ニュースクラップタウン

私事で恐縮です。

古河ワンダー

3月の頭から約2週間、免許合宿のために茨城の古河に滞在していた。教習のスケジュールに余裕がある日は駅周辺を散策して気分転換に喫茶店に立ち寄ったりと、余所者として古河での生活を満喫した。

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古河駅東口からすぐのコーヒーパーラー・パルク。キュートな飾り窓と看板のフォントをみた瞬間に、必ず立ち寄らなければ!と使命感のようなものすら感じたルックス。教習が午前で終わった日に意気揚々と乗り込み、内装にさらに打ちのめされた。

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入るとすぐ目に入るのは水が循環している小さな池。割れたプラスチックを補強した水槽の中でジョボボボボボボボと音を立てて流れる水と、ときおり聞こえる鳥のさえずりのテープが最高の癒しを演出している。このチープさがもうたまらない。大きな風景画やランプ、コーヒー豆の入ったドアといった内装だけでも十分素敵な喫茶店だが、この池があるのとないのとでは大きな差が開いてしまうだろう。町の小さな喫茶店というと店主が最小限の人数で営んでいるところが多いような印象だが、3人ほどいるウェイトレスの年齢層は若く、大きな絵に合わせてか緑のチェックのベストの制服が可愛らしい。この町では憧れのアルバイトだったりして。メニューはコーヒー、紅茶、ソフトドリンクに加えてランチのハンバーグやスパゲッティ、サンドイッチとフードも充実。雑誌や新聞も揃っており、古河市民の憩いの場であることがうかがえる。

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お手洗いには造花があしらわれており大変ラグジュアリーであります。スイッチを付けてもなかなか個室の電気がつかなくて焦りました。

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後日もう一度訪れた際には店の一角で10人ほどの合唱団がキーボードを持ち込んで練習しており、主宰者の女性の「エネルギーを宇宙に」といった指導が聞こえてきてこれは良い時に来れたなと耳をそばだてておりました。まあ、耳をそばだてるまでもなく店内にはアンジェラ・アキ「手紙」の合唱と池の水音のマリアージュがこだましていて最高のヒーリング空間でした。良い喫茶店がある町は良い町だ。

パルクから5分ほど歩いたところにあるコーヒー舎・ブラジルも素敵な喫茶店。

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外観はシンプルながら赤に白の看板と青いフリルのような瓦が美しい。夜に前を通ると店内の灯りが良い雰囲気を醸し出している。

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仕切りが高くプライヴェート性が高いのも嬉しい。クッションが柔らかく深く沈むタイプの椅子なのでいつまでも長居してしまいそうな心地良さだ。

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揃いのカップとソーサーも可愛らしい。調度品にこだわりが見られる一方で、店内のショウケースにレタスが丸々突っ込んであるところも良い。

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お手洗いは扉をあけるとすぐに男性用の便器があり、そこを通って個室へ行く作りになっている。入り口に鍵がついているか確認し忘れてしまったが、知らずに開けると人がいなくても思わずギョッとしまう。かつてはよくある形式だったのだろうか。

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通りに面した入り口とは別にカウンターの向こうにも入り口があり、常連さんがやって来てカウンターで店主と世間話をはじめた。ここは夫婦が2人で切り盛りしているようだ。親戚の身の上話や町の開発話なんかが聞こえてくる。ちなみに店のエアコンは故障中らしい。

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古河駅周辺はコンビニやスーパー、書店、CDショップ、居酒屋は揃っているものの、決して娯楽のある雰囲気ではない。自動車学校の教官も「古河、なーんにもないんだよね」と言うほどで、休日でも歩いている人は極めて少ない。しかし、東口を出てすぐ左にいくと、歓楽ビルがあらわれる。

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すべて閉店しているかと思いきや、夜になると和風パブ・越後屋の看板が煌々と灯っているのが見えた。残念ながらセクシーパブ・スーパーギャルズは営業してない模様。

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もう少し歩くとスナック街もあり、昼からカラオケの音が聞こえてきた。駅から看板が見えたパチンコ屋に近付くと閉まっていたが、すぐ隣にマッサージ屋の看板が出ており、町としての機能は衰えていないことを実感した。

西口は少し歩くと歴史博物館や美術館といった文化施設があり、また雰囲気が異なる。お店は少なく、昔からの佇まいを残しているものの営業している様子はなくガランとしてもいる。

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大きな通りを5分ほど歩くと県道に突き当たるのだが、そこで異様な店に辿りついた。

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交差点の一角に突如あらわれるアンティークショップ。ブリキのおもちゃ、蓄音機、木箱、扇風機、スーツ、こけしetc…アンティークというよりも骨董品、ガラクタといった風情の節操のない品揃えに唆られるではないか。雑然と商品がひしめく店頭は入り口がどこか分からず、電気も付いていない。営業していないのだろうかと思いつつ写真を撮り、ふと振り向くと道路を挟んで向かいにも店がある。

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ジョイパティオというインドカレー屋やパブの入った複合施設にも同じアンティーク屋が入っているようで、店頭にはペコちゃんのプリントされたジャンパーが飾られている。店名はマミーコンチネンタルというらしい。横断歩道を渡りお店に近付こうとしたところで、店主らしき初老の男性に「古河へようこそ!」と声をかけられた。お店を窺っているのを向かいから見ていたのか、待ち構えていたようだ。「いつ来たの?いつまでいるの?」と余所者であることを見抜かれていることに驚いてしまったが、もしかしたら地元の人たちは近付かない場所なのかもしれない。もしくは免許合宿生が何人か訪れているか。

呆気に取られていると、「ここはね、大事なことを教えるお店なの。100円から色々売ってるけど、買わなくてもいい。」「友達にも教えてあげて欲しいくらいなの。」「本当は15歳くらいで知らなきゃいけないことなんだけど、ま、年齢は聞かないけどさ。ハハハハ」と矢継ぎ早に話しかけられた。いかにも怪しい文言が並んでいるが、店主はいかにも怪しい外見というわけではなく身綺麗な人物だった。また、まくしたてはするものの「この辺りを回って見たらまたおいで」と無理にその場で引っ張ろうとしないところが余計におそろしいではないか。店頭に並ぶ骨董品には興味深々だったしお店に入りたい気持ちもあったのだけれども、突然話しかけられたことにびっくりしてそそくさとその場を後にした。「ネットで調べてみて。」と言われたので店名で検索してみたものの情報はほとんど出てこず、「大事なこと」がどういうことなのかも分からない。有名なB級・珍スポットという訳でも無さそうであるし、だとしたら未開拓のスポット見つけてしまったのではないかという得も言われぬ高揚感もあり、その後もこの店のことが気になって気になって仕方なかった。再訪しようかとも思ったのだけれども「大事なこと」と「15歳くらい」という言葉が引っかかって結局行かず仕舞いだ。こういった場所にいるのは純粋な狂気をもった人物であるか、作為のある人物であるかを見抜くのがとても難しく、乗り込むにも勇気がいる。案外、ただの骨董屋かも知れないし。こういうとき、大胆さと機敏さがあれば私の人生もっと刺激的なんじゃないか。再訪しなかった私の勘が正しかったのか間違っていたのかは確かめようもないが、今となっては夢を見ていたのではないだろうかと思うほどに古河での体験として強烈に残っている。

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