ニュースクラップタウン

私事で恐縮です。

窒息する8月

 

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9日火曜日。初めてケーキを持って電車に乗る、という経験をした。電車は空いている時間帯だったのであまり心配はいらなかったけれど、人とすれ違うときはぶつからないように持ち手を変えたり、階段を昇るときは両手で持ってみたり。ケーキを持ち帰る、という行為はスリリングでわくわくする。

 


『シン・ゴジラ』予告2

10日水曜日。新宿バルト9で『シン・ゴジラ』を観た。私は「ゴジラ」も「エヴァンゲリオン」も見たことが無い層なのですが、滅茶苦茶に面白かった。「現実 対 虚構」というコピーの通り、会議や手続きのシーンが徹底的に詰めてあることにも興奮した。このしつこいほどのリアリティというのは、史実を扱う映画に適用されるべき手法だと思うのだけれど、3.11、原子力放射能というメタファーを孕む「ゴジラ」に使われることで、虚構が現実以上の現実味と物語としての強度を増しているという構造にも痺れる。街が破壊されていくシーンでは絶望と興奮を同時に味わった。豪快に崩されていく建物だけでなく、屋根の瓦が振動で小刻みにずり落ちていく細かな描写も印象的で、あらゆる点で「神は細部に宿る」という言い回しさえも陳腐に思えるほどミクロへのこだわりが凄い。だからこそ語りたくなるんだろうな。

これ以外にも、油断していると見逃してしまう俳優陣を見ているだけでも楽しい。メイン3名に続き、五十音順で総勢328名のキャストが並ぶエンドロールも圧巻。あれだけ出てたら五十音順にするしか無いよねーキャスティングの過程もとても気になる。やっぱり巨災対だよねーみんな良いよねー忙しなく動き続ける様子を見ながら、もし私がこの中にいたらちゃんと動けるだろうか、ということも考えたり。何もできなさそう。

石原さとみのガッズィーラは言うまでもなく、余貴美子のアイライン(ゴジラ再上陸後、心なしか濃くなっている気がする)、高橋一生の目の下の隈とお肌のコンディション(メイクだと思うけど逆にメイクしていないのか、という絶妙さ)などなど、見所しかない。おもしれー

www.shin-godzilla.jp

 

シン・ゴジラ』の興奮を引きずりながら、ザムザ阿佐ヶ谷にてSNATCH Vol.10『プロジェクトB』を観劇。パロディのネタ元が分かればもっと楽しめたのか、良くも悪くも小劇場かなあと思いながら見ていたけれど、思い返すと出演者みんな愛おしいような気持ちになる。アクションや影絵があの規模でできる最大限、というより自分たちの容量を越えようとしている熱量にグッときました。

 

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11日木曜日。新木場STUDIO COASTにてcero presents"TRAFFIC"。バーステージを見ないの勿体無いなと思いながらも、なんとなく居心地が良くてメインステージにずっといました。クレイジーケンバンドの「タイガー&ドラゴン」始まりに痺れる。分かっちゃいたけど格好良すぎる。スキンヘッドに丸いサングラスという映画の中のマフィアみたいな風貌のドラム・廣石恵一にメンバーが敬礼をしたり、中西圭一がサックスを吹くと眩しい、みたいなジェスチャーをしたり、パフォーマンスもいちいち最高なのね。

seihoは綺麗と奇妙のスレスレを綱渡りするような本人の風貌とパフォーマンスに釘付け。リハーサルから音圧にびっくりしたけれど、めちゃ格好良かったです。あの花瓶で牛乳飲むやつ見れて感激。

大きな会場で聴くランタンパレードの伸びやかさと心地よさも素晴らしく。「魔法がとけたあと」とても良かった。最後に「甲州街道はもう夏なのさ」が聴けたのも嬉しい。


Lantern Parade「魔法がとけたあと」【Official Music Video】

OMSB&Hi’Spec、こういうラップを生で聴くのは初めてだったのですが、単純にすげーと感心してしまった。Hi'Specのトラックもアニメと思しき台詞のサンプリングや揺らぎが格好良い。「Going Back To Zama City」のドープさも良い。

そして真打、cero。「C.E.R.O.」から始まり、シリアスからポップまで自由自在なライブは今日のラインナップの豊かさと共鳴しているな、と感じた。OMSBを迎えての「Summer Soul」や、VJとしてVIDEOTAPEMUSICが参加した「わたしのすがた」「Elephant Ghost」(『シン・ゴジラ』鑑賞後に見ると感動もひとしお)「Contemporary Tokyo Cruise」も素晴らしい。「Contemporary Tokyo Cruise」、メンバー紹介からの流れるような入りや、荒内佑のキーボードソロと共に回り始めるミラーボール、そして

いかないで 光よ

わたしたちはここにいます

巻き戻しして 

と歌われる完璧な演出。格好良いぜ、cero

 

