「Fiction romance」ではVIDEOTAPEMUSICの新たな核と呼ぶにふさわしい映像と字幕が現れて思わず泣きそうになってしまった。これはもうアルバムもワンマンも超やばいことが確定だ。VIDEOTAPEMUSICからの思い出野郎Aチームというのも最高の流れで、高橋さんのしゃがれたボーカルで歌い上げられるとなにもかも大丈夫な気がしてくる。寂しさもそのまま歌う頼もしさ。ライブだと演奏もよりザラザラとした格好良さがある。明日も早いのでユアソンは諦めて、それでも充分な浮かれ気分で実物を見たらカクバリズム15周年アロハが大変可愛くて買いそうになったのだけど、いやいやこれはライブ後のテンションだからだとその場では気を鎮めて帰る。でも欲しくなってきたな。めっちゃ可愛いな。通販されたら買いそうだな。

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8月29日、ゴッドタン録画失敗を筆頭に今週は凹む出来事が続いて散々な気分に陥っていたのですが、それが一瞬でチャラになるほどの嬉しいことがあった。これまでの冴えない諸々は、ここへの助走だった気さえする。大げさでしかないけれど、目下片想い中のひとと楽しくお喋りできた、という、たったそれだけでどうしようもなく心が飛び跳ねてこれまでの世界が輝きはじめてしまう。自分ばかり喋ってしまったな、とか、ちょっと声が大きすぎたかな、とか、全然上手に喋れかったな、とか、はしゃいで変な身振りになってたな、とか、引かれちゃったかな、とか色々あるけど。そんな中でも巧みにフォローして話を運んでくれて、なんて素敵な人なんだろうと改めて思った。私の話に耳を傾けて、応えてくれた時間があったという事実が、私のこの先を照らしてくれると思う。もし私がいま死んで、『ワンダフルライフ』のような世界があるとしたら、間違いなくこの日のことを選ぶ。あと、その好きな人なんですけれど、VIDEOTAPEMUSICとあまちゃんのミズタク(松田龍平)を足して、吹越満菊地成孔のエッセンスを少し加えたルックスと雰囲気で、この人はわたしの作り上げた偶像なのではないか?とたまに思う。

このどうしようもない片想いにぴったりというか、答えをくれるような台詞が以前『ひよっこ』第16週「アイアイ傘とノック」に出てきた。省吾(佐々木蔵之介)に一目惚れした愛子(和久井映見)がこう言うのだ。

わって一瞬で恋に落ちて
そしたら何だか急に元気が出てきました。
はっ、まだ私大丈夫なんだわ
まだまだ乙女なんだわって思ったら
そしたら、頑張れる気がしてしまって。
ありがとうございます
現れていただいて。

いえいえ、いいんですいいんです
恋してることが大事なので結果じゃなくて
だから、失恋させないでください

もう、まさしく。愛子さんの姿を見ながら胸が熱くなった。愛子さんは、乙女寮だけじゃなく、日本中の女の子のお姉さんだ。これ以外にも『ひよっこ』で描かれることと自分の状況が、表層や細部は違えど共鳴することが何度かあって、きっとそんな人が沢山いるんだろうなと思う。ひよっこの登場人物のこと全員大好きなので中だるみいいじゃないか!と毎日楽しく観ています。物語の中に自身を見出したときの、あの、掬い上げられたような気持ち。


Cornelius - 『あなたがいるなら』"If You're Here

8月31日、朝から降っていた雨が上がると冷たい風が吹いた。夏休み最終日、夏の終わりに相応しい淋しげな天候。涼しいのだけれども、コンビニまで自転車を走らせたら汗だくになってしまってやっぱり痩せなきゃ、と思うのだった。寒くなって脂肪を蓄える時期が来るというのに。もうすぐ秋色のチェックを着たりふわふわのマフラーが巻けると思うと嬉しくなっちゃうな。夕方に帰省していた母を迎えに車で空港へ。雨が降ったあと、とても空気が澄んでいて東京中の灯りがいつもよりキラキラと輝いてみえる。窓の明かりやビルの輪郭がくっきりとしている。遠くまで明瞭に見えて、鉄橋を渡る電車がすれ違う。お台場と葛西の観覧車が回っている。すべての景色が高画質の映像のように車窓を流れる。あっという間に流れていく。

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