ニュースクラップタウン

私事で恐縮です。

生きるからだ

f:id:Vanity73:20220723092310j:image2019年4月、ホットヨガに入会し、食事制限を始めた。当時、身長150㎝・体重59kg。BMI値は26で、健康診断でも肥満と診断される体型だ。物心ついたころからいわゆるぽっちゃり体型で、運動の習慣はなく、家の冷蔵庫には常にお菓子があり、時間も気にせず食べたいときに食べる生活を続けてきた。身長と体格のせいかそこまで身体が大きく見えないのをいいことに、痩せたいな~と漠然と思いながらも、喫緊の必要性にも迫られずにいた。

f:id:Vanity73:20220723092348j:image今思うと、当時仕事も恋人との関係も行き詰り、鬱々としていた私には打ち込める何かが必要だった。それまで3食食べていた白米を止め、朝はヨーグルトとフルーツ、夜はサラダを中心とした食生活に。休日には必ず朝から1時間のホットヨガを2クラス受講。元来がひどい生活だったので、効果はすぐに出て、1か月で約2kgのペースで、5月には56kg、6月には54kg、7月には遂に50kgをきりはじめ、8月には48kgと順調に減量に成功した。

f:id:Vanity73:20220723092429j:image体調や周期によって1-2kgの変動があり、うまく時期と運動量が重なれば1日で1kg前後減ることもわかり、ホットヨガで汗を流せば減るという安心感もあり、外食で気兼ねなくスイーツも食べた。生理前には無性に甘いものが欲しくなり、お腹も減っていないのにひたすらお菓子を食べるのが毎月恒例の行事となっていたが、生理が終わると浮腫みが取れてストンと体重がおちることもわかっていたのでそこまで気にしていなかった。ライブや観劇で外出する日には、昼か夕方に行ってみたいお店で食べたいものを食べて、それ以外は食べずに都内を歩き回り、体重が落ちる。食事量を減らして落とした体重が戻りやすいと思いきや、いちど減ると案外キープできて、この不健康なプチ断食が成功体験として記憶されてしまっている。

f:id:Vanity73:20220723092456j:image9月以降、減量のペースはやや落ちたものの40kg台後半をキープし、お正月の暴飲暴食を経て2020年1月には44kgに。ここからコロナ禍に突入し、ホットヨガに通えなくなり、運動は朝のジョギング、部屋で簡単なヨガとストレッチに移行した。このあたりで体組成計を導入して体脂肪率の測定もはじめ、45kg24%がこの時期の平均値だ。

f:id:Vanity73:20220723092553j:imageダイエットをはじめた1年前と比較して約15kgの減量に成功した。どんどん減っていく体重や、すっきりとしていく顎の肉、よくクリームパンのようだと言われた丸い手にはうっすらと血管が浮かび、足の甲の浮腫みも取れて履いていた靴もゆるくなった。目に見えて効果が実感できるダイエットは私にとてつもない充実感と達成感をもたらした。朝いちでホットヨガに通うようになってから、早起きが習慣になり、生活にも張りが出た。この時点では、「15kg痩せた」という成功体験が大きな支えになっていた。

f:id:Vanity73:20220723092629j:image2020年4月、ダイエット2年目は、45kg台と40kg台前半をうろうろとする、いわゆる停滞期に入る。BMI値は20で平均的な体型、これまで蓄積された皮下脂肪はしぶとく、お腹周りがぽよんとしているのは気になりながらも、この時点では「痩せた」という成功体験のほうが大きかった。いちばんの娯楽だった観劇やライブがなくなり、家にいることを余儀なくされると、人間の楽しみは食に向かうというのは、世間を見ていても同じようだった。食事制限をしているとたんぱく質、脂質、糖質について食材やレシピを調べ、どのくらいの食材、調味料を使っているかが可視化できる自炊の安心感が大きくなる。それまでほとんどしたことのなかった料理に目覚め、サラダチキンやスープを拵えては自分でお弁当を作るようになった。

f:id:Vanity73:20220723092709j:image食べられるものを自分で制限すると、食欲が先鋭化される。それまで漫然と食べていた外食でも摂取カロリーから食べたいものを厳選し、パフェを食べるときは食事を抜くのが今も通例だ。甘いものも、基本的に食べてはいけないもの、と思い込むと、かえって欲しくてたまらなくなり、こんなに好きだっただろうか?と疑問に思うほど、執着に近い感覚が生まれたのはダイエット開始以降だ。

f:id:Vanity73:20220723092742j:image2021年4月、転職に伴い実家を出てひとり暮らしをはじめてから、42kgが最低値だったところから徐々に減り始め、6月には40kgをきり39kgをマークした。2年間で約20kgの減量。買ってくるものや作るものもすべて自分で管理する生活がはじまってから、お菓子は家にストックせず、片道40分を電動自転車で通勤していたら、自然に減っていったという感じ。この頃から「我慢している」「節制している」という感覚はあったが、新しい職場と生活に夢中だったのが正直なところだ。その反動で実家に帰れば母の手料理やお菓子を好きなだけ食べて40kg台に戻り、自宅に帰ってからは焦って食事を減らし、そうすると38kgまで落として、そこからキープした。朝に10分ヨガ、食後に10分腹筋・下腹のトレーニングを動画を見ながら行うのが習慣化して、ずっとぷよぷよしていたお腹周りも心なしかすっきりとしてきた気がするが、今もすぐに浮腫んでしまう。