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12日金曜日。本多劇場にて『ヒトラー、最後の20000年~ほとんど、何もない~』を観劇。くだらね〜!というのと、意味わからね〜!というのと、うわうわ…というのが絶えず押し寄せる2時間。冒頭の「主演・入江雅人」からテンションが上がってかなり楽しめた。振り切っているキャストも全員素晴らしい。そして、ケラさんの書く笑いや台詞が好きだと再確認。ナンセンスといえども突拍子が無いというよりは、日常会話や定型を捻ったような奇妙さにハッとする。あとどことなく可愛い。

全体に通底する「笑い飛ばす」という姿勢は、馬鹿にする、冷笑するということではなく、権威を無化することでもあるのかな、と思った。

 

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 14日日曜日。TOHO新宿にて二回目の『シン・ゴジラ』。同じ映画を二回映画館で観る、というの初めてだ。私が鳥頭なのか、とりわけ情報量が多い会議や巨災対のシーンはまだ新鮮な気持ちで楽しめた。まんべんなく見渡したいと思いつつ、巨災対のシーンではやっぱり尾頭ヒロミ環境省自然環境局野生生物課長補佐と安田文科省研究新興局基礎研究新興課長に目がいっちゃうよね。あと、今回は心なしかゴジラ寄りの気持ちだったような気がする。脅威だったゴジラの咆哮の美しさとか、ビルの下敷きになるときの苦しそうな声とか。神としてのゴジラ

牧教授のボートに遺された宮沢賢治の『春と修羅』も気になる。軽く目を通しただけでは歯が立たないけれど示唆に富みまくっている感じが凄い。

 (あらゆる透明な幽霊の複合体)

という一節も、最後のゴジラの尾のカットとも重なるイメージがある。あのカット、ゾッとする感じ含めてとても好きです。

パンフレットも購入。自衛隊への取材や扮装の話などなど面白すぎる。制作スタッフと劇中のキャラクターの働きが重なってメタ的な魅力まで立ち上がってくる。鑑賞後、ネット上のインタビューやレビューも読みあさっているのですが、当然のように読むと観たくなる、という無限ループに陥りそうだ。

 

 
浜崎容子 - ANGEL SUFFOCATION

CIRCUS TOKYOにて浜崎容子ソロライブ『Into the Forest ~encore』。6月に六本木Super Deluxeで行われたライブと同じく、おおくぼけいとテナ・オンディーヌを迎えた編成。前回同様MCも少なく、歌唱や表情から表現者としての気概をひしひしと感じるライヴでした。特筆すべきはやはり、お色直しを終え、菊地成孔を伴って登場し披露されたRinbjoのカバー「泥の世界」。その濃密さに息が止まってしまうかと思った。

6月24日に放送された、よこたんをゲストに迎えてのTBSラジオ菊地成孔の粋な夜電波』はまるで劇薬だった。「現アーバンギャルドの浜崎容子と元スパンクハッピー菊地成孔の粋な夜電波」と題された放送では、エロチックで倒錯的なオープニングコントからセカンドSPANK HAPPYの話、そして新録のデュエット「泥の世界」と気合の入った内容で、菊地さんの語り口によこたんが全く別の表情を見せていることにも(声のみだから余計に)ドキドキした。かねてよりSPANK HAPPYの影響を公言しているアーバンギャルドと菊地さんの音楽的接触が、「ANGEL SUFFOCATION」の詞も含めてこの上なく理想的な形で実現したことへの興奮は計り知れない。それが目の前で、ライブでも実現する。『Blue forest』の曲は内容的にも声に情感(声の高低など)が宿る歌い方が多いのに対して、「泥の世界」での淡々と乾いた(で、あるのに濡れている)歌い方も堪らないものがあった。そして、菊地さんの佇まいと声から漏れ出る色気、半端無いっす。ヤバいっす。エロいっす。SPANK HAPPYとも違うこの二人のバランス感。身長差。もう一度飲むのを躊躇ってしまうほどの劇薬を実際に体験してしまった気分だ。なので、また見たい、という気持ちには不思議とならず、目の前に劇薬をちらつかされているときが一番官能的なのかもね。もしかしたらもう死んでしまったあとかも知れないね。(もはや何を言っているかも分からないが。)あ、でも菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール「I.C.I.C.(feat.I.C.I.)」のカバーも聴いてみたい。

息つく間もなく、アーバン・ダンスの成田忍を迎えて「ANGEL SUFFOCATION」、「すべては秘密の夜 -Whisper Of My Love-」も披露。オリジナル曲の精度の高さは言うまでもなく、カバーでの表現も素晴らしいので、歌って欲しい曲が沢山思い浮かぶ。特に聴いてみたいのは薬師丸ひろ子とか、Winkとか。あと布施明の「君は薔薇より美しい」とか。