f:id:Vanity73:20220723092804j:image9月に37kg台後半まで減ってから、12月までその37kg台をキープしていた。体脂肪率は平均18%、たまにパフェやアイスを食べても不思議と大きく増えることはなく、この頃がいちばん体型も気持ちも安定していた気がする。ダイエットもはじめて3年が経つと、太っていた状態から「痩せた」という成功体験も薄れ、40kg周辺の体型が「普通」の状態になってしまう。

f:id:Vanity73:20220723092846j:image2022年のお正月に実家で暴飲暴食から41kg22%まで増量、その後休日のたびに欠食などを続けて38kg台まで戻したものの、自分に制限を課している、というフラストレーションや、自分では解決できない心配事が重なり、無性に甘いものを無駄に食べたくなる衝動に駆られることが多くなった。業務スーパーで500gパックのチーズケーキやティラミス、生クリーム山盛りのパンケーキやクレープを貪り食べることが続き、40kgを超えることはないものの、37kgには戻らない日々を送っている。減らしたい体脂肪率も20%台をうろうろしており、甘いものを愛する人間が脂質を減らす難しさを実感する。それはホルモンバランスによる暴走だとわかりつつ、なぜ自分の身体と感情がこんなにもコントロールできないのか。

f:id:Vanity73:20220723092917j:image「必要以上に食べてはいけない」「運動しなければならない」という制約を自分で自分に課すことに疲れていることを自覚しながら、これを止めたらすぐにでも過去の太った自堕落な自分に戻ってしまうという強迫観念から逃れることができずにいる。浮いた鎖骨を見て「痩せた」と思えても、お腹を見るとまだ「太っている」と思うし、自分のことを完全に「痩せている」とは思えない。制限をすることで、ストレスの発散方法がその禁を破って食べることに向かう悪循環を自覚してもいるが、食べたら食べたで罪悪感に苛まれ、悶々としてしまう。

f:id:Vanity73:20220723092939j:image生活に新鮮さを求める意味でも、5月にジムに入会し、平日の夕方にホットヨガ30分、日曜日の早朝にクロストレーナー30分を習慣化した。運動量を増やしたのできっと体重も減っていくと思いきや、そうとはいかず、今も39.5kg-38.5kgの間をうろうろしている。眠れないと夜な夜なダイエット情報を検索するという悪習慣も身についてしまっているのだが、脂肪を燃やすには炭水化物、糖質が必要という情報を見て、ずっと食べていないご飯を食べたほうがいいのか、欠食を続けて代謝が落ちているので食べる量を増やした方がいいのか、と思いながら、多めに食べて単純に体重が増える体たらくだ。どこかで、自分に食べることを許したい気持ちがあるのだと思う。

f:id:Vanity73:20220723093004j:imageこう書くとまったく食べていないようだし、自分でも「食べていない」と思い込んでいるが、普通に食べてはいるのだ。特に仕事のある日は食べないと使いものにならないので、朝はヨーグルトとフルーツに加えてさつまいもやパンで糖分を補給し、お昼はいつも決まった量のお弁当、夜は野菜中心。最近は仕事で気がかりなことがあると気持ちを落ち着けるために食後のお菓子やアイスを自分に許して気持ちを保っている。たんぱく質が足りていないことは自覚しているので、食べる量ではなく質を見直すべきだろうと思いながら、運動してもどうせ効果がないし、といまいちモチベーションもあがらない。外出をして食事量が少なく、ひたすら運転をして帰った日には単純に食べ物が入っていないのでお腹が薄く、体重もたまに37kg台になるのだけど、翌日から普通に戻ると余裕で1kg増えてしまう。昨年の秋頃は休日も3食しっかり食べていたので代謝が保たれていたのだろうと思って、その頃の生活に戻したいのだけれどなかなかうまくいかない。

f:id:Vanity73:20220723093028j:image150cm39kgでもBMI値は17.5で瘦せ型の部類に入るのだけれど、体脂肪率は21%でアンバランスだと感じる。食事を高たんぱく、低脂質に、有酸素運動と筋トレを続ければ理論上は減っていくとわかってはいるものの、そうはうまくいかない。一時的な減量ではなく、恒常的に代謝を上げる身体を作らなくてはと思いつつ、体重の増減に一喜一憂して、食事、食欲のコントロールができない。

ここへきて、「ダイエット」に疲れて、なぜ自分はこれを続けているのか、と思うことも増えた。好きなときに好きなものを食べて、面倒なら運動も休む、やろうと思えばすぐにでもできることでも、罪悪感に苛まれて、自縄自縛だ。それに何より、今の時点から振り返って「痩せていた」と思える過去の状態に固執してしまうのは、ほかに没頭できるものがないからだともわかっている。

f:id:Vanity73:20220723093102j:image

今日は体重39.3kg、体脂肪率21%、皮下脂肪20.3%、筋肉量29.2kg。

1kgの小麦粉の粉を抱えた重さに、1kgなんてこの程度か、と思う。こんなにずっしりとするのか、とも思う。私しか関心のない私の質量に、私が私を生きるからだに、いつまで執着し続けるのだろう。